<Ⅰ>
久しぶりの、アネモネです。
MIDORIの中なので、注意してください。
――急に、景色が変わっていた。
唐突に蛍からの支援が消え、代わりに再起動中のMIDORIが、目の前でじっとしていた。
これなら殺れる、私がそう思ってシステムをつぶしにかかろうとしても、私は動かなかった。いや、正確には動けなかった。
両手と両足を、太い鎖のようなもので縛り上げられていた。ここが電脳空間上で、実際にそうなっているのではないということは十分に分かっている。しかし、私は確かにそう感じた。正しくは、プログラムが私をそう感じるように動かしていた。
今見ているものも、今感じている感触も、全て嘘。偽りのもの。そんなことは分かっていた。
だけど、体が縛られてみ動くが取れない状態で壁に張り付けられた私の前で、MIDORIを擬人化したのであろう、私に恐怖のみの感情を与えてくるバケモノが、ゆっくりと再構築され、目を開けるのをひたすらに見させられるのは、無理だった。
少しでも長くでいいから、目を覚まさないでくれ、そう思った私は、できるだけ音をたてないようにした。怖くても、何も言わなかった。
でも、それでも、MIDORIはゆっくりと目を開いた。そして、ガラスのような無機質な目で、こちらを見てきた。
頬を、涙が伝う感触が、私の中に送られてきた。
だめだ、どうしようもなく怖い。MIDORIに触られたら、何かが起きてしまうような、そんな感覚が私を襲った。
MIDORIは、全身から緑色の淡い光を放ちながら、一歩一歩、ゆっくりと近づいてきた。その一歩一歩の足音が、私を恐怖の底へ陥れた。
触れられたら死ぬ、そう思わせるかのような恐怖に、必死に足を動かした。手を動かした。でも、その太い鎖は、切れることがなかった。
そうしているうちに、MIDORIは私の目の前に立ち。
そして、ゆっくりと、私の腹部にMIDORIの手が突き刺さった。




