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「能力者、そして後白河家へ・・・」

後醍醐家の為を思って明に真実を話した騅であったが、結果は明を家出させてしまうというものになってしまった。

だがもう後白河との決戦が迫っている。

騅に考える暇なぞ無いのだ。


※本文の後半部分に、若干BL要素がございますが、性描写はありません。

後醍醐家本棟 詠飛の部屋前

後醍醐 騅



「うぅぅ……。」

詠飛兄さんの部屋に入るのは、もうここに来てから何年も経つのに緊張してしまう。だって、お父さんの肖像画をノックするのだから。

でも僕がまたいつも通り3回ノックすると、肖像画の向こうから「入れ」という詠飛兄さんの声がしたので、肖像画をそっと押し中に入った。



後醍醐家本棟 詠飛の部屋

後醍醐 騅



 詠飛兄さんの部屋に入るとすぐに僕はあることに気づいた。

あれ……?詠飛兄さんが居ない……。

僕は見たところどこにも見当たらない詠飛兄さんの姿を、まずは部屋全体に目をやり探した。

だけど、どこにも居ない。次に僕は来客用の椅子や机の下、そして詠飛兄さんのデスクの裏を覗いたが何もない。

その時僕の目についたのが、サイドテーブルに置かれた大きな金色の魚が泳ぐ黒縁の四角形の水槽だ。

その中で泳いでいる魚たちをじっと見ていると、どうも魚たちは窮屈そうだ。

同じところを行ったり来たりしているような……。


 その時だった。

――ビュン!

と、いう空気を切り裂くような音が耳元の本当のすぐ側で聞こえてバッと振り返ると、そこには主の居ないデスクと椅子があるだけだった。

ならばと思って、水槽の方を振り返ると、今度は窮屈そうではなくゆうゆうと泳ぐ金色の魚たちが居た。それに、数も……


「減ってる……?」

「そうだ、騅。」

と、後ろから聞こえるのは詠飛兄さんの声……?

「えっと…………?」

と、言いながら振り返ると、確かにそこには詠飛兄さんが居た。

「かくれんぼをしていた。楽しかったか?」

と、首を少し左にかしげる詠飛兄さんは、全く濡れてないし髪も乱れていない。

「詠飛兄さん、どこに隠れていたのですか?」

と、聞くと詠飛兄さんは、僕の後ろの水槽を指差し、

「これの裏だ。」

と、表情を変えずに答えるので、色んな人にこの隠れんぼをしているのか、と勘違いしてしまうくらいだった。

「でも、髪も服も濡れてない……。」

「当たり前だ。そんな命懸けで、隠れんぼをする人がいるか?」

「そうですけど……。でも、どうやって……?」

「そうだな。種明かしをすると、まず大前提としてその水槽は三角形だ。四角形に見えるように置いてあるだけでな。それで、その真裏に俺の能力であるガラスを鏡に変えて置き、その裏に俺がうずくまっていた訳だ。その水槽の高さは、1.2m。横幅は、2m。十分俺が隠れられるだろう?」

と、語る詠飛兄さんは自慢気でも無く、面倒そうでもない淡々とした語り口だった。

「へ、へぇ……! 詠飛兄さんって、すごい! ……あ、今日はその能力の話ですよね?」


「そうだったな。難しい話だから、なるべく簡単な言葉を用いて話す。騅は、旧御三家の存在はもう知っていると思うが、今日はそこに代々伝わってきている3つの能力について話す。まず後醍醐家の前身の大河家の長男から今まで“ガラス師”と呼ばれる、ガラスを自由自在に扱える能力が伝わってきている。何故ガラスなのか、それは分かっていない。次に鳥羽家の代々の長男からは、“森羅万象の予感”という、他人の考えていることや地震や雨等の予知、読み取りが可能な能力だ。これは本人の寿命を数分削ることで見える景色だから、寿命の限り予知可能だ。最後に黒河家は、“瞬間移動”という本人の体力の限り一瞬で色んな所に移動ができる、という能力だ。ここまで大丈夫か?」

と、僕の方を見る詠飛兄さんに僕は何度も頷いた。

後醍醐はガラス、後鳥羽は予知、後白河は移動。

不思議な能力だなぁ。


「次にその能力らの由来だが、それは政府の中でも偉い人が海外から想像もできないくらいの大金で買い取ったらしい。それを旧御三家に分け与えた。それが今でも続いているということだ。」

「なるほど……。それをどうやって、覚えるんですか?」

と、聞くと詠飛兄さんは左手の手のひらから小さなガラスの破片をいくつか出し、ガラスでできたテニスボールを作った。

「このぐらいの大きさの水晶を飲み込むことで、ガラス師になれる。あとは練習あるのみだ。そうだな……イメージすることで、武器も防具でも何でも作れる。」

「すごい……! じゃあ、剣も……?」

「出せる。あくまでも本人の想像力に準ずるから、俺が出す剣は昔ながらの脇差だ。」

と、言い終えると詠飛兄さんは両手で剣を形作った。

すると小さな光が周囲に散り、ガラスでできた剣が姿を現した。

「わぁ……!!」

と、目を見張っていると、詠飛兄さんはその剣を左手の中にすっぽりしまった。

するとその剣は完全に消えてしまった。


「再利用だ。一応、この能力にも上限はある。1日の使用限度はこの本棟くらいの特大サイズ5,000個分だ。まぁそれを小さいサイズでやり続ければ、ほぼ無限に近くはなるけどな。」

「じゃあ、1番強いですね! ……あの、この前海賊漫画で読んだんですけど、能力者には、弱点とかあるんですか?」


「ん~。“能力者封じ”というものはあるな。それは両腕を目一杯相手の腹の方まで引っ張って、両手首を力を込めて握る。これは“ガラス師”にはかなりの痛手で、両手の手のひらからしか出せないから反撃ができないのだが……やってみるか?」

と、少し戸惑った表情で両腕を差し出す詠飛兄さん。

僕はすぐに断った。

多分、詠飛兄さんは僕がしないことも予想していたのかもしれないけれど、詠飛兄さんの苦しむ表情も見たくなかったから。

「相分かった。聞きたいことはあるか?」

「はい! あの、僕はどうしたら……?」

「あぁそうであった。騅は、俺の背中に抱きついていてくれればいい。そこに身体全体を覆うガラスのシールドを作ってお前を守る。」

「じゃあ、詠飛兄さんのカッコイイ戦闘を間近で……!!」

「期待させたのなら悪いな。シールドの中は真っ暗だ。だが、俺の動きを感じることはできる。まぁ激しく動くから、しっかり捕まっていなさい。」

「はーい!」

と、左手をまっすぐ高くあげると、詠飛兄さんは笑顔で頷いてくれた。

すると突然ひらめいたように、

「そうだ、騅。お前に頼みたいことがある。」

そう言うと詠飛兄さんはサッカーボールをガラスで作って、僕に優しく投げ渡した。

「は、はい!」

と、受け取りながら言うと、詠飛兄さんは微笑んだ。

「俺がもし後白河側から“能力者封じ”を受けてしまった場合、向こうは薙刀で俺を一突きにするか、武器が無ければ、首に攻撃をしかけてくるだろう。その時シールドも解除される。そこで、お前に蹴って欲しいのだ。」

「蹴る……?」

「あぁ。相手の急所を、思い切り。」

「……それって、男の子の――」

「そうだ。サッカーボールを遠くのゴールに向けて蹴るくらいの気持ちで蹴るんだ。……本当はこんなことを頼みたくは無いのだが、“瞬間移動”を相手に“ガラス師”は、1,2回しか勝っていなくてな……。一応の対策だ。」

「わかりました!」

と、力いっぱいの声で返すと、詠飛兄さんは僕に歩み寄って髪をふわふわと撫でてくれた。

そして、その手を離すと、

「騅。17日の月曜日は学校からなるべく早く帰ってきなさい。俺ら後醍醐家は、その日をもって御三家を二強にする!」

と、力強く宣言してくれた。その顔は戦争の絵で必ず先頭に立っている大将のような、覚悟を決めた顔だった。

その時詠飛兄さんのデスクの上にある電話が鳴ったので、僕はまた椅子にちょこんと座った。

聞いちゃいけないとはわかっているけど、僕はその電話に聞き耳を立ててしまった。


「もしもし、後醍醐詠飛。……紳稲か? ……断る、当主からの雑用があるからな。……あぁではまた。」

と、電話を苛立ちながら切る詠飛兄さんは、更に前髪を両手で乱暴に乱した。

「どうか……しましたか?」

「あぁ気にしないでくれ。そんなことより17日までに、しっかり覚悟を決めておくんだ。いいな?」

「は、はい!」



??? ???

??? ???


 その人物は、後醍醐詠飛の写真が部屋全面に貼られた部屋で、等身大の詠飛のパネルを抱きしめていた。

「一体、いつになったら(わたくし)のこの気持ちに気づくのでしょう! こんなにも愛しているのに……!」

その男は盗撮したであろう写真1枚1枚に唇をおとし、恍惚な表情を浮かべた。

「あなたのすべてを愛し、知っているのはこの私。あとはあなたが私に抱かれた時の表情だけが……この写真には足りないのです。」

読了いただきまして、ありがとうございます!

引き続き、ご意見・ご感想をお待ちしております。

次回投稿日は、4月3日の日曜日です。

後白河戦では、BLの若干の性描写もございますことを、ご承知おき下さい。

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