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怪談から憑き物になった

 思わず扉を閉めた。


 あ……ありのまま 今見た事を話すぜ!


「俺は詰め所の扉を開けたと思ったら館長が生首に跨っていた」


 何を言っているのかわからないと思うがおれも何を見たのかわからなかった、頭がどうにかなりそうだった。幻覚なのか?

 子供用椅子で上の空だった幼女が地べたの生首に跨ってるとかリアリッシュリアリティに欠けるから幻覚であってほしい系の不具合。ファンタジーにしてもぶっ飛びすぎじゃないですかねぇ。


「ジトウさん?」

「トム君ちょっと扉を開けて中を見てくれないかな、疲れのせいか幻覚が見えたんだ」


 場所を変わってトム君に見てもらおう、幻覚だといいんだが。


「ハッ、では失礼しまして」


 扉を開けるトム君、しばらく中の様子を窺っているようだが戻ってくると。


「異常有りません、なにかおかしな点があったのでしょうか?」


 やはり幻覚なのか、助かった。終わったかと思ったよ。


「疲れてるのかな、さっきの館長さんが生首に跨っているのが見えたんだ」

「はぁ……流石に城内で人死には起こらないかと思いますが」

「それもそうだね、いやあ今日は早めに寝ることにするよ」


 安心して扉を開けた。そこには生首を踏んでいる幼女の姿が、扉を閉めるだろう……常識的に考えて。


「トム君トム君、今度は生首を踏んづけている館長さんの幻覚が見えたんだけど気のせいかな」


 天丼すごいですね、何回までやるんでしょうか。


「失礼します」


 中に踏み込むトム君、そういえば詰め所には他に何人かいたはずなんだが誰もいなくなっているな。猟奇殺人的に考えると既に犠牲者になっている悪寒、コワイ。


「やはり何もありませんが。どの辺りでしたか?」

「どのって、真ん中辺りの床だけど」


 2りならできるもんの精神で踏み込んでみる。軽くホラーだが1りだったら死んでしまう場面でも2りなら生きのこれることもあるでしょう、希望的観測だが。3りいれば完璧だったが以下レス不必要です。

 ソロからペアになっただけでも超パワー、友達じゃなくて部下もどきだけどぼっちやないんや。ペア狩り大勝利まったなし。


 そんなわけで中に踏み込んでみる、俺が見たのはこの辺りのはずなんだがやはり何もない。土が少しあるが他の場所に比べて特別多いってわけでもないな、若干砂っぽさが多いように見えるが誤差だろうか。

 部屋の中には誰もおらず長机と椅子がいくつか、奥の暖炉には薬缶がかけっぱなしになっている。まだ暖かい。


 変な空間になったが俺はミステリーを解決できなかった。多分警備界で伝説になるのは確定的に明らか、生首幼女の怪と名づけよう。

 門の外にいる隊長さんにも報告しておいたが微妙な顔をされた、誰もいなくなっているのは巡回の時間だからで問題ないそうな。


「おー……う。そういうこともあるかな、気にしなくてもいいぞ」


 妙に歯切れの悪い対応だが館長さんは妖怪属性まで備えているわけじゃないですよねぇ、結局なんだか分からなかったがもう帰ろう。

 門を後にして進んでいくと立ち飲みラリーが見えてきた、アイスになりそうな果物を買っていこう。


「こんちわー」

「いらっしゃい、今日はウリカが入ってるぜ」

「ウリですか? 何ウリでしょうか」

「ウリカはウリカだ。旨いぞ」


 指差されたのは薄緑の瓜だ、楕円形で丸くない。網も縞もないからメロンじゃなかった残念。

 ウリ科の何ウリじゃなくてウリカって果物なんですね分かります。


「メロンはありませんか」

「メラン? あんな高級品は扱えん」


 やはりメロンは格が違った、しかし瓜だとあんまり甘くないような気もするがどうなんだろう、煮込めば甘くなるかな。


「ひとつ切ろう、まずは食ってみてくれ」


 見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない、早く切るべきそうすべき。果汁が溢れて旨そうだ、一欠けら貰って食べてみるとかなり甘い。下手なメロンより旨いな。


「これも輸入品ですか?」

「いや地物だ、時期はずれにしてはいいものだったんでな。一袋仕入れてみたんだが当たりで良かったよ」


 ほう、経験が生きたな。ジュースを奢ってください。

 喉が渇いていたせいもあって氷のグラスを作って大盛りにしてもらった。脳に糖分がガツンと来る素晴らしい味わいだ、これは流行る。木製のストローにも違和感が無くなって来た、だいぶ順応できたな。

 トム君にも飲ませてみたが好評だ。ようやく餌付けできるようになったとも言う、これは労いであってホモとは無関係。どうせなら女の子って設定は無いんですかねぇ、ただ顔面がどう見ても猫だからそういう対象には見れそうにないが。

 首を掴まれて硬直するとかすごい設定もあったもんだが今度ミミーちゃんで試してみよう、猫騙し蘇生法も覚えなきゃな。


 かなり甘かったので10個ほど買っていこう。メロン風味アイスじゃなくて瓜アイスが完成するに違いない。ちょっとした贅沢だな。いつかはメロンアイスにも挑戦したい物だ。

 気の効くトム君が荷物持ちをしてくれて楽ちんだ。早速帰って試作といこう。


 部屋に戻って早速作る。アイス作りも手馴れた物でクリームもどきの配合やらが大分分かってきた、砂糖はなくても果物の甘さで何とかなることも多いしな。アイスにシャーベット、ついでに角切り瓜バーの完成だ。

 氷蔵庫に仕舞っておけば夜までは余裕で持つし大丈夫だろ。1本銜えて出かけよう、さて何を食べようかな。

 手にも一本携えて夕食に出かけることにする。トム君と道々乱れ食いの旅の始まりだ。部屋を出る。


「トム君飯食いに行こうよ、後これ食べて感想もお願い」


 長い一日だったがおおむね悪くなかったんじゃないかな。

 このときの俺は思いもしなかったのです、生首幼女の怪はまだ終わっていなかったことに……おいやめろ馬鹿。このスレは早くも終了してくらふぁい。

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