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意外と近代的なファンタジー世界

 腹が痛くて目が覚めた。いや大丈夫まだ寝ていられるやっぱり痛いトイレ! トイレはどこだ! 真っ暗な室内を恐る恐る進んでいくと机にぶつかってしまったようで、ガタンと音がして何かが落ちた。明るくなったので何かと思ったらNDCもどきだ。今はありがたいが開くと明るくなるとかますます本じゃねーな、持ち上げて懐中電灯代わりにしてみる。


 隅々まで照らすほどの明かりではないが前は見えるようになった。部屋を出て周りを見渡してみるがこの並びは客室のはずだ。階段のそばにそれらしいものがあったような気がしたので行ってみると扉に丸と三角がついている部屋があった。色目がはっきりしないが紳士用マークっぽいのでここに違いない、鍵はかかっていないようで開くと同時に飛び込んで便器を確認するとズボンを下ろしまたがる。


「セーフ……セーフだ」


 危なかった……旅行先で急に催すと大変なことになると聞いたことがあるがわが身に降りかかろうとは、これからは寝る前に確認する習慣が必要だな。などと思いながら部屋を照らして見回すとどう見てもトイレで間違いないんだがファンタジー世界のトイレってもっと前時代的というか穴掘って溜めるぐらいの環境じゃなかったの? 現代人としては助かったが見たところ便座の後ろにタンクがあって水道管のようなものがついている所をみると水洗のようだし未来過ぎる。さすがにトイレットペーパーはないのか横の台にごわごわした紙の束が置いてあるがこれを使うのかな。なんにせよ助かったが”時代は中世レベルだが部分的に前後する”の片鱗を味わったぜ。


 紙が多少硬かったが何とかなってよかった、水もレバーを倒すと普通に流れていって完全に水洗トイレであることが判明。新たな気分で部屋に戻ると眠気が完全に消えた。外に出ようにも何時なのかはわからないが日が昇ってないから無理そうだし何か暇つぶしできるものは……あったな。懐中電灯改めNDCもどきの中にある本を読んでれば朝が来るだろ。しかしNDCもどきと連呼するのも今いち呼びにくいッ! このジトウが名付け親になってやるッ!そうだな……『スマホのような本』という意味の「スマ本」というのはどうかな!


 いまいち呼びにくかった、むしろどこかのアイドルが出してそうな名前でヤバイ。目録・翻訳機能付き本棚持ち歩き用スマホ風じゃ長すぎるし……一文字削ってスマ、ス本、マ本、魔本か。魔法的な本の略でこれがよさそうだ。これからお前は魔本だぞ、進化したら魔道書とか中二チックになって強くなりそうだな。


「さて読む前に他の作業はおわっているのかなっと」


 事典が80%、ステータス? が31%となっていた。今読めるのは変わらず『今代の冒険者たち』だけか。ざっと見た感じ愚痴を除けば育成法がメインになってるのはわかったが肝心の俺の職業、司書が載ってないんだよな……魔法使いだの学者だののページを真似すればいけるかな? 学者のほうは割りと似てなくもないような気もするし。しかしそれで地雷になったら目も当てられないのでとりあえず最後の年表と地図でもみるか。


 なになに『創生神世界を創造する』


 創生神()、いきなり中二ワード全開で来たな。これは例の転生部屋担当の神(的な存在)のことか? セルフ転生とはいえこの神(的な存在)のおかげでここにいることを考えたら一応信仰しておいたほうがいいか。ネコミミ最高です神様。ただしその他がざっくりしすぎなのをどうにかしてくださるととても助かります。

 大分時代が進んだらしく波線で省略されてる、次は


『種族繁栄の時代 種族ごとに国が興り文明が形成される』


 原始時代すっ飛ばして国が興ってるとか人類史なめてんのかと、省略されてる時何が起こったんだよ。次


『種族戦争の時代 種族・領土を巡り戦争時代に突入する』


 このあたりはどの世界も同じなんだな、人種じゃなくて種族だけど。ネコミミがイヌミミが争っている様を想像すると胸が痛む。


『創生神 新種族として魔族を創造、戦争状態を緩和させるため各国へ派遣』


 ちょっと何言ってるかわかんないですねぇ。平和維持活動する魔族()ってなんだよ。火種増やしてるだけじゃねーの? 


『種族同盟締結 戦争は種族同盟対魔族の形態に変化』


 宇宙人が来たから人類団結しますね理論ですねわかります。これでよくあるファンタジー世界になったのか。ベタだけど実際はこんなもんなんだろうな。


『転生者誕生 最初の転生者が現れ各種影響を及ぼした』


 いまここ、だな。何代前の人なのかはわからんが世界の歴史の中では端っこの数ミリ程度の時間だろ、で最新が俺ですよと。異世界転生ものをするためにわざわざ世界作って管理するのが面倒そうってことはよくわかった。これは愚痴りたくもなるな、街づくりシミュで一所懸命作ったら隕石転生者が来て街が吹き飛びましたってことなんだろう。何回も繰り返されたらもうええわになるのは明らか。削除されてないのはまだ飽きてないのか惰性でやってるのかどっちなんだろうな。

 年表の中の数ミリでどれくらい世界が崩壊したのか考えたくはないが中二チート無し世代としてはつつしまやかにやっていこう。概略年表なのでざっくりしてるが大体わかったので次は地図だ、折りたたまれているのを摘むと広がっていく。


 ところどころぎざぎざになっているがおおむね丸い陸地を中心に切り取られるように周辺が広がっていく地図だ、分離中のパンゲアってこんなんだったかなと思いながら眺めていたが今いるのはどこなんだろうか? 魔本機能でGPSでもないものか。

 あった。また下側にアイコンが出てきて押してみると右端の半島に光るピンがついている。つつくと拡大されて詳細な地図になった。目録では折りたたみ式地図だったがカーナビに進化したのか便利になっている。


「元々が魔法の地図だったのか? 人工衛星さんとはいったいなんだったのか……現在位置はこの光ってるところか」


『聖ヒガシヤマダ王国聖領モリヤマ村』


 うわぁ……聖☆ヒガシヤマダさん降臨しちゃってるナリぃ。確かにこれは黒歴史扱いになってて当然だわ。転生者にとっては文字通り黒歴史だな。神(的な存在)にとっては履歴書の職歴欄の黒歴史かも知らんが。山田東さんなのか東山田○○さんなのかはっきりしないが国名になるぐらい活躍したんだろうな、良くも悪くも歴史に名を残してるあたりこの人は中二チート時代の人なんだろう。


 周辺を調べていくとこの国は縦長の長方形をした半島で地球でいうところのイタリアに似ていた。真ん中右側の海に面したあたりに王都ヒガシヤマダがありあちこちに街や村が点在しているのが見える。半島の付け根は山になっていてこれが国境になっているのか太い線で区切られていた。モリヤマ村は王都のすぐ南側にあるので早速王都に行ってみるのもいいな。縮尺を見るとkm表示で単位系は変わっていないようで、10kmぐらいだから3時間も歩けば着きそうだ。


「いや、街に入る時や検問とかあったら身分証がないから無理か……田舎から出てきました設定で通れるかな?」


 異世界転生での身分証と言えばギルドカードやステータス欄なんかだがステータスは今のところ見れないし他人に見せたくはない。ギルドカードを作るために街に入りたいんですってのはよくあるからそっちでやってみるか。

 とりあえずの方針は決まったのでほかに便利な情報がないか見ておこう。


 まずお得狩場のページを確認するとこの国にあったのは魔法使いと狩人用オススメ狩場だった。ほとんど動かない亀系とまったく動かない植物系が分布している地域で遠距離攻撃をするとノーリスクで狩れるらしい。残念なことに遠距離攻撃なんてできそうもないからここは駄目だな、国境の山地にもあるようだがこちらは高レベル用と書いてある。ドラゴンが出ますって危なすぎる……一度はみてみたいなドラゴン。

 低レベル用狩場は……最初に載っているこれか、『街周辺や街道で出てくる雑魚を物理で殴りましょう!』? どう見ても初期レベル上げです。今はレベル1なんだろうけど物理で殴れば倒せる敵しかでてこないのか? ジョブごとに分かれているわけでもないから最初はみんなこうなんだろうか。 魔法が使えるわけでもないからそうするしかないが……


「まずは武器を手に入れるとこから始めてみるか。刃物は怖いけど棍棒とかなら使えそうだし。あとは何でもいいから本を手に入れて収納と翻訳できるか試すのもしないとな」


 こう見えても俺キルレ2.0とか普通に出すし。

 近距離武器しか使えそうにないがナイフ一撃死仕様とかじゃないといいな、銃があれば無双できそうだがファンタジーだしな。

 大体のところは読んだし方針も決まったがいまだに暗いので寝ておこう。事典が読めればもう少し暇つぶしになったろうがしょうがない。

 地図だけでも普通に持っておけないかなとページを引っ張ってみるがやっぱり無理か。拡大縮小はできるけど分離はさすがに駄目だった。付録扱いならできそうな気もするが直にくっついているからちぎるわけにも行かない。

『今代の冒険者たち』の項を摘んで見るとやはりニュルっと出てきたが現物は謎言語で読めない、事典は作業中のせいか摘んでも取り出せなかった。

 おっ? 取り出したのにまだ『今代の冒険者たち』の表示が残ってるぞ。つつくと変わらず読めるしこれはひょっとして収納じゃなくて完全に複写してるのか。1枚10円でコピーとってた現代を完全に置き去りにした仕様だがこれはちょっとチートくさいな。図書館を見つけたら片っ端から収納して複製できそうだ……やったぜ。


 今のところ現物は読めないしかさばるのでまた収納しておく、ファンタジーの仕様も少しずつわかってきたし楽しくなってきたな。

 そう思いながら朝まで寝ることにした。


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