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イベント続報

「なんだこれ、メッセージ……?」


 モモはレット、そしてミントを連れて女子3人で街の中に買い物に出かけている。本当はモモが1人で出かけようとしていたのだが、レットに「ストーカーくさいのがいる」と説明をしたところ、顔を出したらぶん殴ってやるとの頼もしい言葉を頂いたので同行をしてもらった。


 というわけで、今日は珍しく俺1人だ。ザックは何やら用事があるとのことで、ギルドハウスにはかなり少数のメンバーが残っているだけだった。


 ソファに腰掛け、ウトウトとしていると、ピローンという効果音が響き、メッセージの着信を知らせた。メッセージは2通だ。


「げっ……」


 そのうちの一通を確認して、俺は思わず表情を歪めた。差出人の欄には「白夜」との表示。なんでコイツからメッセージが飛んでくるのだろうか、フレンド以外にもキャラの個別IDが解ればメッセージを飛ばすことはできるが、いったいいつ確認したのだろうか。知らないうちに確認をされていたかと思うと少し気味が悪い。


まあ、とりあえず開いてみるか。メニューウィンドウを開き、メッセージのアイコンをタッチすると白夜からの文面が表示された。


『やあ、ごきげんようユウキくん。運営から発表されたイベント続報、中々胸が熱いじゃないか。もちろん、僕はモモちゃんを狙うつもりだ。それでは、イベント当日を楽しみにしているよ、せいぜい今のうちにスキルでも見直しておくんだね』


 なんというか、何を言いたいのかが良くわからない内容だった。イベントの続報? モモを狙う? にしても何で俺は喧嘩を売られたのか。彼からのメッセージだけでは理解できず、そのメッセージにも記載されていたイベントの続報を確認するため、俺はもう一通の運営からのメッセージを開いた。


『プレイヤー諸君、先日は見事な戦いを見せてくれたことに感謝をしよう。さて、あの敵を倒した君たちに次のイベントの情報だ。新たに、《王都シュヴァリエ》を開放する。そこのコロシアムにて、プレイヤー同士のトーナメントを予定している。イベントを乗り越えた諸君の中で誰が一番優れているのか、ハッキリさせようではないか。むろん、今回は負けたからと言って死亡扱いにはならない。加えて、優勝者にはゲームの世界での願いをひとつ、叶えてあげようと思っている。開催は来週だ、詳しくは王都を訪れるとわかってもらえるだろう。辞退も可能だが、私は諸君の参加を楽しみにしているよ。それでは、失礼』


 運営からのメッセージを見て、白夜が何を言いたいのか、理解できた。彼はコロシアム戦のトーナメントで優勝して、モモを自分のギルドに引き入れるつもりなのだろう。「ゲーム内での願いを叶える」と運営サイドが言っている以上、彼の願いはそんな難しいものでも無いだろう。


「白夜が優勝したら、モモは……」


 宝石柄ジュエリーシリーズの性能は俺が身を持って知っている。ステータスの上昇も含めて、一般的なプレイヤーから大きく外れた力が手に入る。白夜が参加をするというのなら、優勝候補になるのは間違いない。

 しかし、このイベントは俺にとっても悪い内容では無い。今の運営の対応なら、優勝の報酬として《夢破りの鍵》を求めても、聞き入れられる可能性がある。だとしたら、此方から鍵を見つけなくても良い、最高のチャンスにもなる。


「これで、終わらせてみせる。アリーシャ、力を貸してくれ……」


 俺は、参加を決意した。もしかしたら運営の言っていることを100%信用するわけではないが、鍵を手にいれ、ゲームを終わらせられる可能性があるなら。俺は挑まなくちゃいけない、逃げるわけにはいかない。


 背中の鞘から剣を抜き、その美しい刀身にそっと手を触れて、この剣を俺に託してくれた彼女に勝利を誓った。 






「ただいまー! ユウキくん運営のメッセージ見た!?」


 それから数分後、買い物から帰ってきた女子達、その中から慌てた様子でモモが駆け寄ってきた。どうやら、彼女達もメッセージを見たようだ。モモの瞳はやる気と決意に満ちている、もしかして、彼女もトーナメントに参加するのでは……。そう不安に駆られた矢先だった。


「私も参加するよ! 優勝して叶えたい夢があるの」


「モモも参加するのか……困ったな、俺も参加しようかと思ってたんだけど」


 モモも参加するというのなら、もし彼女が勝ち上がってきた場合には俺と戦う可能性も充分あるわけで。そうなってしまったら、なんだか戦いづらい。困ったように頭をかく俺の気持ちを察したのか、彼女はいつも通りの笑顔を浮かべた。


「ユウキくんも叶えたい夢があるんでしょ? だったら一緒に頑張ろう!」


 俺の気持ちは察してくれた様子ではあるが、俺の考えていることまでは察していない様子だ。俺と戦う可能性があることに気が付いているのかいないのか、いつも通りの無邪気な笑みからは想像することができない。ただ、先ほどのモモの表情は今までに見たことが無いくらい決意に満ちていた。それほどまでに、叶えたい夢が彼女にもあるのだろうか……。

 ただ、叶えたい夢があるのは俺も一緒だ。俺はこの世界を終わらせたい。それは絶対に忘れてはいけない義務なのだから。しかし、一緒に頑張ろうと笑みを浮かべるモモの姿に、変なライバル意識を持つことは無かった。「あぁ、そうだな」と、俺はモモの頭をポンポンと軽く2~3度叩いた。


「アタシはパス、ユウキ達と戦いたくはねぇからな」


「わ、わたしも……でも! 代わりにお兄ちゃんのこと精一杯応援するからね!」


 ミントが参加しないのは予想できたが、レットが参加を辞退するのは少し意外だった。こういう言い方は失礼かもしれないが、言ってしまえば彼女は「戦闘馬鹿」と言っても良いほどのバトル好きだ。対人戦になれば熱くなるものだと思っていたのだが。まあ、彼女には彼女なりの考えがあるのだろう。

 ミントは回復職、もちろん対人戦には向いていない。なにより本人が戦いをあまり好まないタイプだ、辞退するのはわかっていた。


「日程は来週って書いてあったけど、詳しくは会場のある《王都シュヴァリエ》に行かないと詳しくはわからないみたいだな……。もうエリア開放はされているみたいだし、明日にでも見に行ってみるか」


「おー!」


 モモは早くもやる気充分といった感じだ。元気に拳を突き上げて笑みを浮かべている。他の2人も、新しいエリアということでまんざらでも無さそうだ。彼女達にとっては半分は観光のような気分なのかもしれない。俺自身も、新エリアは正直に言って楽しみだ。


 とにかくは明日だ。明日、《王都シュヴァリエ》に向かいトーナメント戦の概要を確認する。ついでに、今のところの参加人数なんかも確認したいところだ。



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