迷宮()
迷宮、迷宮と聞いて思い浮かべるのは迷路になってて罠とかボスとかがあってクリアすると宝物が手に入るとかそういうのを想像していたかと思う。問題なのはその前段階と言うか入り口のことで……
ジェニスさんを先頭に北門を出るとそこにあったのは階段だ。
まずその外観から説明するとロープレのマップ上に下に向かう段差、いわゆる階段が掘られている。掘られているというよりははめ込まれているのかご丁寧に白い枠線の中に4つほど横棒をはめ込んだらこうなるんだろうか。段差は1段ごとに2メートルほどでとても降りられそうにないが端のほうに不揃いな石で組んである階段があった。階段が必要な階段とかおかしいだろ常識ィ。
この手抜き具合は創生神クオリティで間違いない(確信)。
ぞろぞろと下っていくと横に扉がありここが入り口のようだ。
「では今から迷宮に入る。全員カードを出せ」
皆がギルドカードを取り出したので真似しておく。
「『クリアトパーティ』をするが覚えていない奴はガキの頃を思い出せ。『ハイ』でパーティに入れる、『イイエ』だと入れないから気をつけろよ。とにかく『ハイ』と念じてれば大丈夫だ」
ジェニスさんが『クリアトパーティ コウヘイ』と叫ぶと皆のカードが光った。俺だけ光っていないがカードに選択肢が浮いている、いいえを選ぶと無限ループしそうなデザインだがこの辺りはレトロゲーの仕様なんですね分かります。
「すいません光らないんですが」
「ああ、あんたは初めてだったな。『ハイ』が賛成で『イイエ』が反対だ。魔法使いならすぐ出来るだろ?」
いやそれは分かるんですがこの選択肢が見えていないのか? 他の人たちは一斉に光ってよく見えなかったが特に選んでいる様子はなかった。念じるだけで選択されるんだろうか? 軽く魔法じみているが試しに念じてみると光らないな。こっそりと浮かんでいる選択肢を触ると光った。
「よし全員できたな。これがパーティを組むということだ。『クリアトパーティ コウヘイ』なら獲物は公平に分配される、『クリアトパーティ カクイン』だと殺した奴だけ手に入る。最初のうちはコウヘイパーティだけ使っていればいい。そこのガキどもは魔物の素材を拾う仕事だ。これを持って着いて来い」
大きな袋を子供たちに投げるとジェニスさんは扉を開いて進んでいく。続いて年の順なのか大人が入っていくが俺も入ろうとしたところ僧侶のおじさんに止められた。なるほど後衛ですね分かります。最後尾について出発だ。
さて迷宮だが狭く感じるが意外と明るい。しかし見たところ一直線にしか見えないのは気のせいなんですかねぇ、方眼紙を用意してなかったから助かったけどあまりにもひねりがなさ過ぎるでしょう? 1階だからこんなもんなんだろうが敵もいないし拍子抜けだ。端まで着くと階段がある、今度は常識的なサイズだな。2・3・4階は同じ一直線でゴブリンとスライムが何匹かいたがジェニスさんが殴りつけるとすぐにいなくなった。そしてドロップしたのは銅貨とすごく見たことのある棍棒だ、何本か集まったところで大人たちが殴る係りになったらしくレベル1でも物理で殴ればいい理論で殴りかかっていく。さすがに大人が武器を持って殴るとすぐに倒せるんだな、5階につくころには前衛のローテーションができたのか何匹か倒すと交代している。
そして5階に着く、ようやく分岐がでてきた。基本は直線だが壁に横道がいくつか出来ている。
「よし、ここからはお前たちだけで戦ってみろ、後ろで見ているからな」
そういうと大人を中心に横道に入っていく前衛たち、すいませんずっと子供といるだけなんですけどこれなんてぼっち? よくよく考えると棍棒(物理)で対処できるなら魔法使い要らないよな……素材拾いしている分だけ子供の方が働いているという事実。修正されてください。
横道を潰しながら進んでいくと最後の道で宝箱が発見されたらしい。後ろから見ているが罠とかそういうのは大丈夫なんだろうか? ガタイのいいおじさんが開けると中から毛の塊が飛び出てきた、魔物かと思ったら人形のようだ。びっくり箱かよ。
「このように宝箱といっても罠が仕掛けられている場合は多い、鍵開けは慎重に行うこと。パーティに開錠や探知系の技能を持っている奴がいるならそいつに任せた方が安全だ」
見事な教訓だと関心はするがどこもおかしくはない、今回はそれが身にしみて分かったよ。>>指導官感謝。
そんなこんながあったが6階から9階までは5階と同じ構造でわき道の数と階段の位置が違うだけだった、そして9階の奥にたどり着くと階段ではなく扉がある。
「転移装置前の階にはこういう部屋があって魔物が必ずいる。この階にはでかいゴブリンが陣取っていてな、奥に階段があって降りればすぐに転移装置で帰れる。いつもは私ら指導官が弱らせて全員で袋叩きにするんだが今日は魔法使いがいる。扉を使った戦い方も実演してやろう。ジトウ先生どうぞ」
変な期待をされてませんかねぇ……俺も初心者なんだが。名指しにされて出て行かないわけにも行かないので門の前に出た。
「さて、頭が悪い魔物は扉を開けられない。そして魔法使いか弓持ちがいれば遠くから攻撃できる。あとは分かるな?」
すごく……安全です。こういうのがいいんだよこういうのが。開け閉めしながらハメ撃ちするわけですね。
アイスアローを先に出しておく→扉を開ける→撃つ→着弾後閉める こうですか分かります。杖を取り出し身構える。
最初に開けた時目に入ったのは人間並みの大きさのゴブリンだ。さっきまでいたゴブリンが1メートルないぐらいの身長だったが大ゴブリンは2メートルを超えてがっしりとした印象を受ける。手には大きな棍棒を持っていて本能的に戦士タイプだ。早速狙ってみる。
アイスと違ってアイスアローさんは命中率すごいですね。基本はまっすぐ飛んでいるようだが微妙に誘導が効いて曲がる、足を中心に狙って何度か繰り返すと扉を開けたら大ゴブリンが凍った足を引きずっている。狙いやすくなったのでもう片方も凍らせると腕だけでバタバタと暴れだした。
「よし、ちょっと待ってろ」
ジェニスさんが中に入って大ゴブリンを殴りつける。さすがにボスらしく一撃では死なないようだが腕が変な方向に曲がって棍棒を落とした、回収して戻ってくる。
「では前衛諸君、1人1回ずつこれで殴ってみろ。残った腕に気をつけて頭か腕を狙えば安全だ」
にこやかだがこれって嬲り殺しっていうんじゃないですかね、いやレベル上げだと考えればどこもおかしくはないはずなんだが。大人連中は勇ましく殴りかかっているし子供はさすがに無理だろうと思っていたら指導官さんが石を投げるように指示している。世も末だなと思わなくもないがこれが普通なんだよな。
そもそも公平パーティなら経験値も等分されるはずだから子供にやらせなくてもいいはずなんだが度胸付けのためなんだろうな。獣が子に狩りの練習用の怪我した獲物を与えたり新兵に銃殺係とかそういう感じで。
しばらくたつと大ゴブリンは消えて銀貨がジャラリと落ちていく、ドロップ品は無しかと思ったら大棍棒はそのまま残っているからこれか。こう見ると城壁からサソリを倒している方が安全で儲かりそうな気もするが新しい金儲けの予感にわくてかしている俺がいる。ひょっとすると楽に一財産築けるかもわからんね。
子供たちが銀貨を拾い終えると皆揃って階段を下りる。豪華そうな彫刻の着いた扉を開けると部屋になっていて隅にぼんやりと光っているのが転送装置なんだろうな、奥にはまた同じ扉がある。
「これが転送装置だ、正確にはこの真ん中にある玉がそうらしいが詳しいことは知らん。周りの魔法陣に触れれば地上に転送される。一度触れれば1番最初の門の横に同じものが見えるようになる、その前で念じれば触れたことのある階に戻ってくることが出来るから覚えておけ。正直1階から9階まではたいした稼ぎにならんからな、時期にもよるが初めての奴以外は大体10階から進めていく」
確かにボス以外は銅貨に棍棒と稼げそうになかったな、他に人はいなかったし講習用というかチュートリアルありがたいです。
「では最後に転送装置に触れて一旦外に出て清算だ」
おじさんや子供が魔法陣に触れると一瞬で消える、外に転送されるって言われてもいしのなかにいる状態になったりしないか不安だ。残っているのは俺と僧侶だけになったので思い切って触れてみると視界が変わり風を感じるようになった。見渡すと最初の大階段と扉が見える、よかった……転送事故は起こらなかったんや。
皆が端のほうに固まっているのでそちらに向かう、僧侶のおじさんも転送されてきたようだ。
「よし、全員いるな。今行った所までは最も簡単な部分だ。魔物は弱いし罠もほとんど無い、明るいし道はまっすぐだ。だが潜れば潜るほど魔物は強くなるし迷いやすい構造になる。ゆっくりでいいから確実に戻ってこられるように鍛えろ。死ななきゃなんとでもなるからな。
では楽しい清算の時間だ、創生神様に感謝して受け取るように。細かい素材が多く出る階もあるから大きめの袋を何枚か用意しておくと楽だぞ。とりあえず手を前に出しておけ」
皆が手を出したのを確認するとジェニスさんは『スタッカシェア』と唱える、子供の持っている袋が鳴ったかと思うと銅貨がざらざらと降って来た。マントを広げて袋代わりにしていたが結構な量だ。棟上の餅撒きじゃないんだからもう少し丁寧な分配方法はないんですかねぇ。と思っていたら急に重くなった、どう見ても棍棒です本当にありがとうございます。
「コウヘイパーティで揉めるのが素材や道具の種類だ、どれが手に入るかは分からん。金は公平だがこればっかりは創生神様のお導きだ。だが魔法使いは棍棒を貰ってもうれしくないし戦士に杖が来ても殴るには向かん。そういう時はパーティ内で交換したり武器屋に持ち込んで換金するんだな、棍棒はたいした金にはならんが。
あるいはパーティを組むときに全部売ってから清算だの決めておけば多少はトラブルも減るが確実じゃない、まあ何度がやってみればいやでもわかるから慣れろ。ではこれで講習は終了だ。あとは各々努力して稼げ」
大棍棒が当たったのは子供の1人だ。持ち上げられないようで引きずっている、何人かで協力して運んでいくようだ。こんなゲームあったな。
「指導官さん、質問いいでしょうか」
「どうした?」
「迷宮の扉についてです。さっきの大きなゴブリンや途中の魔物が扉を破って入ってくることはありますか?」
「まず無いな、一見普通の扉に見えるが頑丈さは壁と変わらん。階によっては小部屋だらけだが80層辺りからは頭のいい魔物が出てくる、そいつらは開けて入ってくるぞ。さすがに転送部屋は無理なようだがな」
「そうですか、ありがとうございます」
扉養殖が完成した予感。魔法使いでよかったよ、メイン手榴弾これで勝つる。
「せっかくなのでもう少し潜ってみます」
「1人でかい? まあ気をつけな、魔物以外にもな」
PKとかMPKもあるんですね分かります
「それは人為的なものを含みますか?」
「想像に任せるよ。直接殺し合いをすればカードに出る死因は殺人だ。その時は調査も入るが罠や魔物に偶然やられたら何層で死亡としかでない。調子に乗りすぎると何が起こるかわからないもんさ、まあ浅いところじゃ聞いた事は無いがね」
「気をつけます。今日は講習ありがとうございました」
「死なない程度に稼ぎなよ」
他の人たちは皆引き上げるようだが俺だけ残る、別にぼっちだって構わないんだからね。棍棒は邪魔なので子供にあげた。
早速扉に向かう。これが転送装置だな、前は気づかなかったが魔方陣が扉の横に増えている。使い方が分からなかったが他のパーティが次々と消えていくところを見るとまたねんじろ方式なんだろうか、転送できないと思ったらまただよ(笑)。ハイ/イイエじゃなくて10階と四角く浮かび上がっている。こっそり選ぶと無事10階に着いた。
さておもむろにソナー魔法を上に向かう扉に使ってみる、船の中暇だったのでレーダーを改造してたらできた魔法だ。X線で透けて見えるのは便利だが疲れるのを省エネできないかと色々試して見たところ魔力()を面ではなく網目のように伸ばしていくと形が分かるようになる。壁の向こう側にも同じように広げていくと大まかな形が分かると言う寸法だ。もっとも網目以下の大きさのものは分からないと言う欠点もあったが大ゴブリンなら問題ない。普段は数分毎に1回の割合で広範囲を探るが詳しく調べたい場合は連続して使う。
しばらく続けていると上の部屋全体が分かるようになった、部屋の中央に人型が1体陣取っている。向かいの扉は閉まっていて大ゴブリンだけのようだ。これならファイアインザホール、いわゆる手榴弾投擲で倒せるな。倒せないにしても扉を閉めれば同じことの繰り返しで安全に倒せる、持っててよかった手榴弾魔法。
それにしてもぜんぜん動かないが部屋の中のボスってそういうもんなんだろうな。ラスボスだったら話しかけないと襲ってこないとかゲームなら普通だし。
とりあえずソナーを続けながら扉を開けて手榴弾を投げ込む。閉める。爆発音、ソナーが乱れて分からなくなる不具合。爆心地だもんな、少し待つと分かるようになった。大ゴブリンの人型が消えた……だと? なるほど何メートルか即死判定があるんですね分かります、見た目は二足歩行犬で鎧も着てなかったしそりゃ死ぬ罠。くまなく探ってみるが動いているものは見つからないので中に入る、死体の残らない魔物でよかったよ、投げ込んだのは大ゴブリンのすぐ後ろで黒く焦げている。すぐ前に銀貨が落ちているから一定距離なら即死するヤバイ魔法だな。
銀貨を数えると5枚だ、さっきの銅貨は50枚ほどあったがパーティ補正でもあるんだろうか? 指導官入れて20人少々の公平PTで銅貨50枚なら全体で銀貨10枚にはなっているはずだ、9階まで歩いてきた分もあるにしても倍も稼げるようには見えなかった。何度か試してみよう。続いて9階の廊下側の扉をでる、さてボスがポップするのは間違いないにしてもどういった条件で出てくるんだろうか? 時間だったりドアを開けるとフラグが建つとかそういうのだと思うんだが。10分ほど経つとソナーに感有り、大ゴブリンさんがリスポンしたようだ。今度は動き回っているがしばらくすると真ん中に仁王立ちになる。こういう仕組みか……クレイモアの的だな。
そういえばギルドカードを確認してみると功績にゴブリン、スライム、10Fゴブリン(パーティ)、10Fゴブリンと増えている。ボスだけソロ特典でもあるのか2種類あるな、経験点も51に増えている。前が確か15だったから迷宮だと割がいいというのはこのことか。大ゴブリンでどのくらいあがるのか調べておこう。
杖を脇に戻してマジカル☆アサルトライフルを装備、扉を少し開いて銃身を差し込みボディに照準する。フルオートで10発ほど撃ち込むと動かなくなるがまだ消えない、念のため頭にも撃ち込んでみるが角度のせいか擦れて横にそれたようだ、もう一度撃つと眼に入ったのか後ろ頭が三分の一ほど吹き飛び消える。後に残ったのは銀貨だけだ。
そういえばヘルメットありのゲームだと頭に当てても即死しないことがあるな、頭蓋骨でもできるとは知らなかったが現実ってコワイ。いや現実と言う名のファンタジーか。
銀貨を確認すると4枚だ、個体差があるのか。経験点は81となっている、1体当たり30点もらえるのか。70匹も倒せばスキルが強化できるな。
その前に氷の弾頭の威力を見直そう、狙撃銃でサソリがバラバラになる威力だがこの場所では持ち運びに向かないし距離が近すぎる。弾頭は鉛に変更と念じてリロード。少しクラっときたな、新しい魔法扱いされたんだろうか……兆弾しないように壁に向けて1発撃ってみると少しめり込んで変形した弾がある。
鉛だけだと貫通しないんだな。フルメタルジャケットは合金で覆ってあるんだったか、ゲームだと選ぶだけでパラメータが変わるが現実は試してみないと分からないのは不便だ。試しに杖を壁に突き込んでみるとめり込まないどころかうっすらと傷がついただけだ。威力は申し分ないことが分かったな。
早速実験だ。扉を開けて頭を狙って撃つ、以前に比べて鈍い音がした。Oh……グロ動画注意。一瞬はじけた瞬間が見えた件について、そういや骨が折れたり凍りついたりしている間は肉があるんだよな……どさりと倒れると消えて銀貨がいくつか落ちる音が響く。氷と鉛の比重がどんなものか分からないが威力がすさまじくあがった、重さかける速度は破壊力ということがよく分かったよ。ねんがんの鉛弾頭をてにいれたぞ!
ゲームに出てきてたフルメタルジャケットや鉄甲弾など試してみたところやはり頭を貫通した、即死判定は頭と首にあるようだ。胴体に撃ち込む場合はソフトポイントの方が有効なのか軟頭弾だと貫通しない分打撃力があるらしくグロいが崩れ落ちて動かなくなる。鎧を着た魔物が出るまでは鉛弾頭だけで十分そうだ。
そしてクレイモア地雷もやはり即死だった。ドアのほうに破片が来ると危ないので定位置の横に仕掛けてしばらく待つとカチッという音が鳴ったかと思うと爆発が起こる、ドアを開けると人影は無く銀貨だけだ、壁には鉄片が食い込んでいるのが分かる。
やはり近代兵器の爆発力は鬼の力といったところかな、一方で閃光手榴弾も極めて有効だった。ドアの隙間から放り込んで横に退避、突入すると仰向けになって痙攣している大ゴブリンがいた。光だけでもこれだけ効くなら音が鳴るようになったら発狂するんじゃなかろうか、止めを刺す。これは開発していけばすごそうだ。
何時間か繰り返して分かったこと
・部屋の中のボスは一定時間でリスポンする
・リスポン位置は部屋の中でランダムだが定位置があってそこに移動する
・ドロップ品は大棍棒で固定だが銀貨は4枚から6枚と幅がある
・死因に関係なく経験点は30点
・爆発で大棍棒は壊れる
・俺が部屋の中にいる間はリスポンしない
部屋の隅に陣取ってリス狩りできるかと思ったら無理だった。部屋から出るとすぐリスポンしましたよ。ヘッドショットが決まると経験点が1.5倍とかそういうのも無いらしい。まあこれもここだけの話だから全部に適用されるかは不明だ。
9階を戻ってゴブリンやスライムを倒してみたが定位置やリスポン地点は割り出せなかった。ほんとに何時の間にかそこにいる状態だ、経験点は両方1だから個体差は無いんだろうか。ドロップは銅貨が数枚でランダム性はあるようだ。棍棒は重いから放置、やはり銃撃や爆発で壊れるようだ。
村人ががんばって袋叩きにする相手が一撃なんだからありがたいことだ。こうしてみると月に何度か大ゴブリンを狩るだけで生活できそうなことに気づく。でも貯金や贅沢を考えるともっと深いところに行ったほうがいいんだろうな。
庭付き一戸建てをローン無しで買って嫁さん貰って子供は2人とかゆめがひろがりんぐ。ただし仕事は大ゴブリン狩り。現代日本ならなめてんのかと言われそうな暮らしだ。
思えば休みが週一で1日10時間労働の仕事はひどかったんやろなあ……内勤なのは救いだが力仕事も多かったし、それでいて給料15万とかもうね。挙句にポイだから契約社員はダメ。絶対。
とりあえず稼げるだけ稼ごう。現実の8割は金で何とかなる、ならないのは運とか寿命とかそんなのだけだ。貯金して嫁さん貰って幸せになる権利が与えられた幸せをかみ締めよう。
それから数時間大ゴブリンを倒し続けると銀貨が重たくなってきたのでポケットに詰め込んで帰還した。空はもう真っ暗だ。
兵士の月給銀貨5枚に比べると相当な金を持ち歩いてるな。階段に光石がはめ込まれているのか上まで上がるのは楽だった、門も明るいのでまっすぐ歩くと着いた。カードを取り出して見せると問題なく中に入れる。ここの門は深夜まであいているそうだ。冒険者は深夜どころか泊り込みで戦うこともあるとかなんとか。企業戦士じゃなくて本当の戦士だもんな。
街灯の明かりでギルドにたどり着いた。受付前のテーブルは閑散としているが奥にある酒場はまだ騒がしい、皆稼いで飲んで楽しそうだな。
ポケットの中を何とかしようと部屋に急ぐ、両替や貯金をしたいが目立つと悪そうだ、しばらくは部屋の金庫に放り込んでおこう。中に入り装備を放り出すとようやく落ち着いた。机に布を敷いてポケットの中身を移す、結構な量になったが数えると120枚あった。半日でこれだけ稼げるとなるとあっという間に金持ちになれそうだな。ただし死ななければとなるが。
包んで金庫に放り込む。腹も減ったし風呂にも入りたい、少しだけ贅沢な食事をするのもいい。俺は夜の街のことを考えながら部屋をあとにする、こうして初めての迷宮探索は無事に終わったのだった。




