過去③
碧「・・・もしもし」
ヒロ「良かった! やっと繋がったよ」
碧「・・・・・・」
ヒロ「碧? どこにいるの?」
碧「海・・・」
ヒロ「今すぐ行くから!」
電話が切れると、碧はまた海を見つめた。
ヒロは碧と初めて会った海へ向かった。
(碧・・・)
海辺を歩きながら碧の姿を探した。
(・・・いた!)
碧はまだヒロに気付いていない。ヒロは後ろからそっと近付き、碧を抱きしめた。
ヒロ「碧・・・」
碧は黙ったままヒロにもたれた。ヒロは自分の頬を碧の頬にくっつけた。
ヒロ「冷たいね・・・どれくらいいるの?」
碧「・・・電話した後から」
ヒロ「碧・・・ごめん。打ち合わせ中だったんだ、電話・・・」
碧は首を横に振る。
ヒロ「明日から3日間休みなんだ・・・どこか行く?」
碧「・・・・・・」
ヒロ「・・・約束だったね」
碧「ヒロトさんに会いたいなって思って・・・」
碧はヒロの腕を握った。
ヒロ「碧?」
碧「・・・一緒にいて」
碧は小さな声で呟いた。
ヒロ「碧?」
碧「1人になりたくない・・・」
ヒロ「・・・分かった。今からどこか行こうか? どこがいい?」
碧「え?」
ヒロ「碧が行きたい所に連れて行ってあげる」
碧「・・・星、星がいっぱい見える所に行きたい」
ヒロ「じゃあ、出かける準備しないとね」
碧は黙って頷いた。ヒロは碧を送り、碧が支度をしている間に自分の支度をしに戻り、碧を迎えに行く事にした。
(支度ってどこまでしたらいいんだろう・・・)
(今からって事は、今日は帰らないよね・・・休みは3日間って言ってたけど・・・)
部屋の中をウロウロするだけで、何も準備が進まない。ヒロが迎えに来るまで約2時間。とりあえずお風呂に入ったり身支度をしながら、着替えなどの準備をした。
ヒロは碧を送ってから、自分の支度をしたり、PCで星が見えるスポットを調べたり、何件か電話をした。
(星ならあそこだよな・・・)
カーナビを設定し碧を迎えに出る。あと5分くらいで着く頃、碧にメールを入れた。
碧の部屋に着き車を停めた。部屋の前に男がいる。
ヒロ「何か用?」
男「・・・何だよ、お前」
ヒロ「こっちが聞いてるんだけど」
男「・・・この部屋のやつの知り合いだよ!」
ヒロ「知り合い? ふーん・・・」
男「お前は何なんだよ!」
ヒロ「僕? 彼氏だけど?」
男「・・・ハァ? んなわけねぇだろ!」
ヒロは男が興奮して怒鳴り出したため、近くの公園へ連れて行った。
ヒロ「ちょっと来いよ」
男「何だよ! 離せって!」
ヒロ「お前、碧にしつこくつきまとってる奴だろ?」
男「・・・お前、この前の電話の男か?」
ヒロ「やっぱりね。あのさ・・・もうやめてくれないかな」
先輩「お前に関係ないだろ!」
ヒロ「碧は僕の彼女だ!」
ヒロは男を睨む。
先輩「・・・フッ」
ヒロ「何がおかしい?」
先輩「あいつは誰も好きにならないよ・・・あいつは人を信用していない・・・誰にも心を開かないんだよ! 例えお前でもな」
ヒロ「どういう意味だ!」
ヒロは男に掴みかかる。
先輩「知るかよ! お前・・・彼氏ならあいつに聞けよ!」
男はヒロを振り払うと走り去った。
(・・・・・・何だ? ・・・・・・碧に何かあったのか?)
ヒロは混乱した頭を落ち着かせながら、碧の部屋へゆっくり歩き出した。