ギルド登録
結論から言うと子供たちは無事だった。泣いている子もいたが怖くなっていただけで怪我をした子はいない、おっさんと前後を挟みながら街まで連れて帰る。門までたどり着くと親たちが集まっていて子供を抱きしめたりしかったりと大騒ぎになった。あとから聞いた話だが防壁の一部が崩れ、子供が抜けられる程度の穴があることがわかった。そこから抜け出して冒険ごっこをしていた子供たちが森に入り込んでウサギ狩りをしていたらしい。ウサギ一羽で駄菓子がたくさん買えると言うことらしいがよく今まで無事だったな。
どっと疲れたがなし崩しで街には入れたのはラッキーだった。兵士に尋ねると紙束とこっちを見比べてなにやらしていたようだが行ってよいということだったのでそのまま入場する。早速冒険者ギルドを訊ねて見る事にしよう。
王都というだけあって防壁の中にはモリヤマ村と違って人と建物が密集している。大通りを進んでいくと十字路になっていてこのまま進むと城に着くようだ。城の周りにはまた堀と防壁、分厚そうな門と警備兵がいていかにも王城って感じだ。今のところ用はないのでどっちに行こうかな。ちょうど果物を搾ってジュースにしている店があったので訊ねてみる。人間のおじさんだ。
「一杯くださいな」
「あいよー、どれも銅貨3枚だ。オランジがオススメだがどれにする?」
朝食3回分と考えれば高い気もするが街中ならそんなものなんだろう。ウサギの稼ぎで昼飯が食べられるか心配になってきた。
それにオレンジ……に見えるがこれはオランジらしい。ずいぶんとでっかいがまあ種類的には同じようなものか。
「どれもおいしそうですがオススメならオレンジでお願いします」
「よしきた、オランジだな。ちょっと待ってな」
ざくぎりにして年季の入った木製の絞り機に入れ、おじさんが力を込めてジュースにする。すごい力技だ。下の器に果汁がたまっていき実にうまそうだ。
「氷は銅貨1枚だがどうする?」
「お願いします」
あれだけ走ったせいか喉がカラカラだ。冷たいのを流し込みたい。おじさんが木箱から氷を取り出し器に入れた。グラスじゃなくて木の器というのは初めてだがファンタジーっぽさがでてる。銅貨4枚を支払うと早速一口飲む
「おぉっ! うまい」
「はっはっは、うちは恐れ多くも初代ヒガシヤマダ様も飲みにいらした伝統ある店なんだぜ。まあ爺さんのうけうりなんだがな」
「ほう、それはそれは。御爺様はまだ現役で?」
ヒガシヤマダさんがいつごろ着たのかわかりそうな手がかりが掴めたな、まあ図書館があればすぐ判りそうな気もするが。
「俺がガキのころに逝っちまった。まあ70を超えてたから大往生だわ」
「これは無作法をしました。ぜひお話を聞かせていただきたかったのですが残念です。」
「なあに、笑って逝っちまったからいい人生だったんだろうさ。この店とこの絞り機は今でも現役だし、俺も死ぬまでここで絞ってるんだろうが悪くないと思うようになった」
「ご主人、お子さんは?」
「娘と息子が一人ずついる、娘は嫁いじまったが息子は可愛い盛りでなぁ。『将来はジュース屋さんになる』と言ってくれて安心よ」
「何よりですね。」
「そのオランジは嫁いだ娘の船問屋から仕入れた奴でな、南国の甘い種類でかさもあるから絞るのにぴったりなんだ。」
海洋交易ができてるとは驚きだ。魔法もあるならそんなに難しくはない、のか?
「通りで甘いわけですね。」
「昔は酸っぱくてあんまり好きじゃないって子供が多かったが最近はこんな種類も増えてきてありがたいことよ。酒を割るには酸っぱいほうがいいって奴も多いから半々だがな」
酒造文化もあるのか。前は飲めなかったけどこの体はどうなんだろう。とりあえずジュースを飲み干すと肝心なことを忘れていた。
「ご主人。この国に着いたばかりなんですが冒険者ギルドの場所とオススメの宿屋があったら教えてもらえませんか?」
「ギルドなら大通りを東に行った端にあるぜ、ただこの街じゃいつでも閑古鳥よ。兄ちゃんも冒険者なら北のメイキュウマエに行ったほうがいいぜ」
「王都なのに閑古鳥なんですか?」
「おうよ、初代様が東にあったダンジョンをぶっ壊してくれたおかげでこのあたりに魔物はほとんどいないし野良が出ても騎士団のおかげですぐ片付いちまうからな。」
ヒガシヤマダさんSUGEEE、ダンジョンは壊すものだったんですね。
「メイキュウマエというと山脈近くの危険地帯でしたか?」
「メイキュウマエ城だな。街ん中なら大丈夫だと聞くが冒険者は大抵そっちで稼いでるぜ。この街に来る冒険者は兄ちゃんみたいに知らない奴か城に手続きがいる時だけだな」
冒険者をしたかったわけじゃないからこの街でいいです。
「宿なら大通りで取れば間違いない。初代陛下のお達しを守って営業してる店ばかりだからな、ただ金がないならギルドの2階が宿舎になってるからそっちにしときな」
「そんなに高いんですか?」
「初代様は宿屋と厠の神様だぜ? ”快適な生活は寝る時と吐き出すときに生まれる”ってよ。まあこの街だと泊まるのが商人連中ばかりだからどうしても、な。兄ちゃんガタイはいいが武器も防具も持ってないみたいだし駆け出しだろ? せめてマントぐらい持っておかないとこれからの時期死んじまうぜ」
「ちょっと事情があってなくなっちゃって、朝までは持ってたんですよ」
「わかったわかった。まあ早いとこ金溜めてなんとかしろよ」
駄目な子扱いされている気もするがしょうがない、とりあえずギルドに行って登録だけでもしておこう。人が少ないなら目立たなくてすみそうだし。
「ご馳走様でした」
「もう少し寒くなったらヒガシスペシャルの時期だからよ。また来てくんな」
「それは初代様の飲んでいたやつです?」
「配合は秘密な。うまいぞ」
別れを言って通りへ戻ると変わらず人が多い。東へ進んで防壁の手前まで来ると一際立派な建物がある。これが冒険者ギルドかな?
ウェスタンドアを開けるとやけに暗い。イメージとしては冒険者がたむろしててにぎやかなものだと思っていたのにこの寂れっぷりはひどいな。窓口がたくさん並んでいるのに明かりがついているのは1つだけで他は張り紙でふさがれている。
『いちばんへどうぞ』
なるほど、明かりがついているのが1番なんだな。って平仮名で書いてある? 読めるのはありがたいがなぜ急に平仮名なんだ……とりあえず1番に行って見る。
書類仕事に熱中しているのかこちらに見向きもしない。それでいいのか。
「もしもし、1番はこちらでいいですか?」
一応訊ねてみる、ビクリと震えて視線があがってこちらを見つめてくるのはネコミミ娘でNRSを発症しそうになったが耐える。神様本当にありがとう。
「はい、あの1番はこちらですうぇえ」
こちらに飛び出して泣き出したネコミミ娘さん、なぜだ(迫真)。昨日の宿屋の娘さんもネコミミだったけど突然泣き出したりはしなかったし会話に不自然なことろがあったわけでもない。落ち着かせようと声をかけながら訊ねてみると語りだした。
なんでもこのギルドはこの国でもっとも伝統あるギルドだったが初代ヒガシヤマダさんがダンジョンを壊した約100年前以来段々と冒険者が離れていった。今は窓際、左遷先と化しているらしい。今では北部メイキュウマエ支部が大抵のことを仕切ってしまうためやることもほとんどなく、たまにやってくる冒険者に事情を説明するとすぐメイキュウマエに行ってしまう為ますます仕事がなくなる悪循環。過去の書類を整理したり入り込んでくる悪ガキを追い返す日々を送っていたところ俺が来た、と言うことだ。
「古代語で書いておけば子供に破られないと思ったにゃー、出来心にゃー」
あげくには幼児退行するあるさま、これはこれで可愛いので許される。こっちも出来心でネコミミに触ってみるとふにゃっとしてて素晴らしいです。ぐりぐりしているとにゃふんにゃふん言い出してこれはたまりませんな。ひとしきり愛でたあと改めて用件を済まそう。
「ところで今日は冒険者登録に来たのですがやってもらえますか?」
「にゃー?」
だめだこいつ……可愛いが早く何とかしないと。
「できます! できますともやらせてください!」
再起動したのかやる気満々だ。ネコミミがピンとたってる、尻尾もたってるんだろうな。
「実習の時以来ですがやって見せます!」
おい、ちょっと、おい。全体的な不安感がすごいがこのネコミミ娘は大丈夫なんだろうか……まだ若いのに窓際族とか考えたらやばいんじゃね? 逆に考えるんだ実習のことをまだ覚えているから大丈夫だと考えるんだ。そういえば子供のころ入院して延々と採血されたことがあったな、血がにごっているからもう一度とか子供の血管は細いから難しいとかなんとかで何度も何度も。あれはどう見ても新米の看護婦だった。
マジ震えてきやがった……怖いです
そんなことを考えていると準備ができたのかネコミミ娘が戻ってきた。紙が何枚かと水晶玉がお盆に乗っているがこれが魔法的なアイテムで登録ができるんだろうか?
「まずこちらにお名前から出生地までをお願いします。古代語での記入となりますのでよろしければこちらで代筆いたしますが」
「平仮名でいいんですか?」
「カタカナもお使いいただけます」
古代語()だが平仮名とカタカナだけなんだな。漢字を書くとどうなるんだろ。とりあえず平仮名で書いておこう。
なまえ じとうつるお
ねんれい 30
とくぎ しりょうせいり
しゅっしん
レトロゲーのキャラシートかよ。すぐ終わるかと思ったら出身地はどこになるんだろう。前世のを書くのか昨日再構成された場所を書くのか。
「すいません出身地がわかんないんですけど」
「そういう方もいらっしゃいますから空欄でも構いませんよ」
そういうことになった。
「お間違いなければこのまま登録いたしますがよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「ではこちらに手を置いてください」
書いた紙を水晶玉の上に乗せてその上に手を置くらしい、魔法チックに見えなくもないがはたから見たら間抜けかもしらん。手を乗せると紙が燃えたかと思うと無くなった。灰が残っていないが燃えたんじゃないのか?
「ただいま確認しておりますので少々お待ちください」
紙と手ばかり見ていたが水晶玉の中で何かが光っている、電気信号のように着いたり消えたりしているが何かに似ているな。しばし待っていると光が消えて薄いカードが2枚出てきた。どんなしくみなんだろう。
「まず2枚とも確認されてください、上段に先ほど記入された内容が入っているのは間違いありませんか?」
どれどれ
-----------------------------
なまえ じとう つるお
ねんれい 30
とくぎ しりょうせいり
しゅっしん
-----------------------------
職業 司書
筋力 ----------
敏腕 ----------
知性 ---------------
神性 ---------------
器用 ----------
技能
司書
機械言語Ⅱ
事務検定Ⅱ
マジックユーザー
経験点 0
-----------------------------
「その下に古代語でご自身の職業とステータスが記載されているかと思います。こちらが見本と解説になります」
そういうとネコミミ娘は残っていたお盆の紙を渡してくれた。読み仮名と解説が載っているが大体わかるから無くてもよかったな、この横棒が長いと優れています、年齢や経験で上下することがありますだと。
見た事ある……けどまた微妙に変わってる、数字と英語だったのが横棒と漢字になってた。増えてるのもあるな『マジックユーザー』?
「魔法使いかよっ!」
ネコミミ娘がびくっとするがこっちが悪いな、謝っておこう。
「すいませんちょっと意外なのがありまして」
「よくあることですからだいじょうぶですよ」
マニュアルを棒読みしてるような返答が帰ってきたがまあいいか。ともあれこれで魔法使いを名乗ってもいいのか? スキル的には問題なさそうだがジョブは司書だし。2枚目も同じだったがドッグタグみたいに死んだ時用じゃないよな……
「間違いないようですが何で2枚あるんですか?」
「はい、1枚はご自身でお持ちになるようでもう1枚は水晶玉に差し込んでいただくとギルド総本部に転送され管理されます。」
「転送?」
「古代魔法の1種で遠いところへ一瞬で移動できる魔法です。世界中の各ギルドからギルドカードを保管しています」
「なるほど、その管理と言うのは人力でやっているんですか?」
「私もこの国で研修を受けたもので総本部には行った事がないんですがなんでも古代のゴーレムが自動で管理しているそうです。総本部で登録が完了すれば各支部の水晶で確認できるようになります」
自動でデータベース化されるのか。マジック☆データベースSUGEE
「それはすごいですね。ところでいくつか質問があるんですが職業は自分では選べないんでしょうか?」
「皆さんよくおっしゃられますが創生神様が能力に応じてお定めになるということでこればかりは変更できません、変化しやすい職業もありますがそれ以外では特に優れた功績を得た方が創生神様のお導きで変化することはありますが稀ですね……ただ隠すことはできます」
創生神様は何億年信仰されてるんですかすごいですね。
「隠す、と言うと?」
「代々戦士の家系ですと子供は戦士になりやすいというのはご存知でしょうか?」
「親に似ると言うやつですか?」
「そうですね、ですが代々魔法使いの家系の方が登録した際に僧侶や司祭と定められることがあります。ギルドでの研究では知性と神性に優れた方は司祭となりやすい、となってはいるのですが名家の方ですと血筋の問題があるのか何度も確認にいらしたという記録があります。」
「なんとまあ無駄なことを」
「他にも僧侶や魔法使いが取り合いになったりすることがありまして現在では職業と技能に関しましては本人様の設定で隠すことができるようになったそうです」
「技能も隠せると言うのはやはり何か問題があったんですか?」
「技能ですか……それはその、人それぞれといいますかこれも創生神様のお定めになられたところなので」
「また高貴なご身分の方ですか……」
「それもあるのですが冒険者全般からの苦情でもあります。得意とするところが全て見えてしまうので手の内が読まれて困ると。あとはあまりよくない技能だった場合敬遠されることもあったとか。ただし犯罪にかかわる技能に関しましてはギルドでの手続きの上で隠すことができます。なので本人様だけで隠すことができるのは酒乱や鼾など軽微なものだけですね。逆に言えば本人様だけで隠すことができるのは有用であったり問題のない技能と言えます。」
「隠す、隠すと」
スマホみたいにつつけば変わるのかな? つついてみると薄くなって見えづらくなった
「完全には消えないんでしょうか?」
「いえ本人様にはうっすらと見えるのですがそれ以外の方には見えなくなっています」
そういうとネコミミ娘は胸のポケットからカードを取り出して見せてくれた
-----------------------------
なまえ ミーコ モリヤマ
ねんれい 16
とくぎ サイホウ
しゅっしん モリヤマ ムラ
-----------------------------
職業 村人
筋力 -------
敏腕 -----------
知性 -------
神性 ------
器用 ------------
技能
事務
-----------------------------
村……人? そんなジョブもあるのか。
「隠してみますね」
ネコミミ娘改めミーコさんがつつくと消えた。確かに見えなくなっている。
「戻す時は同じ操作をすれば戻るようになっています」
再びつつくと表示が戻った。しかし村人なのにギルドに勤めてるのはなんでだろう。村に住んでるから村人なんじゃないの?
「この国では5歳になった子供は簡易的にですが冒険者ギルドに登録することが義務付けられています。優れた能力や技能がある子供は王都の学園に通うことができます。学費もかかりませんし卒業後なりたい職業に就きやすくなるので人気なんですよ。私はモリヤマ村で生まれて5歳の登録の時、”事務”技能があったので王都の学園に通いました」
皆保険制じゃなくて皆冒険者制なんだな
「職業が村人となっていますがギルドの方ではないんでしょうか?」
「私は勤め始めて1年目ですから村人のままなんです。経験を積んでステータスが高くなるととギルド職員に変化するんですよ」
「そうなるとどうなるんです?」
「お給料が上がります」
いい笑顔だ、感動的だな。金のことじゃなければ。
「ああ、いえ他にも色々できることが増えるんですよ、ほんとですよ。」
「わかります、わかっていますとも。最初から村人じゃない職業の人はどれくらいいるんですか?」
「ええ、先ほどの家系の話に戻りますが私の村の場合。大半が村人と農家で、村長と戦士が1人だけいました。5歳の子供は30人程でしたが2人だけ戦士の職業の子供がいたので私と一緒に学園に通って今は冒険者をしています」
「ひとつの村で毎年数人は冒険者向けの職業の子供がいると言うことですね。」
「規模にもよりますが大体合ってます。魔族の侵攻があった時代はどんな職業でも戦っていたそうですが最近ですと稀ですね。村に住んでいれば村人で街に住んでいると市民となります。あとは沿岸部や森の中の村だと漁師や猟師が多いです」
農家の人が散弾銃で戦おうとすると死ぬあれですねわかります。
「つまりこの国の人は全員が冒険者だけど実際に冒険者として活動しているのは一部ということですか?」
「そのとおりです。冒険者ギルドに登録している村人や市民がたくさんいるとお考えください」
「冒険者であっても実際は村人なわけか……その村人や市民の人は普段なにをしているんです?」
「村や街でできる仕事ですね。村人であっても農作業や樵など問題なくできますし行商をする人もいれば魔物を倒している人もいます。私の家は糸や布を作って生計を立ててました」
特技が裁縫なのはそのせいか。
「もちろん技能を持ってないとできないことがあったりうまくいかなかったりすることもあります。農作業や伐採の技能があればよい作物が取れたり木を切るのが楽だったりしますから。ですので5歳の時確認して置くべきだと初代ヒガシヤマダ様がお定めになりました」
「なるほど……では俺も登録できたので冒険者を名乗って問題ないわけですね」
「そうですね。問題ないようでしたら確認させていただくことになっていますがよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」
「では失礼します」
1枚手渡した。片方の項目を隠すともう片方も同じところが隠れるようだ
-----------------------------
なまえ じとう つるお
ねんれい 30
とくぎ しりょうせいり
しゅっしん
-----------------------------
職業
筋力 ----------
敏腕 ----------
知性 ---------------
神性 ---------------
器用 ----------
技能
マジックユーザー
-----------------------------
「30歳です……か?」
「ええ昨日で30になりました」
「貴族のお方とは露知らずご無礼をいたしました。ただいま責任者が外出しておりますので少々お待ちいただけますか。奥に客室がございますのでこちらにどうぞ」
「いえ貴族ではないです」
「えっ」
「貴族じゃないです」
急に馬鹿丁寧になった。そりゃミーコさんに比べれば高いと言えるけどそんなにぶっ飛んでるわけでもないのになぜだ。
「再登録? でも再登録の時は確認表示が出るはずだしカードも1枚だけ出てくるはず。でも……」
尻尾がふらふらしてる時は喜んでいるんだったか? それは犬か。猫だとたしか落ち着かないとかそんな感じだったような。
「もしもーし」
「失礼しました。人間族の方でお間違いありませんか?」
「はいそうです」
急にキリっとした顔になって戻ってくる。
「すばらしいステータスです、よほど厳しい経験を積まれたのですね」
よくわからないが納得してくれたらしいので話を進めよう。
「ご事情があるようですがこのステータスなら引く手あまたです。魔法は使って見せれば職業を隠していても問題ありませんしすぐにでも迷宮に入れますよ」
「いえ、できれば安全な仕事を探しているのですが街中でできる仕事はありませんか?」
「えっ?」
何それ怖いとは言われなかったが何言ってんのこいつみたいなニュアンスは伝わってきた。
「その、失礼ですが今までどのようなお仕事をされてきたのですか?」
「主に図書館で事務作業をしていました。カウンター業務も担当できます」
キリッと言い返すと
「図書館……ですか? なるほど、古代語に堪能なのはそういうことでしたか。でもこの国では王立図書館しかありませんし管理は国が直接行っています。利用しているのも貴族の方や魔法が使える方ぐらいですし入館料も高いですよ」
図書館は上流階級の施設なのか? 紙はあるみたいだけど製本技術が低いんだろうか。
「魔道書の管理は危険もありますからね。閲覧するのも身元保証が必要ですしお勤めになるとするなら貴族位が必要になるでしょう」
「えっ?」
話が大げさになってきてないですかねぇ。魔道書とか俺の魔本が進化する予定だったのにもう存在しているんですかやだー。