ねんがんの アイスクリームを(ry
あれから一週間経った。飯食って散歩して飯食ってたまに飲みに行ったり娼館に行ったり風呂入ってシャーベットを作って寝る生活だ。シャーベット以外は自由に溢れているのがすばらしい、いやほんと自分で作ってくれませんかねぇ……何度作り方を教えても氷漬けになっている不具合。修正されテッ。
今日こそ昼まで寝てた。いやあ目覚めがさわやかなのは睡眠時間が十分以上のせいだな、間違いない。
横を見るとそこには串刺しオレンジが変わらず机に突き刺さっている、これはどういうオブジェなんだか聞くべきなんだろうか? いや聞かない方がましなことってあるよな、腐る様子もなさそうなので放置しておこう。
そんな日々を続けているとマルタスさんとマロークさんが本を届けに来た。
「貿易に興味がおありでしたらぜひ読んでいただきたいのがこちらです、私が若い頃に購入した物でこの辺りの名産品が一目で分かるようになっています」
「わしは学園の教本を持ってきた。これを読んで少しは常識を身に着けて欲しいわい」
革張りで立派な本だがなんていうかくたびれているように見える、いや手書きの本ならこれが普通なんだろうな。確認してくださいと言われて中を見てみたが謎文字の比率が高すぎる件。日本語も混じってるけどたまに漢字が出てくるが大半が平仮名とカタカナだ、これは読みにくい。
正直に謎文字が読めませんと告白したところまた奥で話し合いを始めた、当人を放置して失礼じゃないんですかねぇ、このままでは俺の怒りが有頂天になるんだが?
読めるところだけ読んでいると貴族設定がまだ生きていたらしくよく分からないが納得された。部屋に戻れば魔本さんに読み込ませるんで不自由は無いのだが読める道具を持っていると一応告げておいた、すると古代道具すごいですねという流れになったが謙虚にそれほどでもないと言っておく。
古代語を通常語に訳せる道具だったら国宝級らしい、逆だと珍品扱いだそうだ。辞書を作るのに便利なんじゃないかと思ったがともに魔力の消費が激しく効率が悪い上に時間がすさまじくかかるというのも一因だとかなんとか。難しい単語程時間がかかるっていったいどういう仕様なんですかねえ、人力じゃないんだからどんな字でも一律で解析できそうな物だが。それでもあまり人に話すなとも言われたのでやっぱり黙ってればよかったな。魔本さんは自動で選別してくれて魔力なんて使ってる実感もないが本に関してだけはチートですね本当にありがとうございます。
部屋に戻って読み込ませる、メイキュウマエの時もそうだったがこの世界の本は取り込み時間がすごく短い、最初の時とはえらい違いだ。あれだけ特別だったのかはたまた初期化とプラグインの読み込みをしてたせいかも知らんがそれにしたって何秒もかからないとか早すぎるでしょう。
そして登録されたのはこの4冊だ。
貿易手記 / シャガッサ バミ著
ボウエキ シュキ
ヨーレアン : バミ商会 , ラジル朝814年
207p ; 29cm
表紙に世界名産要綱の記述あり
巻末に地図あり
バミ, シャガッサ <NSS45604672857>
魔法科教書 / エーリカ ヒガシツジ著
マホウ カ キョウショ
第11版
上
中
下
ヒガシヤマダ : 王立学園 , 聖ヒガシヤマダ王国暦86年
320p ; 25cm
マホウカ キョウショ
王立学園教科書||オウリツ ガクエン キョウカショ , 魔-1,2,3
エーリカ, ヒガシツジ <NSS45786124789>
とりあえずヨーレアン? どこそれ? 外国? 歌? ほらこんなもん、ついにサルト王国に次ぐ外国が現れた。いや出版情報だから都市名か、東山さんの地名センスではないから外国っぽくはあるんだがいったいどこなんだろうな。こんなときのための『今代の冒険者たち』、いわゆる攻略本の地図で調べよう。
このスマホ的操作にも大分慣れてきた、今ならパズルゲーで5連鎖ぐらい出来るんじゃね。そんなことを考えながら聖☆東山さん王国の周りから探していくと南の方にあった。位置関係で言うなら日本とベトナムぐらいか、縮尺によると3000キロほど離れているようで間には海が広がっている。
この辺りの名産って言う割には大分離れているが魔法の船なら案外近いのかもしれないな。魔法で風を起こせると帆船便利すぎるですね分かります。
旅行記風に書かれていて案外面白そうだ、しかし貿易を始めるわけでもないのになんでこの本なんだろうな? 婿取りは終わった物だと信じたい。
マロークさんのは3冊1組らしい教科書だ、シリーズ物らしく親書誌が付いている、戦士科とか僧侶科とかあるんだろうな。攻略本と違って訓練法だとかが延々と書いてある、魔法の種類も微妙に違っているがなんだかいやな予感がしてきたぞ。まさかあんなことになるだなんて、このときの私は想像もしていなかったのですってナレーションが流れてきそうだがまだ確信が持てる段階じゃないな。しばらくはこの本を読んで研究することにしよう。
そんなわけで散歩をやめて引き篭もることにしました。名目は魔法の研究な。現実でこんなこと言い出したら病院か絶縁の2択になりそうだが流石ファンタジーは格が違った、ミーコさんなんかは尊敬のまなざしで見てくる。ジュースを奢ってあげよう。一方シェリーさんはオレンジを毎日盛って来る様になった、誤字にあらず本当に籠に盛ってくるから困る。交代の時にシャーベットにしてもってこいということですね分かります。
あんまり毎日だとお腹を壊しそうな物だがエルフとはいったい……うごごご! 先に大量に作っておけば良いんじゃねと思った人がいるならそれは誤りだ、分けて食べてくださいと渡したら翌日にはなくなっているという事実を目にする破目になる。
一方でアイスクリーム製造は問題はあれどある程度完成を見た。生クリームまではもう完璧といっていい、何が問題かというと砂糖が超高級品だった。この国では生産していないらしく輸入品で七味の瓶ぐらいの大きさで銀貨50枚とかねーわ。マルタス商店でこの値段だから他のところだともっとするんだろうな、しょうがないから買ってみて全部ぶち込んで作ってみると実にそれっぽくなってきた。あとは卵の黄身を入れて激しく描き回し氷蔵庫に放置するとアイスクリームの完成だ。
一口食べてみる、すると……洋菓子は卵とバターと砂糖を混ぜれば出来ると思った、今は反省している。
なんていうか濃すぎる、油っぽいというか白身フライサンドだと思ったらマヨネーズフライサンドだったのかというか鬼なる。これは教育やろなあ……牛乳に溶いて飲んでみるとそれらしい味になったのでクリーム100%ですると濃すぎるということがよく分かったよ、>>生乳感謝。
バニラビーンズやらもないがこれは些細なことだ、果物味ならバリエーション豊富に作れるしな。オレンジ果汁を混ぜてから冷やすとねんがんの オレンジアイスクリームをてにいれたぞ! これでシェリーさん懐柔待ったなし!
夜もふけてそろそろ交代の時間かな、早速持っていってよいしょしよう。空になったオレンジの皮にアイスを詰め込んで見るとこんなアイスあったな、あれはメロン味だったが今度はメロンで試してみよう。
受付にたどり着くとちょうど交代の時間らしく引継ぎをしていた。
「お疲れ様です、つまらない物ですがどうぞ」
部屋に戻っていくミーコさんに渡してみる。そういえば毎日処理させられてたんだよな、つらいさんだったらどうしよう? 味が違うから大丈夫だろうか。
「新しく作りました。違った味ですのでお楽しみ下さい」
「ありがとうございます、でもごめんなさい。最近風邪気味なので冷たい物はちょっと……」
がーんだな、見事なカウンターで返された。しかしながらもっともな意見だ。
「それは残念です、今度は暖かい物にしますね」
「期待してます、おやすみなさい」
そう言って奥の部屋へと帰っていった。では本丸のシェリーさんに渡してみよう。受付の前に座る。
「今日は新しいのを作ってみました、あまり量は作れませんでしたがお味見をどうぞ」
「新しいの? いつものオレンジに見えるわ」
()確かになというか鬼なる。
「中身が少し変わっているんですよ、蓋を開けてどうぞ」
蓋を外して一口食べると動きが止まったな、リアクションが楽しみでもあり不安でもある。気に入ってくれると苦労が報われるんだが好き好きがあるからな、乳製品が嫌いな種族だったらダメそうだ。いつもと違って一瞬でお代わりしている様子もなくゆっくりと食べているシェリーさん、これが普通だよな。食べ終わったと思ったら底をこそげ取るようにして溶けた部分をすくっている。
気に入ってくれたのかなと見ていると
「それもちょうだいな」
いい笑顔で手を出してくる、やっぱり食いしんぼエルフだ間違いない。それにしても超スピードで奪い取るんじゃなくなったのは成長の証なのかもしれない、やっぱり人間段々丸くなるもんだよな。エルフでしたサーセン。
そんなことを考えながら見ているとまたもやゆっくりと味わっているようだ、好評待ったなし! アイス優勝や。
「もっと食べたいわ、作ってちょうだい」
「材料がなくて無理です、結構高いんですよ。あと太りやすい材料なのでたくさん食べると大変なことになります」
小学校の頃『おかしにふくまれるさとうのりょう』って授業があったけど自分で作ると本当に多いって事がよくわかるな、砂糖と乳脂肪分の塊でそりゃ太るわ。
逡巡しているシェリーさん、女の人に体形の事を話すとろくなことにならないから痩せてますから大丈夫ですよなんて言わないでおこう。よくよく考えるとシェリーさんは運動しているんだろうか? ここに座っている以外を見たことないが昼間は寝てるんだろうし……砂糖が危険で危ないですね分かります。
といわけで週に一度作ることになった、女心は本当に難しいなと思いました。材料費は持ってくれるって事だから一安心だ、色々混ぜて楽しめそうだな。
それから東山さんのことをいくつか尋ねる、もっと親密になって東山さんが持っていたはずの攻略本を見せてもらうのが目標だ。残っていれば良いんだが残っていたらいたでレベル上げインフレが起こりそうだな、兵士や冒険者の先輩を見ていたがそこまでぶっ飛んだ強さじゃないからどこかに封印されているんだろうか。
まずはこちらをご覧頂きたい
今代の冒険者たち / *著
コンダイ ノ ボウケンシャ タチ
第210版改訂
出版地不明 : 出版者不明 , 出版年不明
203p ; 29cm
キンダイ ノ ボウケンシャ タチ
表紙に 常識的な冒険者に送る の表示あり
巻末に折りたたみ式地図あり
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おわかりいただけただろうか? この目録情報は最初に持ってた攻略本のものだ。おかしな点として著者情報が読めない点があるが大体創生神さんのことなんだろうと思ってる。もうひとつ気になるのが版情報だ、初版から始まって210版まで改訂しているって事はそれだけ何か変更点があるってことなんだけど改定し過ぎィだろ常識……普通の本だと何版かでる程度だし法律書なんか解釈だか判例が変わって改訂20数版ぐらいになるのは珍しくないがそれにしたって百の位まで改版しているのは見たことねーぞ。
不明って出ているのは古い本だとよくあることだがこれも創生神さんの世界で作ってるからだと予想、困った時は創生神と古代文明のせいで乗り切ろう。
東山さんの時の本と比較できれば教科書の違和感がはっきりすると思う、いやな方向にかもしれないが。
ヨイショしながら全盛期の東山さん伝説を聞いていく、こうして夜は更けていくのだった。




