二人で③
引っ越しをした数日後、夜中に帰って来たヒロは碧の部屋から物音がするので覗いてみた。
ヒロ「碧、いい?」
碧「いいよ〜」
ヒロ「まだ起きてたの?」
碧「お帰りなさい。気付かなくてごめんね」
ヒロ「凄いね・・・部屋」
碧「うん・・・もう寝ようと思って、これでも片付けてるんだけどね」
ヒロは碧の部屋が作業をするには狭くて、物が多いのが気になった。
ヒロ「碧、いつだっけ? 出掛けるの」
碧「え? あぁ、来週の木曜だよ?」
ヒロ「ふーん・・・昼までに持って行って、買い物して来るんだっけ?」
碧「そうだよ。何かあった?」
ヒロが来週の事を突然聞いたので、碧は何だろうと思った。
ヒロ「いや、別に。どうだったかなって・・・」
碧「何かついでに用事ある?」
ヒロ「うーん・・・買って来て欲しい物あるかも。またその日に頼むよ。おやすみ」
碧「おやすみなさい」
碧はヒロが何か企んでいるような気がしたが、それが何なのか全く検討もつかず、もう寝る事にした。
ヒロは仕事の合間に家具屋に来ていた。
(碧、驚くだろうな・・・)
碧に内緒で一つの家具を買った。碧が出掛ける日に配達してもらうようにし、ヒロはその日を楽しみに過ごした。そんな計画を知らない碧は、コンクールの作品の仕上げに追われる日々を過ごしていた。
そして、碧が出掛ける日になり、ヒロは碧に注文してある本を受け取りに行ってもらう事にした。碧は作品を納入し、画材等を買いに行った。色々見て回ったため結構時間がかかってしまった。ヒロに頼まれた本屋にも寄り、夕食にしようとお寿司やデザートを買って帰った。
ヒロは碧が出掛けると、配達の予定時間まで部屋を片付けていた。インターホンが鳴る。
(来た!)
使っていない部屋に運んでもらい、処分してもらう物を持って行ってもらった。
(これでいいかな・・・)
運んでもらった物をすぐに使えるようにしながら、碧の反応が楽しみで落ち着かなかった。
碧「ただいまぁ」
碧が買い物から帰って来た。
(ヒロ? ・・・いないのかな?)
碧は買って来た物をリビングに起き、画材等を自分の部屋に持って行った。
(・・・・・・え?)
自分の部屋のドアを開けてビックリした。
(何で? ・・・ヒロ?)
慌ててヒロの部屋へ行く。
碧「ヒロ? いる?」
ヒロの部屋の前で声をかけるとヒロがドアを開けた。
ヒロ「お帰り」
碧「・・・ただいま」
ヒロ「どうしたの?」
碧「・・・ないんだけど?」
ヒロ「何が?」
(絶対ヒロだ!)
碧はヒロの笑顔に確信した。
碧「・・・ヒロ、どこにやったの?」
ヒロ「何を?」
碧「何をって・・・!」
ヒロの部屋を見て目を疑った。
(ない!)
碧「・・・・・・」
ヒロ「碧?」
碧は自分の部屋の隣の使っていない部屋に行ってみた。
(何? これ・・・)
ヒロも碧を追うように来た。
碧「・・・どうしたの?これ・・・」
ヒロ「買ったの」
碧「・・・前のは?」
ヒロ「ないよ。処分した」
ヒロは嬉しそうに答える。
碧「どうして?」
碧「・・・・・・」
碧は黙ったままリビングに行った。
ヒロ「・・・碧?」
碧「何で?」
ヒロ「・・・碧の部屋、何か作ったりするのに狭そうだったから」
碧「・・・・・・」
ヒロ「ベッドない方が部屋が広くなるし・・・」
碧「・・・そうだけど、黙って勝手に処分しないでよ」
ヒロ「驚かそうと思ったから」
碧「驚いたよ、驚くよ、誰だって・・・朝あった物が夕方にはないんだから・・・」
ヒロ「碧、怒ってる?」
碧「怒ってるよ・・・勝手に自分の物捨てられたんだから」
ヒロ「ごめん・・・」
碧「それに、ヒロのも何でないの?」
ヒロ「碧と、一緒に寝ようと思って」
碧は返す言葉がなかった。
碧「ヒロ、何で勝手に決めちゃうの?」
ヒロ「ごめん・・・」
碧「ヒロのそういう所って、好きだけど・・・今日は嫌い」
ヒロは碧の口から「嫌い」という言葉を聞いて焦った。
ヒロ「ごめん・・・碧」
碧「・・・もう、いいよ」
ヒロ「・・・怒ってない?」
碧「だって・・・もう仕方ないじゃん。だけど、これからは聞いてからやってよ!」
碧が買って来たお寿司を食べながら、ヒロは碧に頼んだ本を袋から出した。
ヒロ「碧、誕生日は引っ越しでバタバタして何もしてなかったから・・・ここ行かない?」
碧「・・・え?」
碧はヒロが出した本を見た。
(ディズニーランド・・・)
ヒロ「一日しか休みないから、どっちかしか行けないけど・・・」
碧「・・・行きたい」
ヒロ「連休明けたら行こう」
碧「うん」
ヒロは碧の機嫌が直ったのでホッとした。