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VR世界に少女が現れた、仲間になれますか?  作者: ゆっき
第2章 プリンセスと恥ずかしがりや
28/80

28 強化と依頼

 休みの日がくるというこよは次の日も休みというのが学生ではよくあることだ。土日がきているからな。

 第2拠点に行けるようになったものの、昨日はまだいかずにデイリークエストをクリアして、その後はスキルレベルアップをしにいった。


 俺はとうとう新たなスキルをとったのだ。新たに手に入れたスキルは【調合】だ。

 ミドリにもこんだけ薬草なり取るなら、自分で生産してみたらどうだと勧められたりしたのもある。ポーションにしてから売っても十分買い取ってくれるらしい。

 つまり、ボス戦の後は疲れてひたすらにポーションを作っていたということだ。そのポーションとファストポーションの使い心地を伝えて昨日は寝た。


 そんで今は翌日の昼過ぎになる。

 俺は第2拠点に行くか悩んでいた。今回は優柔不断ということではなく、防具はいいものの武器が心もとないからだ。

 ボスとはいえあの時点で、かなり攻撃が通りにくいこの初期の槍でどうにかできるものなのか。

 ファルコやナツにいたっては戦闘しまくってるからすでに30レベルで基本的に現れる分岐で、特化したスキルを取っているわけだしな。

 この前のボス戦で【槍Lv29】になったので、レベルを上げてからでもいいんじゃないかと思ってしまう。

 ただ、ここでの問題は俺は調合とかみたいなその場で行えるレベル上げはともかく、足を運んでの武器のレベル上げがそこまで好きではないということだ。

 薬草集めに行く場合は、モンスターからは基本的に逃走するというプレイをしていたしな。

 センターシティの外れでそんなことを悩んでいたときだった。


「どーしたの?」

「いつも唐突に現れるよな」

「あたしはそんなつもり無いんだけどな。ログインしてるのは知ってて少し歩いてたら見つけたものだからさ」

「あぁ、そうなの……はぁ」

「どうしたの、そんなに悩んで」

「レベル上げがしたくない」

「そんな仕事がしたくないみたいに言われても……」

「せっかくのオンラインゲームで、1人で作業のようなレベル上げやりたくない! いや、ソロプレイヤーはそれはそれでいいと思うけど、俺はそういうスタイルでいきたい!」

「友達とやればいいんじゃないの? ファルコくんとか、いっぱいいるでしょ?」

「リーフとフェンスともうひとり以外は全部リアル関係で、今日は忙しいというか好き勝手してて邪魔するのも何かなって」

「そ、そうなの」


 なんで俺はこんなところで愚痴ってしまっているんだろうと、今更思い始めた。


「いや、なんかすまんかった。やっぱ頑張ってみる」

「そっか。応援してるよ!」


 うん、女子に応援されるのも悪くないな。だから俺は男だ。

 突然、謎の自信が満ち溢れてきた俺だったが、移動を開始しようとすると地響きが聞こえてくる。それはどんどんとこちらに近づいてくる。

 まるで、何かの大群が近づいてくるかのような――そう思って、その音の方向を向くと、センターシティ内の通りを走ってくる人の群れが見えた。


「はっ!?」

「あ、やばい」

「やばいってどういうことだ!?」

「とりあえず、逃げよう!」

「……なんで俺まで!?」


 突然手を引っ張られて鬼ごっこが始まった。

 よく声を聞いてみる。

「リーフさんがいたわ!」「きゃー! リーフさぁん!」「まってぇ!」

 超絶有名人じゃねえか。もうファンじゃないか――女子しかいない気がするけど。

「一緒にいるの誰よ!」「この前ブログ乗ってた娘よ!」「アリね!」

 何がアリなんだよ!?

 とりあえず、俺も狙われてるようなので逃げるに越したことはない用だ。


「あはは、なんか駆け落ちみたい!」

「誤解を生むこと言わないでくれ!?」


 この鬼ごっこはしばらく続いた。そしてどうにか群れをまいたときには、センターシティの外へとでてしまっていたようで、フィールドのどこかにいる。


「なんだこの砂漠フィールドは」

「久しぶりにここまできちゃったなぁ」

「帰ろうぜ」

「そうだね。でもセンターシティに戻るのも怖いからあたしの店一旦くる?」


 また着せ替え人形にさせられそうだが、たしかに今戻るのは怖いか。


「そうする」

「それじゃあ行こっか」


 俺たちは砂以外何も見えないフィールドを歩く。


「なんか、リーフって面倒見いいよな。妹とか弟とかいるのか?」

「え? なんで? い、いないよ」

「なんで焦ってるんだよ」

「いや、初めてそんなこと言われたから……あたし現実だとかなり人見知りだから」

「初対面の俺とかにあんなことしたり、手を掴んで引っ張っていくくせに?」

「あれは趣味とゲーム内ということでテンションが上ったっていうかね。でも、今日話しかけたのはちょっと、ある人真似してみたのはあるかな」

「へぇー」

「あたしが中々、動けない時にしつこく話しかけてくれた人がいて、まあ顔もちゃんとは見られなかったけど。でも、ゲーム内でなら同じことできないかなと思って、うなだれてたアキちゃんに話しかけたわけ!」

「そっすか……すごいな。俺だったら実行できねえや」


 現実でも、よっぽどの何かないと話しかけないだろうしな。ていうか、女子と面と向かって話すと緊張するんだよな。智愛とか翠花みたいなノリなら別だけどさ。


「もうすぐ、砂漠フィールドぬけて隣が、あたしの店のあるフィールドだから頑張ろっか」

「そうなのか。まあ、それなら頑張るか」


 たしかに遠目で緑色が見え始めた。もうすぐでたどり着く、そう思った時だった。

 地面の中から何かがでてき――


【サンドワーム Lv18】


 細長く薄い茶色の体をうねらせたそれだった。


「あ、そういえばでてくるの忘れてた。まあ、雑魚だし大丈夫だよね――」

「吹き飛べぇ!!」


 俺はリーフの言葉も聞かず、有無も言わさずに槍でサンドワームに攻撃を連打した。もう動いているのを見るだけで気持ち悪くて、寒気がする。

 サンドワームが倒れるのを見たら、俺はもうリーフの手を掴んだ。


「え、どしたの?」

「は、はやくいこっ、ねっ!」

「う、うん。ドロップ品はいいの?」

「いいから!」

「う、うん!」


 サンドワームの亡骸をそのまま放置して、急いでその場から離れた。

 リーフの店について俺は、謝っている。


「お見苦しい姿をお見せしました」

「いや、大丈夫だけど。虫、ダメなの?」

「む、むり」

「そ、そうだったか」


 納得してはくれたみたいでよかった。

 ついでに、なんか通知をひとつ見逃してるようなので確認してみる。


「……あ、【槍】のレベルあがってた」

「さっきのやつでかな。おめでとうー」

「派生もでたなー。【長槍】と【短槍】か」

「今、アキちゃんが使ってるのは【長槍】だね。【短槍】はたしか片手で使える大きさの槍」


 それなら【長槍】のほうがいいかな。


「ちなみに、もうひとつの派生って取れないの?」

「SPが少し高めになっても大丈夫ならとれるよー。はい、紅茶のむ?」

「いただきます……なら、とりあえず【長槍】とっておくか」


 俺は【長槍】を取得した。ちなみに、派生させても前のスキルが消えるわけではないので、【槍Lv30】もしっかり残っている。


「…………リーフってさ」

「なにー?」

「装飾品っていうか、アクセサリーも作ってるんだっけ?」

「作ってるよ。小物もファッションの一部だからね!」

「依頼って、今忙しかったりする?」

「もともと好きなもの作って、ここで売ったり作り過ぎたら露店にだしたりって感じだから、列記とした依頼は今はないけど」

「……も、もし、大丈夫なら何だけどさ。装飾品作ってもらえないかな。素材とか金は払うから」

「……あたしが? というかあたしでいいの?」

「リーフなら結構、信用してるし」


 他にあてがいないっていうのもあるな。


「……任せなさい!!」

「今の間はなんだろう……無理とか嫌だったらいいんだぞ」

「いや、アキちゃんからそれを頼まれるのは予想外だったから」

「そろそろ第2の拠点にいくなら装備整えないとだし、装飾品とかも考えていかないといけないっておもっただけだ」

「そっかぁ。じゃあ、あたしに任せなさい!」

「じゃあ、お願いします」

「どんなのがいいとかある? ないなら無難に髪とか頭につけるアクセとかになるけど」

「じゃあ、それでいいです」


 指輪とか腕輪は鍛冶の部類になるもんな。

 でも、正直そっちだと使えるか微妙な素材だったし。


「じゃあ、ひとまずお金の計算はあとでだすとして、素材見せて」

「えと、使えそうなのは――」


 今までに集めた素材を見せてみる。細々とした素材に【ブルーゼラチンの塊】とこの前手に入れたばかりの【虹色の菌花】を見せた。


「これもレアドロップじゃん。ほっほう、これはあたしのレベルも上がるからいいね。任せて! それじゃあ、これとこれと、あとこれ使っていいかな? お金はそうだなー……こんくらい」


 そう言って金額を提示してくる。こんな額、露店でしか見たことないが今まであまりつかってなかったので払える値段だった。ついでに素材についても詳しくないから任せて預けた。


「それじゃあ、出来たらメッセージ送るね。といっても暇だったらまたあそびにきてくれてもいいけど」

「うーん、了解した。無理言ってごめん」

「いいの! アキちゃんのことはあたしも気に入ってるしー」


 挨拶を終えるとリーフさんは意気揚々と店の奥の作業室であろう部屋に消えていった。

 俺もレベルは上がったし、その他の装備も整えないとな。

 そうしてこの足をセンターシティへと向けた。


 ……そういえば、リーフが言ってた話しかけてくれた人っていうのが少し気になったな。そんな人に俺もなれるかと考えたが、それが女子だった場合を考えるとなんか複雑なので、やめておこう。


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