<Ⅵ>
お母さんの病室を出たあと、私はちょっと離れたところにある小さな公園へ向かった。
そこは、いつものように、誰もが忘れてしまっていると思え得るほどに静かで、砂場はいつ来ても平坦だし、滑り台やブランコには砂がたまっていた。
私はさびでぎしぎしと音が鳴るブランコの砂を払い、その上へ腰かけた。
お母さんが言っていたことが本当なら、私はいままでずっと、何も悪くない人のことを嫌っていたということになる。それは、その相手にも申し分けないし、それに巻き込んでしまったいろいろな人にも、大変な迷惑をかけていたことになる。
私は、お父さんのことをもっと知ろうと思った。お父さんのことをもっと知って、そして、謝りたかった。別に、お父さんは怒っていないと思う。私たちにこう思われることは分かっていたようだったから。けど、自分が、許せなかった。
私はブランコから立ち上がり、家へ小走りに駆けて行った。早く、お父さんのことが知りたかった。
玄関のドアを開けると、そこには物陰に隠れようとしていた桜ちゃんがいた。
「あ、しおんおねえちゃんにみつかっちゃった〜」
桜ちゃんが残念そうな顔をする。
「ほら、み〜つけた!」
私がそう言いながら桜ちゃんを抱きしめると、桜ちゃんはきゃ〜、とかわいい声を上げて、楽しそうに抱き着いてきた。
「あら、おかえりなさい。今日は遅かったけど、どうしたの?」
そのまま桜ちゃんを抱えて地下へ降りると、カエデさんがいつものようにそう言った。
「カエデさん」
私が真面目な感じでそう言うと、カエデさんはやさしく微笑み、どうしたの、と、言ってきた。
「晩御飯食べたら、ちょっと知りたいことがあるんですけど、いいですか? スギさんも一緒に」
私がそう言うと、カエデさんはやさしく、いいわよ、とだけ言った。何が知りたいのかは、聞かなかった。




