<Ⅷ>
「お待たせ〜!」
綾香はそう言いながら、バス停からまっすぐこちらにぱたぱたと駆けてきた。
半袖の白いワンピース姿で駆けてくる彼女は、いつも制服姿しか見ていないからか、とても女の子らしく見えた。
「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃいましたか?」
「大丈夫大丈夫! あんまり待ってないよ?」
謝る綾香に、スギさんが笑顔で返す。
確かに、俺たちがここへ着いたのもちょうど今ぐらいだった。というのも、アヤメさんが一向に来てくれようとはしなかったのだ。結局はこの遊園地の中でしか売っていない特大のぬいぐるみを買うという約束をして、何とか来てくれはしたのだが。
「えっと、そちらのお二人が……」
綾香はそう言って、タンポポさんとアヤメさんのほうを見る。どうやら、だいぶ緊張しているらしい。
そういえば、綾香がいつも来る時間は仕事の時間だから、タンポポさんやアヤメさんと会うのはこれが初めてになるのか。てっきり忘れていた。
タンポポさんは綾香に右手を差し出しつつこう言った。
「やあ、君が綾香さんか。僕はタンポポ、よろしくね?」
差し出された右手に、綾香はぱぁっと明るくなって、「はい、よろしくお願いします!」と、大声で言いつつその手を取った。
「それでそちらが……」
綾香は満面の笑みで、タンポポさんの右からアヤメさんを覗く。
「…………アヤメ」
それに対し、アヤメさんはむすっとして答えた。
どう反応してよいのかわからず、綾香は苦笑いをする。
タンポポさんも、その場でどうしたらよいのかわからず、おろおろとしているだけだった。
「……さ、さぁ! みんな揃ったところで、そろそろ行こうか!」
場の雰囲気を紛らわそうと、スギさんがわざとらしく言う。
その言葉で、綾香は俺のほうへ近づいてきて、そして俺の腕に彼女の腕を絡めた。
「……何のつもりだ?」
俺が綾香に冷たく聞く。
「ん? なんとなく」
それに対して、綾香は明るく微笑んでくるだけだった。




