表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/44

Wショック

 100Nショック NEKOMIMI


 NRS(ネコミミリアリティショック)

 それは現実に存在しないネコミミに対してでも本当は存在するんじゃないか、と夢想するマニアが実際にネコミミに遭遇した場合に起こる心因性のショック症状である。良性の場合は全能感、多幸感に加え利他性の増大など社会生活に大きな利点をもたらすが悪性であった場合はハラキリやクビツリなど多数の自傷行動をとることが確認されている。同じネコミミに対して複数の観測者がいた場合、当人の思い描くネコミミに対して一定以上の乖離が見られると悪性の症状が発生し。逆の場合は良性の症状が発生しやすくなるという結果が報告もたらされた。

 同義語にIRS(イヌミミリアリティショック)、ERS(エルフリアリティショック)等複数あり


 ヤバイよヤバイよやばいって言うか神降臨キタネコミミが猫耳どーもねこみみじゃないですかリアルねこみみとかパナさパネェってマジSUGEE想像を絶する喜びがが俺を襲ったのは確定的に明らかこのままでは昇天する。ファンタジー世界はこういう方向性もあるんだよな! 神(的な存在)様本当にありがとう。いや最近読んだのが指輪を不法投棄に行く話だったんでエルフとかドワーフがでてくるヨーロッパ系のファンタジーを想像してましたよ。ライカンスロープさんもかっこいいとは思うけどもう少し人間の比率が高いほうが可愛いに違いない(確信)。


「おお……もう」

「お客さん? 大丈夫です?」

「今日の佳き日に乾杯」

「えっと……」


 信仰心メーターが振り切れてるんですが教会はどこだ? いかんちょっとハイになってた。受付のネコミミさんが怪しんでるじゃないか。ここは普通に、そう普通な会話で乗り切らなければ。


「いや、すいませんちょっと森で迷ってしまって。水を一杯いただけませんか」


 普通、普通だぞ。怪しまれないようにどこにでもありそうな話題で乗り切るんだ。


「ああ……それは大変でしたにゃ。ちょっとお待ちくださいにゃ」


 成功した! 奥に入っていくネコミミさん。その時俺は目撃しました。確かにあれは尻尾です、間違いないと確信できます。数時間後 そこには元気に走り回る俺の姿が。あの時は本当にだめかといやそうじゃなくてのりきった……のか? 不審者扱いされてたら俺の冒険がここで終わってしまった状態になるところだったがうまくいったようだ。これがコンビニだったら通報されていたかもしらん。

 戻ってきたネコミミさんから受け取ったコップを飲み干す。ぬるい。


「あー生き返りました。ありがとうお嬢さん」

「いえいえ、大丈夫ですかにゃ?」

「地図を落っことしましてね。半日位森の中をさまよってたんですよ。」

「街道を外れると外の人はすぐ迷っちゃうにゃ。気をつけないといけませんにゃ」

「いやまったく、もう道を外れたりしないようにしますよ。えーと銅貨5枚でしたっけ?」


 あまり話してるとぼろが出そうだ、早く部屋に入ろう。


「はいにゃ。素泊まり5枚になります。」

「細かいのがないのでこれでお願いできますか?」


 銀貨を取り出して見せる。使えなかったら野宿になるけど大丈夫だろうか。


「大丈夫ですにゃ、おつりで銅貨95枚です。2階の一番奥のお部屋にどうぞ、こちらが鍵になります。外出の際はこちらでお預かりしますのでお気をつけくださいにゃ」


 銅貨*100が銀貨になるのか。じゃあ銀貨*100で金貨かな? すごいジャラジャラしそうだ。


「ありがとう。疲れたんでしばらく寝かせてもらいますね」


 乗り切ったか、普通の旅人だと思ってくれたならありがたいがとりあえずこの地味に重い銅貨はどうしたものかな。荷物の整理をしようにもろくなものがなかったし……買いたくはないが冒険装備を整えないと駄目のなのか?


「お客さーん」

「はい?」


 やばいなんかミスったか?


「宿帳にお名前が必要なんですが……」

「ジトウです」

「ジトゥーさんと。ではごゆっくりどうぞにゃ」


 あぶねー。なんか変な発音になったけど通じてるし大丈夫か。階段を上り2階の奥へ進んでいく。奥といっても部屋数は4つしかないのですぐ着いた。鍵の番号は読めないけど同じ記号がついてるからこの部屋だな。入ってみると部屋の半分がベットであとは小机と椅子、壁にはフックが並んでいて反対側には窓がついている。

 マントと帽子を引っ掛けてリュックを置くとようやく一息つけそうだ。服が土っぽいのはどうしようもないがこのファンタジー世界の風呂文化はどうなってるんだ? サウナとかシャワーだけとかだとちょっとつらいものがある。


「ファンタジー最高? ネコミミについては間違いなく最高なんだが」


 電灯やクーラーがない部屋というのは辛そうだがネコミミで許されるか……ありだな。大抵のことは許された。ただしステ閲覧不可、テメーはダメだ。効果のわかりやすいスキルを持ってない俺が悪い気がしないでもないが何かしら使えないとほんとに持ってるのかすら怪しくなってくるな。まあ事務作業! と叫ぶと仕事が終わるとかだったらシュールすぎる気もするがファイヤーとかサンダーとか1番最初に使う時魔法使いはどうするんだよ。師匠とか学校で教えてくれるのか? 机の上に荷物を出しながら考えているとお約束というか仕様についてさっぱりわかってないのがこんなに恐ろしいことだとは思わなかった。ダンジョンで左右移動しながら物理で殴る作業をする簡単な仕事じゃなかったのかよ。

 と取り出しているとあれ? 本が1冊しかないぞ。


「森に置き忘れたか……? いやとにかく全部突っ込んだのは間違いないんだが」


 たたんだ毛布の隙間にもないしリュックに穴が開いているわけでもないのになんでないんだ。代わりに毛布に挟まってた7分丈のズボンとシャツを発見。


「しかも残ってるのはNDCもどきかよ……1番いらなさそうなやつじゃねーか」


 取り出してみるが相変わらず全体的に擦り切れてぼろっちい。まあ参考図書は使い込まれる宿命にあるのは仕方がない。が、書き込みどころか中身がまったくないのはどこに苦情を出せばいいんだ。


 図書館の本の背中には番号付きのシールが貼ってあるのはご存知だと思う。


 ---------

 |913.6|

 ---------

 |A71 |

 ---------

 | 2 |

 ---------


 こんなの。

 NDCという本はざっと説明するとジャンルと番号がずらっと載ってる辞書みたいなものだ。図書館に本を登録する際にどのジャンル、どの番号を付加するかを大きく10通りにわけて(000~900)さらに10通り(010~910)さらに10通り(011~911)とまあ000+999の1000通りの分類が可能になっている。実際には使われていない番号もあるがこれにそのジャンル内での区分や補助記号などが小数点以下で付加されていくらでも細かく分類することが可能だ。ただ細かすぎても不便だからある程度までがよいとされている。

 こんな感じで本に番号をつけて並べていくとどの棚にあるかわかりやすくなって管理する側・利用者ともに便利なんだと授業でやってた。

 ちなみに上の番号は9(文学)1(日本)3(小説).6(明治以降だったかな)、2段目3段目は著者名を数字に置き換えたものやシリーズ番号なんかが一般的に使われてるが田中だったらTAとか割と自由になってるところも多い。


 思えば俺が辞めるときあんまりぼろかったせいかNDCも買い替えになったんだよな……書き込みを統一させてくださいとかわけのわからん追加の仕事をやらされたのもいい思い出、なわけねーよ。

 お前らが決めたローカルルールをなんで外部の俺がまとめないといけないんだ。事務室にあった5セットを1ページずつ確認しながらまとめろとか嫌がらせかよ……挙句にこの記述は今使ってないので削除でって終わってからいうなマジで。

 1番書き込みが多かった俺の使ってたNDCは事務室の端っこに取り置かれたけど残りは廃棄されたんだよな。使い尽くされてポイとかわが身につまされるわ。


 パラパラとめくっているとうん? いまなんか書いてあったぞ。


「世界神制百科事典? ブリ○ニカとか○凡社じゃねーの? 宗教系の出版物なのか……?」


 ほかにもないかと探しているとまたあった。


「今代の冒険者たち? ファンタジー小説か探検家の伝記か?」


 白紙だったはずなのになんでこんなのが書いてあるんだ。まあ隅々まで見たわけじゃないし完全な不良品が大部分が不良品になった程度だしどうでもいいか。しかしNDCならジャンル名と番号が載ってるはずなのになんで書名なんだろうな。これだと目録みたいに見える。ほかのページを確認してみたが今度こそ空白でこの2行だけしか書かれていないようだ。


「暇つぶしになるかと思ったら2行読んでおしまいじゃ何の意味もないな。目録なら現物がどこにあるか書いて置けよとまったく……」


 リュックにしまっておこうとすると

 ニュルっと

 でてきた


「ええっ?」


 新手の収納術使いかッ! 大きな本が小さな本から出てきた、なにをいってるのかわからねーとは思うが俺にもなんだかわからなかった。ゴム製だとか蛇腹になってるとかそんなチャチなもんじゃ断じてない、もっと別の……物理法則の枠外を味わったぜ。冗談言ってる場合じゃない、これはあれだ……そう魔法的な何かだ。言い換えたところで状況がまったく変わってないが心構えはできた。出てきた本はやはり最初に持ってた2冊の謎本のようで相変わらず読めそうもない言語で書かれている。


「もう一度押し込んでみる、すると……」


 ズブズブと本の中に本が埋まっていく光景はホラーだった。指まで飲み込まれるかと思ったら入っていくのは本だけのようで普通に固い感触がある。


「そういえばメルヘンとかファンタジーだったな……これがインベントリ扱いになってるのか。本以外は自力で持ち歩きって厳しいだろ」 


 一冊分の重さで何冊でも持ち歩きできますということなんだろうがデータ化(物理)には驚きを隠せない。スキャナやカメラで取り込んでる現実にくらべたらえらく手軽になったものだ、マイクロフィルム化作業とかマジ涙目。じゃあ取り込んだのがさっきの事典と冒険者なんだろうなとページをめくっていく。容量とかどうなってるんだろうかわからないが出てきた冒険者たちの項目をつついてみる。

 タイトルが謎語から日本語に変換されているのはありがたい。中身も読めるようになっているのかな?


『optimizing 1% done』

 日本語でおk。デフラグのときこんなのが出てきたような気がするがどういう意味だったか、100%になったら完了なのは間違いなさそうだ。一昔前のパソコンみたいに英語交じりでタッチパネルというかスマホみたいな操作性を持ってるNDCもどき、結局これは一体なんなんだろう。今のとこ翻訳機能付き本棚持ち歩き用ということは判明したがチートアイテムかといえば微妙すぎる。

 というか忌まわしい”引継ぎマニュアル”そのものじゃねーか、大きさ以外の不親切さがまったく同じだわ。これもセルフ転生サービスの一端なのか……まてよ?


「ひょっとしてこの中にステ情報が載ってるんじゃないか? 手抜き具合が一緒なら最後のページがそうなってるはずだ」


 あわてて最後のページを開くとそこには

『optimizing 13% done』

 Oh……どう見ても作業中です本当にありがとうございました。幸い進みが速いので1時間とかからず終わりそうだが半端に時間が余ったな。


 水を一杯飲んだきりだが腹が減っているわけでもない、酒場は夜からだと言っていたが村人たちは昼飯をどうしているんだろう。1日2食か?

 面倒なのでベットにもぐりこもうとしたが土汚れが着きそうだ、洗濯機なんてないからどうしたものかな。とりあえず上着を脱いでパンツとシャツ姿になる。


「中年太りが消えている……だと、そういや眼鏡もなくなってるのによく見えてるな。再構成さまさまだ」


 窓から身を乗り出し上着とズボンを叩く、土や泥が舞ったがいくらかましな状態になった。宿屋の裏庭が見下ろせるが特に変わったところはないが小屋と井戸があるな、ちょっと借りて泥を何とかしよう。

 替えの服に着替えた俺は作業中の本を置いて裏庭に向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ