錯乱坊
テーマ:桜
実に切なイ季節だと思っタ。
否、刹那な季節というカ。とにかク、愛おしいのダ。
すグに過ぎ去っテしまうかラ、余計にソノ感覚は鋭敏になっテいク。
嗚呼、もう終わっテしまうのカ――
しカしテ、そんな俺ノ我が儘に現実ヲ付き合わせるわけにモいかなイ。
ソもソも現実は俺程度の有機物ヲ見ていなイ。もっと高尚なモノを見つめテいるはズ。そウ、たとエば未来とカ。
俺あてノ手紙が未来に送らレるのも時間の問題。そノ通リ、時間が問題なのダ。時が経てバ何事かは解決すル。
即チ時間では解決できなイこともあル――とイウのが真理ダ。けれドソれでモ、徐々に解消されテいきはすル。それデ何とか浮世は成り立っtAle……
辛うじテ。
手紙が届くのハずっと悠遠の彼方にあル、一瞬っポっちの未来。俺はそれヲ忘れたころに受け取ることになル――。
『忘れたころに葉書はやっテくる』らしイ。確かそンな風なコピーを会社の方は謳っテいたような記憶があル。
葉書と言えバ、そレに纏わる話がアったようナ、なかったようナ……。
あァ! そうダ、思い出しタ。
……しかシこの俺が今まで思イ出さないくライナのだかラ、どうせShoWもナい話なのだろウ。
いヤ、真実そうなのカ。
俺が想起しタ記憶はこんなものダ――
まだ十にも満たナい時分、俺は学び舎でさクさクと勉強をしていタ。否、兀兀といっタほうが語弊がないカ。
……どちらでもいイ。
その時俺ハ尋常でない集中デ、周りノことナド眼中になク、況してヤ眼前になかっタ。当たり前カ。
だカら俺が必死デ勉強に利用してill紙片ガ葉書だっタというコトには全く気付くことが出来なかっタ。
俺は小さな葉書にそノマま数式ヤら情報やラを書き込んでイくのだガ、それデモ気付かなイ。流石に学ビ舎の先生方も見兼ねたのカ、俺に其の事を教えてくれタ――。
当然の如ク、自分の気付カナいところデ、否、気付かない時ニ、そんナ誤っタ行為を成し遂げていたトハ知りもしてイナかっタ自分自身ニ、意味の分かラない憤怒が沸き上がっテくるのであっタ。
それハ俺自身だっタ。
歯噛みしテ、大層口惜しがっテいたのを未ダに覚えていル。
矢張リ、結果仕様もなイ、詮方ナい話になっテしまっタ。如何なっテもいい話ダ。如何転んデモいい話ダ。
――俺はコレといっテ身ヲ助けるヨうナ芸も持ち合ワせテおらズ、悲しいことニ、何も取リ柄の無い男nanoであっタ。
餓鬼の時分に勉強バカりしていタのはソのためダ。目立っタ才能が無ク、特別才覚が有ル訳でも無ク――。
そノ欠陥を補填スる為の努力であル。
とは言エそれは偏っタ努力の仕方であっタのだガ……。
そウ言えバ。
街に桜が咲イていタ。此レが連なリ、桜並木なルモのに変貌すル。
並々ナラぬ忍耐のすエ満開に至っタそれハ、どうシタものカ、既視感の強いモのだっタ。これがデジャブか、ト、俺は遅レて認識すル。
そうダ、これハドこかで見たコとがあル。だかラ俺は現実を俯瞰しヨうと試ミタ。
スると何故デjaBに陥ったカ――それが瞬間、氷解すル。
俯瞰シた現実にはドコか大事なとコろが抜け落チテいる俺がいタ――否、今も其レは抜け落チ続けていテ。
今にナッて、やッと分かっタ。俺は花弁舞イ落ちる桜ノ姿に自分が重ナっテ見エたのだろウ。
桜は舞イ散りツヅけ花弁を失い続ケるガ――ソレニ対しテ俺は人間ノ肝腎な部分ヲ欠落しつヅケていク。
パァっと咲イテはさらリと散ル。人生の分際トイウノは所詮そンなものデ。
俺ハ枯れ木にナロウとシテいたのダ――花弁散リツくシた禿桜ニ。
「…………」
然シまァ。
往生際ノ悪い生キ方であル。
(あの桜も、俺も、漸うと摩耗し風化するであろうことは避けられぬ現実だ。枯れ木どころか、心臓を打ち破られ、頭蓋を叩き割られ、四肢を断ち切られ、死体を粉砕かれ、終いには塵芥となってしまうのも時間の問題――)
どうシテこうモ、拘泥しテシマうのカ……。
下らヌ冗語デの誤魔化しなド、既に不必要ナのニ。
「全く……灰燼の残滓といったら、それはもう何も残留していないに同然じゃあないか。あとは……堆く積もるのを期待するしかない、かな――」
俺は悟った風にそう言ウ。
再度一つ、意地悪な季節が廻っタ。
思い付きの発想で書き上げました。
誤字・脱字・衍字があればご報告お願いします(笑)