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王都への帰還

 王都よ、私は帰ってきた。

 いやぁ、山脈のドラゴンは強敵だった。あれだけ危険な目にあったんだからもう何年か引きこもっていても文句は言われ無いな、俺は部屋に篭らせてもらう。がんばってくれた戦車1号は時間で回復するらしく船に乗って3日目の朝になるとそこには元気に動き回る戦車の姿が、『あのときはもうダメかと思いました、二度とドラゴンと戦うなんて……しないよ』。小芝居はこのあたりにして港を後にする。

 船中では暇つぶしにラジコンで遊んだり取り込んだ本を読んでいたが後半になると飽きたのでドラゴンゲートボールを考案したりしてみた。が、いかんせん1人ではどうにも盛り上がりに欠ける、メジャー化するにはどうすればいいか考えておこう。


 なつかしのギルド王都支部に到着だ。ぜんぜん変わっていないな、一ヶ月で変わる物でもないか。早速中に入るとそこにはカウンターでうつぶせに倒れたミーコさんの姿が。


「私はまず彼女を落ち着かせることが第一だと考えました……とにかく声をかけ続けたのです。もしもーし」


 まさかこのネタが引っ張られる事態に遭遇するとは、ただ落ち着かせるというよりこれは寝てるんじゃなかろうか? 脳卒中とかだったら手に負えないが。こういうときはゆすらずに声をかけるであってたかな、少し経つと耳がピクピクしだした。これはやばいかも分からんね。この中にお医者様はいらっしゃいませんか。シェリーさんを呼ぶべきかな。

 そうこうしていたら急に立ち上がったミーコさん、こちらには目もくれず階段横の部屋に飛び込んで行く。あそこは……トイレだな、女の人風に言うと化粧室。


 具合が悪くても窓口勤務をし続ける姿勢に感動した、交代要員がいないことの裏返しかもしれないが勤務に対する熱意のような物は十分に感じ取れた。実はすごく有能な人なのかもしれないなとすら思うようになったな。しかし手続きしてもらわないと部屋に入れない、少し待っていようと荷物を横の窓口に置かせてもらおうとしたがそこにいたのは猫だった。

 白くてふさふさな毛並みの上品なお猫様だ、マフィアのボスが飼っているようなイメージだがなんで受付の中にいるんだろう? 荷物を床に置いて椅子に座ってみる、逃げる様子は無いから飼い猫なんだろうな、しばらく見ていると近づいてきた。これは癒されるわ、早速撫で回しているとぜんぜん抵抗しない上にゴロゴロと鳴き始めたのでもっと撫でる。寝転んでお腹を見せたのでさらにモフモフしていく、フハハハ……可愛かろう!

 いやあこれだけで帰って着てよかったと思うわ、こういう癒しが必要なんだよな人間的に考えて。俺、家を立てたら猫と犬を飼うんだ……今決めたがすばらしい考えだすばらしい。


 撫でくりまわしていると寝てしまったようだ、まったく愛いやつめ。結局なんでいるのかは分からなかったがすばらしい癒し効果だ、全ての窓口に常備するべきそうすべき。バリエーションは犬とウサギで補強すれば完璧な布陣だ。そんなことを考えているとミーコさんが戻ってきた、顔色がよくないな。


「こんにちはジトウさん」

「何か用か……お久しぶりです、無事に帰ってこれました。これつまらない物ですけど」


 ペナントはあんまりだったので港で買っておいた貝細工を渡してみる。


「まあ、ありがとうございます。ところで今夜お時間ありませんか? ぜひお話したいことがあります」

「今夜ですか、大丈夫ですけど何かあったんですか?」

「いえ、ほんの少しお話をさせてほしくて……支部長と交代の時ここで待ってます。今日は本当に良い日になりそう」


 なんというチョロさ、こんなところでチョロいヒロインの現物をこの目で見よう事になろうとは。いやそれにしては目が据わってるし顔色もあいまって不気味に見えてきた。いったい何が起こったと言うんだ。


「すぐお部屋の用意をしますね、前と同じお部屋でいいですか?」

「鍵だけもらえれば大丈夫ですよ、顔色が悪いしゆっくりしててください」


 すっかり忘れていたがヒロインにしてはちょっと内面が不安な娘だった、早いとこおさらばしよう。貯金とか言い出せる雰囲気でもないな、明日にするか。

 鍵を受け取って2階へ上がる、荷物を回収する時に猫がいなくなっていたのが残念。扉を開くとなつかしの我が家と言えなくも無い部屋だ、メイキュウマエの一ヶ月よりこっちの一週間の方が思い入れがある。そりゃ朝っぱらから起こされたりすれば印象にも残ると言う物か。荷物を置いて椅子にかけるとようやく落ち着いた。そういえばここには金庫型宝箱がないな、金貨は枕の下にでも隠しておこう。

 久々に朝から起きてると眠くなってきた、こういうときは昼寝に限るな。魔法で軽く体を洗ってからベットにGOだ、夜にはちゃんと銭湯で湯船につかろう。


 目が覚めたら夜だった件。マルタスさんのところに行く予定だったのに寝すぎたな、まあ明日でもいいか。腹も減ったし夕食にしよう、着替えて財布だけポケットに詰めて部屋を出る。一階に下りるとまだミーコさんがいた。聞いてみたが交代には後数時間はあるようだ。時間について聞いてみたところ内壁の入り口でわかるんだそうな。噴水の近所の店がそれを見て店をしめ出すとその隣また隣としめ出してこの辺りまで伝わってきた頃交代するんだとか何とか。昼間は鐘がなって分かるらしいが聞いたことがあったかな? まあそういうことらしい。


 というわけで『立ち飲みラリー』でジュースとつまみを仕入れよう、店に入るとラリーさんも元気そうで何よりだった。せっかくなのでペナントを一枚渡しておく。なぜか奥の瓶に引っ掛けていたがボトルキープのルールなんだろうか。買う予定も無いが気にしないことにする。ヒガシスペシャルはまだやっているそうなので明日が楽しみだ。

 南門へ向かうついでにまだやっている露天で箸巻きやら串焼きなんかも買い込んで到着だ。


「こんばんわー、リールさんいますか?」

「ハッ、隊長でしたら壁上を巡回中です、もうまもなく戻られます」


 詰め所で出迎えてくれたのは新人のトム君だ相変わらず真面目だな。荷物を置かせてもらいたわいも無い話をしていると何人か戻ってきた。


「戻ったぜー、異常なしだ」

「リールさんは相変わらずですね」

「誰かと思ったらジトウじゃねーか。なんだ? もう帰ってきたのか」

「色々ありましてね、キリがいいところで一度戻ったんですよ」

「そりゃ楽しそうだな、おっ差し入れか?」

「問題ないなら夕食にしましょう。酒じゃないから大丈夫でしょう? かなり買い込んだので皆さんもどうぞ」

「酒でも大丈夫だ、まあ建前上ダメだがな。しかしお前――」


 早速かぶりついているリールさん、本当に変わらないな。


「怪我してるわけでもないのにわざわざ戻ってくるたあよっぽどなんかあったのか?」

「まあ食べながら話しますよ。コップはありますか」


 それからメイキュウマエでの日々を語った、迷宮の中では大ゴブリン狩りしかしてないと言ったら呆れられたがメインに話したのはグランドドラゴン亜種さんのことだ。


「とにかく大きくて硬そうでした、防壁の上から見た限りですけど」

「そんなことがあったのか。一匹だけでよかったというべきか?」

「一匹でも十分に怖いですよ、最後は爆発しましたし」

「それで戻ってきたわけか。まあそんなのに出くわしたんじゃあしょうがないな」

「いやその後小さいドラゴンを倒したんですよ」

「わかったわかった、なんてすごいんだー」


 これは馬鹿にされてるのか出来上がっているのかどっちなんだろう、とりあえず土産は無しだな。


「とにかくもう少し鍛えないと危なそうなので戻ってきた次第です」

「わざわざ戻ってきてもこの辺りには魔物はほとんど出ないぜ、爺さんみたく魔法の研究でもするのか?」

「そうなります、いくらか稼げたので余裕もありますし」

「まあ死んだらお仕舞いだからな。それもいいだろうさ」


 使える魔法が全部攻撃用なのが悪いんじゃなかろうかと常々思っていた、防御用に使えそうなのは地雷ぐらいか。もう後方で狙撃とラジコンだけで済めばいいんだけど接近されたら乱射するぐらいしか手が無いのをどうにかしたい。


「こっちは何か変わった事は無かったですか? ミーコさんの様子がおかしかったんですけど」


 最後の串焼きを手にとって尋ねる。


「そりゃこっちが聞きたかったことだ、お前が行って何日かするとここに来てよ、お前のこと聞いてったぜ。マルタスんとこにも来たらしい」

「えっ?」

「てっきりお前とデキてたもんだと思ってたが」

「いやそのような事実はございません」


 ほんとに身に覚えが無い、最後にあったのは出発の朝であの時は別に普通だったような……


「いかないで、お腹にはあなたの子がいるわって奴だな」


 おい、やめろ馬鹿。これはキモイ。


「実は今夜話があるって呼ばれているんですが」

「責任はとらないとな」

「だからそういうのじゃないですって」


 身に覚えが無いのに何でこんなに不安になるんだ。もう行きたくなくなってきたがその2階が寝場所だから戻らないわけにもいかない。


「そろそろ戻りますよ。しばらくは町にいるのでまた来ます」

「身を固めるなら早い方がいいぞ、ミーコはまだガキだがすぐ大きくなるだろ」


 串を投げて黙らせる、指で白刃取りしやがった。まったくろくなことを言わない。詰め所を出るとまだ開いている店も多いが早めに戻ろう。


 ギルドまで戻り入り口からこっそり覗き込んでみる、シェリーさんもいるな。2人きりよりはましだと信じたい。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

「遅かったわね」


 いやあなたとは約束してないじゃないですかやだー、もう交代時間だったのか。


「ではギルド長、私はこれで失礼します」

「暖かくしてなさいね、今夜は冷えそうだわ」


 突然だが俺実は童貞なんだ、もうすぐそうじゃなくなるかもしれないと思った?残念だがそれはありえない、なぜならなぜならそれは2次元を愛しているから。リアルネコミミはファンタジーではあるけどぎりぎり3次元だからアウトだという理論なので分かって欲しい。いや可愛らしいとは思うし触りたいとも思うよ? ただそれは動物好きの範疇で性欲とは無関係。

 1番の理由は3次元の女って何考えてるかわかんない事だ。あいつらは言ってることとやってることと思っていることが全部違うからな、まったくもって信用できない。まったくもって信用できない。大事なことだからな。

 なのでそのようなことが起こっても紳士的に対応できる準備は整っている、このジトウに精神的動揺による過ちは決してない!と思っていただこうッ! べ、別に魔法使い卒業を期待しているわけじゃないんだから、勘違いしないでよね。


「では失礼します。ごゆっくりどうぞ」


 決意を新たにしていると俺に頭を下げたミーコさんは奥に引っ込んでいった。えっ、ごゆっくり? 話があるんじゃなかったんですかねぇ。


「さてボウヤ」


 いい笑顔のシェリーさんと2人きりになりました、これは予想外。讃岐うどんの店に入ったら出雲そばが出てきたような衝撃、色合い的な意味じゃなくて精神的な意味で。うわーこんな美人と2人きりだなんて幸せだなーとでも言えばいいのか、寒い。いやほんとに寒くなってきた。


「何度か挑戦してみたんだけどね、ぜんぜん美味く出来ないのよ」


 手に持っているのは凍ったオレンジだ。オランジというべきかな。でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。


「ミーコも協力してくれてたんだけどなぜか最近体調がよくないみたいなのよね」


 原因は明らかなんじゃないですかねぇ、俺の寿命もこのままではストレスでマッハになるます。これが本当のダークパワーか、誰がうまいこと言えと。あ、オランジが砕けた。


「とりあえず一つ作ってちょうだいな、ラリーのとこはまだ開いてるからお願いね」


 そういえば誰が俺と話をしたいとは言って無かったですね。日本語って難しいな。そんなことを考えながらラリーさんの店に走り出すのだった。

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