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初戦闘はウサギ狩り

 眩しさに目を開けると窓から朝日が入っている。半端に寝たせいでだるさがあるが起きるか。チェックアウトは何時なのか聞いてなかったが別料金を取られたらいやなので早めに行かないと。

 トイレと井戸によってさっぱりしようと部屋から出ると階段をネコミミさんが上がってきた。


「おはようにゃー」

「おはようございます」


 モーニングネコミミは癒される、月曜日でもこれがあればさわやかな一日が約束されるな。


「もうすぐ掃除するのでお急ぎくださいにゃ」

「わかりました。あっ、この村に雑貨屋さんはあります?」

「斜向かいがそうにゃ。そろそろ開いてるころですにゃ」


 お礼を言って井戸へ向かう。タオルがなかったが服でぬぐってごまかした。

 部屋に戻ってたびびとのふくとマント、帽子に着替え荷物をリュックにまとめて受付へ。年かさのネコミミさんがいるので挨拶してみる。


「おはようございます」

「あら旅人さん、よく眠れたかしら?」

「ベットのありがたさが身にしみましたよ。朝食は酒場に行けばいいんでしょうか?」

「ええそうね。人が来ない時期はまとめて酒場で取ってもらっているわ。刈り入れが終わると商人が来るからうちでも出しているんだけどね」

「なるほど、皆王都の人ですか?」

「大体はね。魔物は少ないしこのあたりは騎士団の巡回路だから商人さんも安心してやってくるみたい。」


 当たり障りのない会話をしながらチェックアウトする。酒場に行ってみたが他の旅人はもう出発してしまったのか誰もいない。昨日のおばさんがいたので注文してみると野菜スープとパンの朝食が銅貨1枚だったので食べてみる。薄味だがこんなものだろう。おばさんもネコミミが付いていているがにゃーとは言ってくれなかったな。子供だけなのかもしれない。


 続いて雑貨屋へ向かう。歯ブラシなんかがあるといいがタオルや火打ち石なんかも必要かな。あまり荷物は持ちたくないがないと不便だし。


「こんにち……わ」

「……らっしゃい」


 ドアを開けるとそこには筋骨隆々としたネコミミ男が算盤を弾いていた。愛想の欠片もないが商売をする気はあるのか? 人間と猫の比率が3:7ぐらいでケモナーレベルが高くないときついものがある、というか雑貨屋じゃなくて武器屋の親父にしか見えない。

 商品を見ていくと雑貨のほかに武器や防具も置いてある。何でも屋だなと思いながら生活に必要そうなものと棍棒を購入、銅貨80枚なり。


 いまだに3人しか遭っていないがネコミミ族は女が可愛くて男は猫っぽいと言うことでいいのかな? 美的感覚の違いはあるかもしれないが男は人気がなさそうな気がする。と思いながら歩いているとすれ違う人が増えてきた。猫っぽい女の人もいればネコミミ付き男もいるからそのあたりは気にしなくてもよさそうだ。普通の猫も発見したのでビスケットのようなものを割って手のひらに乗せて近づけてみる、匂いをかいだあと舐め取って食べた。実に普通の猫だ。


 町の中心から離れると畑が広がっている。地図によれば北が王都だからこっちであってるはず……なんだが聞いてくればよかったな。農作業中の人に尋ねてみるとこっちであっていると教えてくれたので助かった。この人は人間らしく普通の耳でなんとなく安心。考えてみると人間に遭うのは初めてだったが人恋しさはネコミミにかき消されていたのであまり意味はなかった。


 周りは森ばかりだが街道をしばらく進んでいると前方でなにやら鳴き声が聞こえてきた、目を凝らしてみると小さなものが動き回っているのが見える。このまま進んでいいものか考えたが商人が移動してくるぐらい安全なら大丈夫に違いないと警戒しながら進む。砂を撒き散らしながら争っているのはウサギ? のような生き物で大きさは70センチぐらいだろうか、角と牙が付いていてこれが魔物なのかもしれない。

 ウサギと言う生き物を間近で見たのは小学校の飼育委員の時以来だったが大きさは30センチぐらいで角がなかったのは間違いない。体色も白や黒でペットらしかったがこのウサギはまだらな茶色で実に野生の生き物らしい保護色だ。しかしなんで共食いしてるんだろう。


 ともあれ魔物だとすれば物理で殴って経験値になってもらおう。棍棒を構えて近寄っていくと手前の一匹がこちらに振り返って威嚇してきた。と思ったらもう一匹に後ろから突かれて動かなくなった。漁夫の利を取るべくそいつに向かって走り棍棒を振り下ろすと鈍い音と共に倒れた。一撃とか雑魚って言われるのがよくわかったよ。さてこれは剥ぎ取りとかしないといけないのか? 血とか内臓とか怖いです。と戸惑っていると死体が消えた……だと? 替わりに銅貨が落ちているがなるほど、経験値とお金を落とす仕様ですねわかります。そういえば狩場ガイドにドロップアイテムも書いてあったっけ、アイテムを落とさないのは運が悪かったのか元からないのかわからないが雑魚だからこんなものだろう。ウサギ1羽で朝食が取れるぐらいの稼ぎになるとは現実のバイトにくらべたらすごい楽だな。同じペースで出てくるなら時給銅貨5枚ぐらいになりそうだし2時間狩れば1泊と夕食分ぐらいにはなるだろ。まあうまくいけばの話だが。

 動かなくなっていた最初のウサギにとどめを刺すと銅貨が出てきたので回収。あわせて銅貨2枚をてにいれたぞ!


 次は傷を負ってないウサギが出てくると強さがわかりやすくなるなと街道を進みながら考える。『街道で出てくる雑魚』がこのレベルだとすると当分命の危険はなさそうだ。というか冒険じゃなくて街中で安全に暮らしたいと言う目標を忘れそうになってた。早く街に行こう、今度こそ手に職を就けて生活の安定を手に入れないとな。


 時々出てくるウサギを倒しながら進むと遠くに見えるのは防壁と塔だろうか、王都というぐらいだから堀やら壁やらで囲まれてるんだろうなファンタジー的に考えて。ここまでくるのに体感で2時間ぐらいたっているはずだから残りは大体1時間ぐらいか……昼前には着けそうだ。昼食分ぐらいは稼いだはずだし昼は肉肉しい物でも食べよう。

 それからしばらく歩いているとまた鳴き声が聞こえてきた。街道上ではなく少し森に入り込んだあたりか? すわウサギかと身構えながら進むと子供がウサギと戦っている、むしろ子供数人がウサギをたこ殴りにしている。子供の筋力は標準の俺と比べたら低いのはわかるがえらい一生懸命にやってるな……あ、細い棒で動きを止めている子供が一人突き倒された。


「ロー! くそ、ウサギがっ! 死ねえ」


 ファンタジーのサツバツさが伝わってくる前にどこか微笑ましいが当人にとってはマジなんだろうな。口の悪さもファンタジーと思えば標準なのかもしれない。ほうって置くのも後味が悪いので手伝ってみる。


 興奮しているウサギに忍び寄って棍棒を振り下ろす、ウサギは死ぬ。物理で殴っているだけなので少しもかっこよくないな、本当に野生なのか疑いたくなる弱さのウサギも大概だが。さてさっきの子供は大丈夫なのか。


「大丈夫か? 怪我をしている子はどうなった?」

「血が止まらないよう、おじさん魔法は使えないの? ポーションもってない?」

「残念だが両方駄目だ、街まで走るとどれくらいだ?」

「15分ぐらいだけど……」

「他に怪我をしている子はいないな? 俺が抱えて走るから他の子はゆっくりでいいから着いてきてくれ。魔物が出たらその棒で近づかれないようにして逃げるんだ」


 怪我をしている子は腹から血を流している。ぐったりとしているが意識はあるようでうめき声を上げた。タオルを巻きつけてマントで包んで持ち上げ走り出す。子供で15分なら今の俺だと5分とかからないはずだ。

 こんなことなら僧侶や司祭になってればよかった、いまさら言っても遅いがクソっ! 中二チートイベントなら軽々と済みそうだがこっちは必死にならないとヤバイ。理不尽だな。


 走り続けていると堀と橋、防壁が近づいてきた。行列になっているが叫びながら飛び込む。


「怪我人だどいてくれ! 医者か魔法使いはいないか!?」


 先頭にたどり着くと関所のようになっていて全身鎧で固めた姿の兵士が数人いた。どう見ても戦士で魔法が使えそうな奴は見えない。鎧が一人近づいてきた。


「ポーションをぶっかけろ! 誰か内壁の詰め所に連絡して魔法を使えるやつを呼び出せ!」

「大丈夫そうか?」

「このくらいなら大丈夫だ。あんたの子……じゃなさそうだな」


 よくみるとこの子も大きな耳がついている。ネコミミじゃなくて犬? いや狐耳だな


「森の中でウサギと戦ってたんだ、まだ何人か残っている」

「こいつはマルタスん所のガキじゃねえか、おい噴水前の雑貨屋にも連絡だ。だが何で子供が外に……」


 あわただしくなってきたが残りの子供たちも心配だ。


「残りの子供たちも怪我はしていなかったがすぐに迎えに行かないと」

「俺が行こう、すまんがあんたも頼めるか? どのあたりなんだ?」

「すぐそこまでは着ているはずだ、とにかく走ろう」


 奥から駆けつけた兵士と僧侶らしき人に子供を預け俺と兵士のおっさんは走り出した。

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