過去⑤
車内で数時間眠ると外が明るくなり、碧が先に目を覚ました。ヒロはまだ寝ている。ヒロの寝顔を見ていると、ヒロが目を覚ます。
ヒロ「ん・・・」
碧「おはよう・・・ヒロ」
碧が少し恥ずかしそうに言う。
ヒロ「おはよう・・・眠れなかった?」
碧「ううん、たまたま早く目が覚めたから」
ヒロ「そっか」
ヒロはエンジンをかけ、エアコンを入れた。
ヒロ「このまま温泉行く? お昼はそこで食べるけど・・・朝ご飯食べたいよね」
碧「うーん・・・」
ヒロ「チョット何か食べて行こうか」
碧「そうだね」
ヒロが予約した温泉に向かう途中でコンビニに寄り、朝ご飯を調達した。
ヒロ「お昼は美味しい物食べれるから、これで我慢してね」
車の中で食べながらヒロが言った。
碧「我慢なんてしてないよ?」
ヒロは碧の頭をポンポンと撫でた。
温泉旅館に着いた。部屋に案内され、一息つくと温泉に入った。
ヒロ「ゆっくりしておいで」
碧「うん」
ヒロは温泉に浸かりながら、午後の予定を考えた。
(このまま泊まるのもいいけど・・・飲みにも行きたいし・・・どこかないかな・・・)
部屋に戻ると、PCでルームサービスが充実したホテルを探した。いくつかあり、予約を入れようとするが、なかなか希望通りの部屋がない。
(困ったな・・・碧とゆっくり話がしたいのに・・・)
仕方なく一番希望に近いホテルを予約した。
(急だしな・・・仕方ないか・・・)
碧は傷を濡らさないように気を付けて温泉に入った。
(碧が好きになるのを待ってるから・・・)
ヒロに言われた言葉を思い出す。
(待ってるって・・・私はヒロの事を好きになっていいの? 信じていいの? 好きになってどうなるの? 信じてどうなるの? また前と同じだよ・・・)
高校生の時を思い出した。温泉で温まりながら目を閉じた。
(きっと今だけだよ・・・すぐに・・・誰も私の事なんて・・・)
部屋に戻るとヒロは電話をしていた。
ヒロ「お帰り」
碧「・・・ただいま」
ヒロ「どうかした?」
碧「え?」
ヒロ「何か元気ないから」
碧「あ・・・チョット長く入り過ぎたから・・・」
ヒロ「大丈夫?」
碧「大丈夫」
部屋に食事が運ばれ、食べながらヒロは碧の予定を聞いた。
ヒロ「あのさ・・・これ食べたらどうする?」
碧「どうするって?」
ヒロ「碧、学校とかは?」
碧「学校は金曜日の卒業式行くだけだから・・・」
ヒロ「じゃあ、明後日まで大丈夫?」
碧「うん」
ヒロ「夜景が綺麗なホテルを予約したんだ」
碧「うん」
ヒロ「イヤ?」
碧「ううん。何で?」
ヒロ「・・・じゃあ決まりね」
ヒロは温泉に来てからの碧の様子が気になったが、また夜にゆっくり話そうと思った。