たったひとつのその願いは
また書いてしまった…
よろしくお願いします
その日、私の幸せな日常は崩れ落ちた。
前世の知識、というものを知っているだろうか。
覚えている人も、覚えていない人もいる。生まれたときから知っていた人もいるし、ある出来事により急に思い出した人もいる。
しかし、前世の記憶を持っているなど、信じられないことの方が多いこの時代。
私、マリエラ・ファン・メネラウス、は生まれつき前世の記憶を持っていた。
自分が前世プレイした、とある乙女ゲームの悪役令嬢であるという事を。
死にたくなかった。
自分の死んでしまう運命を変えたい、その一心だった。
攻略対象の貴族や殿下、更には実の兄まで私の敵となる人物だった。
死なないために、沢山の事をした。
殿下に媚を売った、社交界に積極的に参加した、実の兄とコミュニケーションを必死に取った。
磐石な信頼関係もでき、私はもう死ぬことなど無いだろうと思っていた。
でも、物語の強制力とは恐ろしいもので。
いつしか婚約者との距離は離れ
兄には罵倒され
社交界では覚えのない噂で後ろ指をさされた。
そして、いよいよ
私の処刑される日は、もうそこまで迫ってきていたのだ。
最後の日
牢屋のなかで、私は一人、神に祈りを捧げる。
私が、いったい何をしましたでしょうか、と。
ねぇ、ヒロインさん。
私、逆ハーなんて狙ってない、興味すらないの。
貴女の邪魔をする気も、貴女の居場所を奪う気もない。
ただ、生きていたいだけ。
だから、お願い。
私なにもしていない。
物語の強制力がそう思わせているだけで、私は貴女がくるまで皆で仲良く、平和に過ごしていた。
貴女がきて、全てが変わってしまった。
お願い。
私の居場所を
私の世界を壊さないで
ありがとうございました