44 夜の番1
今ある素材は果物と肉と調味料だ。果物は軽く切っておくだけでいいとして、肉はどうするかな。
そこそこ【料理】のレベルは上がったから、手間は加えられるんだけど……まあ、米もないしボリュームと空腹度回復し易いものにしよう。
俺は肉をそこそこ分厚く切り分けてフライパンの上にのせてじっくりと焼く。現実ではどうか知らないけど、ゲーム内だと厚めならそこそこ肉そのものの油が滲み出てきて、焼くのに問題はない。
「調味料は……塩と胡椒に砂糖がはいってるんだな」
とりあえず、塩と胡椒で味付けしておく。絶対現実でくったら太りそうだな。女の子に不人気だよ。
せめて野菜が見つかれば野菜炒めなり、スティックなり作れたんだけどな。今日は肉と果物だけだ。
そこそこ時間をかけて出来上がったものを、木で作られた皿にのせて食べる。
「絶対太るー」
「運動すれば平気ですよ」
「ミドリは太りにくい体質だからいえるのよー」
「それは羨ましいなー。まあ、ゲームだから大丈夫だよ」
味自体は好評だけど、思った通り現実ででた場合は不評な感じだった。
日が落ちて焚き火が周囲をそこそこ照らす中、俺は木の枝を弄りながら起きている。
ランタンとか持ってくればよかったな。
「うぅん……思ったより大きな収穫」
「それはよかったよ」
夜の番はふたりずつ交代で行うことにした。体感時間で1日ということは寝なくちゃやはりやっていけないだろう……だけど、夜も危険がないわけじゃない。
そして今日は俺とティアが先に番をして、ある程度したらリーフとミドリと交代だ。
ティアは焚き火の明かりを使いつつ今日とってきた鉱石からでてきた宝石を磨いている。ちなみに、リーフとあとで鉱石と交換するらしい。
「こうしてると思い出すわねー」
「何をだよ」
「ほら、自然体験宿泊学習……だっけ?」
「あぁ~小学校の頃にあったな、一泊二日の」
「そうそう! こうやって、火の前に2人でならんで、杉板焼きしたの覚えてない?」
「あぁ~やったな。ていうか、今も自室に作ったやつ引っ掛けてある」
「私もまだ部屋に引っ掛けてあるわね~」
懐かしいな。
「あの頃のアキ可愛かったなぁ~」
「複雑だからやめてくれ」
「今のアキはかっこいいわよー」
「慰め程度に言われてもなー……」
「……半分くらいは本気よ」
「……マジ?」
「マジマジ。なんだかんだ男らしいところはあるし……女子力高いけど」
「最近の男子は女子力高いんだよ」
「隼人見ていいなさいよ」
「それは無理だ」
あいつは男子力が高すぎる典型的な男子だからな。
「あとは~。何かしら、こういう時普通なに話すの? アキと話すことって基本的に出し尽くしてる気がするのよ」
「えぇ~……恋バナとか?」
「そんな相手いないわよ」
「一回ぐらい告白されてねえのかよ。あんだけ可愛くて頭良くて人当たりいいのに」
「な、何言ってんのよ!? 一度として告白されたことないわよ!」
「お、おう……とりあえず声量落としてな」
「アキがいきなり変なこというからよ、バカ」
「うぅん……なんか、すまん?」
「……まあ、いいわよ」
暗くて立たれると表情がよくわからないけど、本気で怒ってはないみたいだ。
「そろそろ交代ですよー」
「もう、そんな時間?」
「はい、ちゃんと休んで明日も頑張りましょう」
「アキちゃんもちゃんと休んでねー」
「わかってるから、押さないでくれ」
リーフとミドリが起きてきてテントに押し込まれて眠りについた――そして、ティアより少し早く起きたときに、よく考えたら女子と一緒に寝てたことに気づいて顔がとても熱くなった。