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AR  作者: 青柳藜
chapter Twelve Peaceful days.
104/147

<Ⅹ>

 ……アヤメさんがぬいぐるみの棚の前に立って、もう二時間が経過した。

 アヤメさんが復活し、メリーゴーランドなどの軽い乗り物を回った後、近くにあったお土産物屋さんの中に入ったのが、大体十一時ぐらい。

 そこからいままで、アヤメさんはぬいぐるみが並ぶ商品棚の前で、ずっとある、大きな茶色のクマのぬいぐるみと比較的小さな青いペンギンのぬいぐるみを見比べていた。

「……あの、アヤメちゃん? もういいんじゃ……」

「あと十一分二十五秒待って」

 カエデさんが声をかけるも、アヤメさんはそう言って二つのぬいぐるみを見比べたままだ。

「……アヤメさんって、いつもこんな感じなんですか?」

 綾香ちゃんが私に耳打ちしてきた。

「いや、いつもはもっとクールな感じなんだけどね……。こういう時は、大変、かな?」

 私はよく、アヤメさんあてに届く荷物をアヤメさんの部屋にもっていくのだが、その、初めて見たときはすごかった。

 いつもの態度からは考えられないような感じの、どちらかというと小学校低学年の女の子のような部屋が、アヤメさんの部屋だ。ただ、壁の本棚に入っている物は、プログラム関係の論文、よくわからない極秘資料の山、それと膨大な量の美少女ゲームやぬいぐるみが出てくるゲームだから、一様に小学校低学年とは言えないが。

 そしてとにかく、アヤメさんの部屋のクローゼットには、恐ろしいほどの量のぬいぐるみがお手製の棚の中できちんと座っている。もちろん、クローゼットの中のほかにも、棚の上や、ベッドの上などにもぬいぐるみが座っていて、すべて合わせると百は軽く超えるんじゃないだろうかと思うぐらい、アヤメさんの部屋はぬいぐるみだらけなのだ。

 そしてさらに、そのすべてに名前がついているから、驚きだ。よく思いつくと思う。

「…………はぁ、そういうものですか」

 綾香ちゃんはよくわかっていないような顔で、そう言った。まぁ、私もなんでこんなにぬいぐるみが好きなのかはちょっとわからないけど。

「……決めた」

 そうこうしているうちに、アヤメさんはそう言って、棚に手を伸ばし。

 ……ゴマアザラシの赤ちゃんのぬいぐるみを手に取った。

「……百二回目の計算で、これが一番かわいいことが分かった。だから、これにする」

 しかし、彼女が手に取っているのは、ほかの場所でも売っているようなごく普通のぬいぐるみで、ここオリジナルの、アヤメさんが欲しがっていた特大のものではなかった。

「それ、ここのオリジナルのやつじゃありませんよ?」

 私がそう言うと、アヤメさんは分かってる、と言ってから、こう言った。

「ここのオリジナルのものを買うと、今のぬいぐるみ置き場の大きさでは、高さが約15mmぐらい足りないから、ちょっと下を向かせることになる」

 アヤメさんはオリジナルの特大のぬいぐるみを持ってくると、ちょっと頭を下に向けた。

「こうしたら、縫合線が丸見えだから」

 ……アヤメさんの言うように、特大ぬいぐるみの頭は、ちょっと残念な感じになっていた。

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