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「……と、まぁ、こういうことでさ、僕らはただ、蛍さんを信じて待ってるだけなんだ。アネモネちゃんを連れ戻して、またみんな集まった『しょくぶつえん』を取り戻すためにね」
スギさんはそう言うと、私に何か質問は? と聞いてきた。
「お父さんは、何か残していかなかったんですか? そういうことをやって、私たちから悪い目で見られることなら、お父さんなら想像できたと思うんですが……」
「いいや、何も残さなかったよ。まさか、ここまで長い間家を空けてしまうなんて、蛍さんでも思ってなかったんだろうね。もう四年もたつし……」
スギさんはそう言うと、カエデさんを見た。カエデさんも、何も聞いていないと、首を横に振った。
「……っといけない。そろそろ蕨君帰ってくるね。ほら、もう自分の部屋に言っておかないと、この話が蕨君にばれるのはいけないんでしょう?」
スギさんは時計を見ると、いつもの軽い口調でそう言った。
「ありがとうございました。また今度、いろいろと聞かせてください」
私がそう言うと、スギさんはいいんだよ、家族なんだからと言って笑った。
部屋に戻ると、軽く明日までの宿題を終わらせるために、帰ってきたまま放置していたカバンを開けた。
教科書を取り出すと、それにはどこで紛れ込んだのか、何かの鍵のようなものが挟まっていた。もしかしたら、学校で誰かの鍵が紛れ込んだのかもしれない。
明日、学校で友達に聞いてみよう、私はそう思うと、制服のポケットの中に鍵を入れた。




