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「入学日と、光明寺と後醍醐」

入学式の時にいた男の人は誰なのか……?


白河小学校1年4組後醍醐騅と、担任と他の生徒たちの連合軍との戦いが今始まる!!

2000年4月

白河小学校 1年4組教室


 しかしその願いは虚しく散り、先生は入ってきてしまった。

スライド式のドアを乱暴に右足で開け、先生はこのクラスに何らかの理由で来ていなかった何人かの生徒たちを脇にかかえやってきた。


「てめぇらよく聞け。集合時間に遅れたら、こいつらのようになる。」

先生は冷徹に言い放つと、生徒たちをまとめて床に勢い良く投げ転がした。

泣きつかれた生徒たちはぐったりしていて、しばらく起き上がらなかった。

 だが先生はそんな生徒たちを無理矢理起き上がらせた。

その様子を見て、他の生徒たちはみんな震え上がり、口をわなわな動かしていた。

それに、顔も青ざめている。


 これが……生徒を怖がらせて、自分の思い通りにする教師……。

僕は昨日傑兄さんに聞いていたことをふいに思い出してしまった。

勿論警戒はしていたつもりだったけど。

それに投げ転がされた生徒たちは泣くこともなく、それぞれの席に無言で戻っていったのだ。


 嘘……。

僕は次々と流れてくる冷や汗を止めらなかった。

傑兄さんが卒業する最後まで陰湿ないじめを受けていたのは、こいつへの恐怖に踊らされた生徒たち、と言っていたことが、この瞬間少しだけ僕にはわかった。

すると先生は全員を1人ずつ睨みあげると、

「よく覚えておけ。クソガキども。」

と、言い放ち教室から出て行ってしまった。


 しばらく重すぎる沈黙に包まれた。

誰一人話そうともせず全員下を向き、その様子をふと見渡してみると、僕以外のほとんどが聞き取れない、何か言葉をぶつぶつと呟いていた。

しかしそれを破ったのは、僕の真後ろに座っていた、しっかりしてそうな印象を受ける背の高い黒髪の男の子だった。


「先生いなくなっちゃったしさ、みんなで自己紹介とか……ん~……委員決めとかもやっちゃおうよ! 大したの、ないけどさ。」

男の子は立ち上がり、教卓に先生が残していったらしい紙をひらひらとみんなに見せながら教卓に立った。

するとみんなはさっきまでのことが無かったかのように、笑顔で頷いていた。

一時的なものなのかな。


「僕は、光明寺家第4男児、光明寺 (せいや)。よろしく! 今は雑用とかしてます! 将来は(あたま)になって光明寺家を……その……盛り上げていきたいです!」

誠は言葉を選びながら、慎重に話した。

声は幼く大きいため、多少耳にツン、と響く声であった。そして、誠は言い終えるとすぐにクラスの全員の顔をぐるりと見回した。

そして僕と目が合うと、目配せをした。

よし、次は僕だってことだよね。

僕は誠に左目でウィンクをすると立ち上がり、ニット帽をズレないように調整し教卓についた。


「僕は後醍醐騅です。誠と同じ、第4男児です。まだまだ至らないこと、沢山ありますけど、どうぞよろしくお願いします。」

僕は、まだ少し慣れていないけど、日本語で元気よく話した。だけどみんなは僕に対して、険しい顔をしていた。

そう言うのも……


「外国人なの?」

「その帽子、外しなよ。」

「教わらなかった? 公で話す時は、帽子を外しなさいって。」

「何か隠す必要ある?」

……聞き取れただけでも、みんなからは文句や心無い言葉が僕に突き刺さった。

だけど僕は無表情でその言葉たちをしっかり受け止めた。


 そして数分も経つと、動かず泣かずの僕を不審に思ったのか攻撃は止んだ。

帽子を外す訳にはいかなかったからね、僕は。

お母さんとの約束は、守らないとダメでしょ。

僕は心のなかでそう反論し、笑顔で全員の顔を見回し、

「では、次の人、お願いします。」

と、一言だけ言い席についた。

自慢じゃないけど、背は高い方だし足も長い。

だから少しくらい、かっこつけさせて。

僕はそう思いながら足を組み、みんなのことを少しだけ睨んだ。

するとみんなは僕のことを見なくなった。


 そうして全員分の自己紹介が終わり、委員決めにうつった。

そこでも誠は自ら手をあげ、仕切ることを宣言したが誰も文句は言わなかった。


「よーし、学級委員長、やりたい人ー!」

と、教室全体に通る声で言うと、水を打ったように教室は静まり返った。

なんだ、そこも日本人っぽいな。

僕は、勢い良くビシッと手をあげた。


「お! じゃ、騅くん! お願いします!」

誠は教卓に置いてあった木製の指示棒を僕に向けて言った。

その後も遅々として進まない委員決めが続き、1日が終わった。

そう言えば、先生はあれから姿を見せなかった。



後醍醐家別棟 自室

後醍醐 騅


 僕は夕飯を食べた後、今日1日のことを早速日記に書いた。

物心ついた頃から詠美姉さんと一緒に書いてきた日記は、今は自分1人で書いている。

だけど今だけ、姉さんは僕の隣で真剣な表情で手紙を書いている。純司兄さんの誕生日のために。

って、僕もまじめに書いてるけどね。

内容は誕生日の日に読むんだ。姉さんと一緒に。


「そう言えば、光明寺の子とお友達になったんだって?」

「あ、はい。」

僕がそう言うと、姉さんは表情を一気に曇らせた。

「あー……そうなんだ。光明寺の……何番目?」

「僕と同じで、4番目です。えっと――」

「4番目ならいいや。あ、ごめんね? 4番目は縁起が悪いから、当主になれないの。だから別にその子は無関係。仲良くしていいよ。」

と、ケロッとして早口で言うので、僕は目をパチクリさせてしまった。

「あ~えっとね、光明寺と後醍醐には確執、ん~……喧嘩しちゃってさ。まぁ何百年も前の話だけどね。」

「そ、そうなんですか……。姉さん、手紙書き終わりました。」

「よっし! すーいー。純司の誕生日、楽しみだね!」

「はい!」


 僕はこの家に来てから、4番目が継げないこと、光明寺家とは仲良くないことも知ることができた。

だけどこれからもっと深い関係を知ることになるとは言うまでもないよね。

引き続き、いつでもご指摘、ご感想、お待ちしております!

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