<Ⅶ>
「じゃーん! 明日、遊園地行こうよ!」
そう言って綾香が見せてきたのは、しょくぶつえんの人数分と綾香の分、合計八人分の遊園地のチケットだった。
受験前最後の夏休み、綾香は息抜きと称して俺のところに前回の模試の結果とそれを持ってきた。
彼女曰はく、彼女の母親が「模試の成績で前回より20点平均点が上だったらいい」と言ってきて、それで猛勉強をした彼女が、ぎりぎり20点平均点を上げることに成功したのだという。とはいっても、俺が一時間教えた問題が結局できていなかったことで、個人的に、彼女には机の前に座ってひたすら問題を解き続けてほしいところだったのだが。
しかし、当の本人はそんな俺の様子に全く気付かず、にこにことこっちを見てくる。もう行くことは決定しているぞ、そう言っているかのようだった。
「へぇ〜、遊園地かぁ、久しぶりだなぁ、そういうのって。ねぇ、行こうよ蕨君」
いつの間にか現れたスギさんが綾香の後ろからチケットをのぞき込む。
突然出現したかのようなスギさんに綾香は一瞬驚くも、すぐに「そうですよね」と言って、こっちを見てきた。
スギさんの同意で、綾香はさらにきらきらとこちらを見てきた。
…………まったく。
「……分かりました。アヤメさんとタンポポさんにも伝えておきますね」
俺はスギさんにそう返した。
だって、綾香にあんな顔をされては、断れないじゃないか。
俺は口元が緩むのを誰にも見られないように隠しながら、仕事部屋へこのことを伝えにいった。




