表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

過去④

ヒロは部屋の前で深呼吸をし、インターホンを鳴らした。すぐにドアが開く。

ヒロ「ごめん・・・ちょっと電話があって遅くなった・・・」

碧「ううん」

ヒロ「行こっか」

ヒロは碧の先輩に言われた言葉が気になったが、何となく碧に聞きにくかった。何事もなかように、碧の荷物を車に運んだ。

ヒロ「お腹空かない? まずご飯行こうよ」

碧「うん、そうだね」

ヒロ「これからご飯食べて、T県のSって所に行くよ。穴場らしいんだ。星を見るのに。で、そのまま温泉行こうかなって思ってるけど・・・どうかな?」

碧「いいですね」

ヒロ「でしょ?」

途中で通りがかったお店で簡単に食事を済ませ、星空の穴場と言われる場所へ向かった。


ヒロ「着いたよ」

車から降りると、ちょっとしたプラネタリウムのようだった。

碧「・・・スゴイ」

ヒロは真上を見上げたままの碧に、後ろから毛布を掛けた。

ヒロ「温かいでしょ?」

碧「ありがとう」

ヒロ「首・・・疲れるよ?」

ヒロは自分も毛布にくるまり芝生に座った。

ヒロ「おいで・・・」

碧を前に座らせると、自分にもたれさせるように後ろから腕を回した。

ヒロ「この方がラクでしょ?」

碧「うん・・・」

しばらく黙ったまま星空を見上げた。

ヒロ「碧って、海もだけど、スゲー真剣に見てるよね」

碧「・・・何かね」

ヒロ「うん」

碧「どんな気持ちの時でも、見てると落ち着いてきて、同化したような気持ちになれるんだ・・・」

ヒロ「同化?」

碧「・・・うん・・・このまま消えちゃえたらいいのになって・・・」

呟くように話す碧に、ヒロは何と言っていいのか分からなかった。無言で星空を見つめる碧を抱き締めながら、ヒロの頭の中に碧の先輩に言われた言葉が浮かんだ。

(あいつは誰も好きにならない。誰にも心を開かない・・・)

(碧に何があるんだろう・・・)

ヒロは腕の中にいる碧の心に触れてみたくなった。

ヒロ「碧・・・」

碧「・・・ん?」

ヒロ「好きだよ」

碧「・・・ありがとう」

ヒロ「碧は?」

碧「・・・分からない・・・でも・・・」

ヒロ「でも?」

碧「ヒロトさんに会いたいって思った・・・」

ヒロは碧を強く抱き締めた。

碧「・・・ヒロトさんにこうされるのは嫌じゃない・・・だけど・・・よく分からない・・・」

ヒロ「碧・・・いいよ、無理に考えなくて。碧が好きになるまで待つから」

周りにチラホラと何組かのカップルが星を見に来始めた。

ヒロ「そろそろ車に戻ろうか・・・ルーフから見えるよ」

碧「うん」


車に入りルーフを開けた。

ヒロ「ちょっと視界が狭くなるけど・・・」

碧「そんなことないよ」

ヒロ「朝になったら温泉に行こうか。午前中にチェックイン出来て、お昼食べれる所があるんだ」

碧「うん」

ヒロ「それまで少し寝ようか」

ヒロは碧に毛布を掛けた。

碧「ありがとう。ヒロトさんて・・・」

ヒロ「何?」

碧「優しいね」

ヒロ「イキナリ何?」

碧「だって・・・そう思ったから」

ヒロ「碧、ヒロでいいよ」

碧「え?」

ヒロ「名前、ヒロでいい」

碧「・・・ヒロ」

ヒロ「そう。おやすみ」

碧「おやすみなさい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ