「騅」
世界観がわかりづらいかもしれません。
1人の人生を書くことになるため、彼の偏見なども入ります。
ご了承下さい。
1994年9月6日
都内某所
病院から出てきた若い夫婦は、病院の内部を並んで歩いている時までは笑顔を浮かべていたが、正面入口の自動ドアを抜けるや否や浮かべていた仮面のような笑顔を消し去り、すやすやと母親の胸に抱かれ眠っている赤ん坊と共に病院の小さな裏庭へと駆け足で回りこんだ。
そのうえ、裏庭はひっそりとした雰囲気でその上誰も来た形跡も無いので、手入れのされていない草木が病院の一階部分まで高く覆い茂っている。
父親は額に汗をかきながら周囲を何度も見渡すと、近くのコンビニで事前にもらっていたダンボールを縫い目の粗いトートバックから乱暴に出して広げ、裏庭の中でも最も高い木の近くに置いた。そして母親は父親がダンボールの設置をするとすぐに、押しこむように赤ん坊を入れ、病院で貰ったB5の白い紙と黒いペンを使い、ダンボールの手前の方の蓋に『名前は騅です。拾ってあげて下さい。』と、走り書きで書き走り去った。
それから数分経った頃、後醍醐家長男の後醍醐詠飛が身を隠そうと病院の裏庭に転がり込んだ。
なぜこの男が身を隠す必要があるかと言うと、数年前御三家との癒着を大々的に報道されたことから、政府より〈賞金首制度〉という特殊能力を持った御三家の人間たちを殺すとそれ相応の賞金が貰えるといった政策で、殺し屋たちに狙わせる為に出されたといっても過言ではない制度が施行されたせいで自由に動けないのだ。
ちなみに詠飛はどんなガラスでも破片ですら自在に操ることのできるガラス師であり、賞金は上から2番目の4億円である。1番目はもちろん、最名家に最も近いと言われる後鳥羽家の当主だ。
詠飛が裏庭に回るとすぐに、ダンボールの存在に気がついた。
「こんなところに、ダンボール……?」
不思議に思いダンボールに忍び足で近寄りそっと突っついた。
しかしダンボールは少し移動しただけで特に返事はなかった。
そこで気になって中を開けてみると、そこには産まれたばかりの赤ん坊が、毛布に包まれすやすやと寝息を立てていた。何かメモは無いか、とダンボールを見回すと、走り書きのメモが挟まっていた。
「『名前は騅です。拾ってあげてください。』……だと!? こいつは、捨て子なのか!? 仕方あるまい。一度見たら、拾ってやらねばならん。」
詠飛は消え入るような小声で言うと、優しく赤ん坊を胸に抱きかかえ、本当に安心しきったその顔を覗き見た。するとこの頃の弟たちのことをふいに思い出してしまってついついあやしていると、草木の茂みから五人の刺客たちが三方から飛び出してきて、
「ガラス師を捕らえよ!!」
と、叫んできたのだ。詠飛はガラスの破片を自身の身体の周りにまとわせ、銃弾を防ぎつつ家路に向かい駆け抜けた。
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