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マジカル☆スナイパー誕生

 ドンドンとうるさい音で目が覚める。部屋の中はまだ暗い、嫌な目覚ましだが日が昇ってないうちから誰だ?


「どちら様で?」

「俺だよ」


 俺俺詐欺がこんな所にまで進んでいるとは世も末だな、嫌なファンタジーだ。


「俺様にはお会いしたことがなかったかと記憶しておりますが部屋をお間違えでは? 1階の受付でご確認ください」

「リールだよバカ、早く開けろ」


 目をこすりながら鍵を開けると鎧を着込んだ兵士が居た。

 兜の前の部分を下ろしているフルアーマーリールさんですねわかります。そういえばこの人はよほど力があるのかあんなに重そうなのに普通に動いてたな


「何ですこんな朝っぱらから……まだ暗いじゃないですか」

「昨日の魔物の件でちょっとな、すまんが着替えて南門まで来てくれ。」

「睡眠は10時間取ることにしているので出来かねます。開館時間までお待ちください」


 そういってベッドに戻ろうとするとと後ろ頭を掴まれた。


「お前やっぱり貴族だろ? そうなんだろ?」

「イタイタイタイ貴族じゃないです。目が覚めたナー、南門に行きたくなってきたナー」

「分かればいいんだ分かれば」


 やっと離してくれたがなんて馬鹿力だ、頭がへこむかと思った。


「でもこの暗さで街の外とか無理でしょう? 危なそうだし……もう少し後にした方がいいんじゃ?」


 着替えながら尋ねてみる。この暗さだと蠍なのか岩なのか判別がつきづらいしそもそも蠍は夜行性じゃなかったかな。昼間遭遇したのは魔物だからなのか。


「この時間だから蠍が動くんだろうが。安心しろ、防壁の上から見つけたあたりを教えてくれればそれで良い。それに猫族なら月明かりで普通に動けるしな」

「いや俺は人間なんですけど」

「魔法使いなら暗視の魔法があるだろうが」

「使ったことないですけどどうやったら使えますか?」

「……わかった、とにかく来てくれ。こっちで何とかする」


 鉄板育成表にも穴はあるんだよな……じゃなくて穴だらけじゃねーか。そういう便利系の魔法が載っていないのはどういうわけなんですかねぇ。いや、スコープやサーマルスコープは使えたんだからもう使えているのかもしれん。

 などとやっているとまた誰かきたようだ。


「坊や、やかましいわよ。下まで響いてくるわ」


 白い髪に日に焼けたと言うよりは濃い茶色の肌にスレンダーなボディ、とがった耳。ダークエルフさん来ました。これで勝つる!


「昨日からごたごたが多すぎない? 挙句に私の家に乗り込んで騒ぐなんて……」

「ハッ! 失礼いたしました。直ちに退出いたします」


 そういうとリールさんは俺の腕を引っつかみ飛び出していた。あわてて付いて行こうとするが早すぎるでしょう。ばたばたと階段を下り入り口から飛び出す。


「何も喋るな、走れ」


 顔が近い、むしろ兜が近い。ガチャガチャと音を立てているがすごい近所迷惑だわ。十字路まで来るとやっと止まった。


「夜にその鎧はうるさくないですか? 皆寝てるんだからもう少し軽装にした方がいいと思いますよ」

「お前ちょっと黙れ」


 冒険者ギルドの方を振り返りながら兜を脱ぐリールさん。ネコミミ判別法によるとぴったりと頭にくっ付いているからして怯えているようだ。相変わらずおっさんのネコミミは悪性NRSを引き起こしそうになるな。

 しばらく見つめていたようだがようやくこっちを向いた。


「先ほどの美しいお嬢さんのことなんだがな」

「すごい美人でしたね。うわさに聞いたことがあるダークエルフさんでしょうか?」

「おぉ……う、そうだな美人だ、間違いない。そうだダークエルフで支部長のシェリーさんだ」

「ミーコさんが昼間でギルド長さんが夜間担当と聞いていましたがようやく会えました。いやあ、もっと早くお会いしたかったなあ」

「……ふたつだけ注意するべきことがあってな、大事な事だからよく聞けよ、大事な事だからな」


 2回言いましたねわかります。


「なんです急に? 夜は静かにしましょうとかそういうことならまず自分の鎧を何とかするとこから始めてくださいね」

「あの人の前では初代様を悪く言うのは絶対に禁止だ」

「いや鎧を……初代様? いや別に悪い人だとは思ってませんけど」

「シェリーさんはその、すごく愛国心が強い方でな。正確には初代様を信奉してるというかありゃ創生神様並に崇めてる。少しでも悪く言おうものならお前朝にはいなくなってるぞ」

「なにそれ怖い」


 新ジャンル:闇エルフ国デレ、言いづらいな。この系統の新ジャンルはもういいから。


「東門を出るとすぐ港なんだが何年か前に外国の船乗りが酔っ払って冒険者ギルドに入り込んだことがあった。人間族だったが初代様の功績はうさんくさいとか何とか言ってたらしい。すぐに仲間が来て連れ帰ったんだがその夜にそいつらの船が氷漬けになってた」

「えっ?」

「結構でかい商船だったが丸ごと凍ってた。ハンマーでかち割って何とか船室まで乗り込んだんだが船員は皆怯えていてなにを言ってるか分からない状態だった。幸いというか死人は出なかったがそいつら全員二度とこの国に来ることはなかったな」

「その、船が凍るとかはよくある話で?」

「もっと北の方なら港ごと凍っちまうところもあるらしいがこの国じゃねーよ。魔法使いが100人単位でやればできないことはないんだろうがな」


 ダークエルフさんは魔法使い100人単位以上の能力を持っているとか……ねーよ?


「でもそれだけじゃシェリーさんがやったと決め付けられないんでは?」

「質問を返すようで悪いがエルフ族のことをどれくらい知っている?」

「耳がとがっていて寿命が長く森に住んでいる、でしたっけ? 魔法とか弓が得意と聞いたことはあります」

「それであってる。で、だ。ダークエルフ族は攻撃魔法に長けているやつが多い。シェリーさんは元冒険者でな、初代様と一緒に戦ってたぐらいで相当のやり手だ。初代様が引退してしばらくは一緒に居たらしいがお亡くなりになったあとはずっとあの支部で待ってる(・・・・)……本当にいい女さ」

「待ってるって……亡くなられたんでしょ?」

「それでも、さ。異種族との恋は大抵そんなもんだ。特にエルフは長生きだからな、俺がガキの頃からずっとあそこを守ってる」

「いったい何歳n」

「二つ目だ。そのことを口に出すと恐ろしいことが起こる。俺はもう思い出したくもないし止められない。この二つを守っていれば穏やかに生きていける。分かったな? 行くぞ」


 目がマジです、コワイ。


「まあジトウがこの町に居るのもあと少しだろうからな、メイキュウマエに行くんだろ?」

「そういうことになりそうです。ウサギ狩りでもその日暮らしはできてるんですが装備をそろえようにも貯金ができませんし」

「所詮はウサギだからな……この前のガキどもの小遣い稼ぎになってるぐらいだ。大人がわざわざやるほどのもんじゃねーわ。そういうことなら蠍は金になるぞ」

「詳しく」

「倒せば銀貨が何枚か出てくるし運がよければ毒腺や尻尾、爪や殻が手に入る。軽いから武器に防具と買い手は色々だ」


 見事な換金率だと関心はするがどこもおかしくはない。早く行こうそうしよう。

 南門に到着した。今まで見たのは昼間だったが夜は頑丈そうな門で閉じられている。リールさんについて行き横手の扉をくぐり階段を登る。暗いので暗視の魔法を使ってみよう。暗視装置のイメージで魔法を使うと緑がかっているが見えるようになった。防壁の上に到着。胸ぐらいまでの壁と一部石が積んでいない列があるが銃眼かな? そこから外が見えるようになっていた。


「全員そろってるか?」

「隊長、魔法隊の爺さんがまだですが他は問題ありません。矢と石はたっぷり用意しました」

「あの爺さんか、また詰め所で寝てるんじゃないだろうな……トム、おまえちょっと下に降りて見て来い。他のやつらは集合だ、ジトウ、お前も来てくれ」


 30人ほど集まっているがリールさんは小隊長か中隊長なのか、歴戦のネコミミ戦士だと思ってた(確信)。ネコミミ兵士か?


「こいつが冒険者のジトウだ。よその国から来て昨日から冒険者を始めた変人だが貴族じゃないから適当にやれ。西の岩場に蠍が出たから釣りだして全滅させるぞ。新人は先任について覚えろ、矢の補充でもしてればいい。夜が明けたら確認に向かうから気張りすぎるな、堀と壁でこっちは安全だから落ち着いて行動しろ」

「おぉ……若い者は勇ましいのう。わし居なくても大丈夫そうだから寝るわお休み」

「トムとミーク、魔法使い殿を丁重にお連れしろ」

「ハッ」


 何時の間にか現れたすごい白髭のおじいさんが引きずられていく。兵士の定年は何時なんだろうか少し疑問にも思ったが魔法使いは爺になったからが本番だからいいか。


「全員西に移動だ。ジトウは俺についてきてくれ、ってお前普通に歩いてるじゃねーか?」

「魔法って便利ですね。昼間ほどじゃないけど動けます」

「うん……わかった。そのまま着いて来い」


 所々にある小部屋をくぐりつつ5分ほど歩くと昨日の岩場が見えてきた。高さもあるが案外近かったんだな。


「あの岩場に入ったあたりですね。1匹だけですけどがさがさ動いてました」

「皆聞いたか? 30匹は居るだろうからよく狙えよ」


 ゴキブリじゃないんだから30匹は言いすぎじゃね? 群れる魔物だったのか。


「新米どもよく聞けよ。爺さんに魔法で先制してもらう、蠍はまっすぐこちらに向かってくるから弓で射掛けろ。壁に取り付かれたら積んでおいた石を落とせば大体死ぬから大丈夫だ。もし毒液を食らったらすぐ交代しろ、弓が下手なやつは後ろについて矢の補充をしながら見てろ。準備開始」


 そういうと皆動き出した。弓の調整をするものや石を運んだりとてきぱきと行動している。髭爺さんが近づいてきた。


「若いのが見たのは茶色い蠍で間違いないかの?」

「土と岩にまぎれてましたが茶色でしたね。大きさはウサギぐらいで……色が何かあるんですか?」

「たまに火を噴くやつが居ることもあってな、火や水属性のやつが混じっていていると多いが色でわかるんじゃよ。新米冒険者の坊やは見たことがないのかい?」

「ずっと部屋の中の仕事だったもので……坊やじゃありません、30歳です」

「ひょ? 人間族よな? まあ若く見えるのは良い事よ。わしは王国騎士団魔法隊のマローク、見ての通り魔法使いじゃ」


 とんがり帽子に灰色のローブ、杖を持っているところを見ると見事な魔法使いだ。


「冒険者のジトウです。一応魔法使いです」

「ほほっ、ご同業か。新米ならまず杖を持たんとな、外の国では違うのかい?」


 そういや魔法使いは杖持ってるイメージがあったな。ないとだめなのか。


「ないとまずいですか?」

「いや慣れれば問題ないんじゃが……普通は持ってるもんじゃよ。集中できるし威力も上がる」

「古代語は得意なのでファイヤーとサンダーとアイスは使えるようになりました」

「頭はいいようじゃな。学園のようなところには通っとったのかい?」

「いえ以前は図書館勤めでした。魔物を見るのは初めてでしたがウサギは倒せます」

「ほう、なんとも……ならジトウさんとやら、わしの後ろで見ておくといい、いくらか参考になるじゃろうて。隊長、わしと若いのは上におるから準備ができたら声をかけてくれ」


 そう言うと小部屋に入り小さな階段を登っていく。一段高くなっている屋上に着くとより遠くが見渡せるようになった。


「わしは学園を出たあとすぐ魔法隊に配属されてな、いやそれほど優秀ではなかったがその年の出来のいいやつらが皆冒険者になってしまって繰り上がりよ。それから50年、ずっとここで街を守ってきた……じゃから迷宮で役立つ魔法を教えてやることは出来ん。さて、魔法使いは力は弱いし動きも早くない。仲間が居なければすぐに死んでしまうという職業じゃ。そのあたりは大丈夫かの?」

「迷宮に入るときは仲間を見つけないといけないというのは聞きましたがそういうことですね。昨日ウサギに刺されそうになりました」

「鎖帷子くらいは着込んだほうがいいぞ。一方で魔法を使えば遠くから魔物を攻撃できる、弓師なんかにも言えることじゃがあやつらはすばやいから何とかなることも多いな。迷宮ならば近寄られることもあるがここならばその心配はしなくても良い」

「なるほど」

「威力のある魔法は詠唱も長い、が。ここなら一方的に攻撃できるということじゃ。遠視の魔法は使えるかの? 岩場を見るといい」


 遠視というとスコープだな、右手を輪にして望遠鏡のイメージで使ってみる。うわぁいっぱい居る。


「うじゃうじゃ居ますね」

「数は多いが小さいのばかりじゃな。幼生なら殻も厚くないから楽そうじゃ」

「どんな魔法を使うんですか?」

「まずサンダーレインで注意を引く、近づいてきたらストーンアローを連射して仕留める」


 サンダーレイン() 雷が降り注ぎ相手は死ぬですね分かります。いやこれが普通の世界だから笑っちゃ駄目だな。


「若いのはファイヤーも使えると言おったが草地じゃからいかんぞ、延焼したら目も当てられん」

「アイスにしておきます」

「それが良かろう。なに、ここは安全じゃからな。ゆっくりで狙えばいい。アイスと言うたがアイスジャベリンか? アイスアローか?」

「小さいのが飛んでいくやつです」

「そういえばお坊ちゃんじゃったな……いやまあ当たれば何でもいいわい。」


 馬鹿にされてないですかねぇ……まあ蠍は怖いし安全な戦闘だと考えればいいか。ウサギと違って経験点になるといいが。


「爺さんいいか? 準備完了だ」

「おう、ちょっと待っとれい。じゃあお若いの、よく見とれよ」


 そういうとマローク爺さんは杖を握りしめて喋りだした。


「空にある雷帯、満ちて触れよ降下の縁。魔を滅す線となりて落ちよ……」


 うわぁ……マジでやってる。これは俺には無理だわ……中二病かと思ったらガチだもんな。

 それから1分ぐらいブツブツいっていたが最後に


「降れよ雷! サンダーレイン!」


 そう言うと光ったと思ったらすごい音がした。耳が痛い。


「成功したぞ。見たか若いの」

「すいませんよく聞こえません」

「サンダーレインのときは耳を塞いどかんと危ないぞ、まあいい教訓じゃろ。見てみろ」


 そういって岩場を指差すと煙が上がっている。火事じゃねーか、火は出てないから大丈夫なのか?

 遠視で覗いてみると動かなくなったり痙攣している蠍が多数いるようだ。でも動かないのは半分くらいで残りがこちらに向かってきている。


「それ、近づいてきとるから狙ってみい。わしは少し休憩してからやるわい」


 血色の悪くなったマローク爺さん座り込んだ。まだ耳がキーンとするが俺もやってみるか。


 マジカル☆狙撃銃を装備、バイポッドをイメージしたらちゃんと着いているようだ、寝そべって狙撃姿勢をとる。多少疲れたがもう慣れたな。まっすぐ向かってきているからそのまま狙えそうだ。


「ステンバーイは省略してゴゥ!」


 1番手前の蠍に向けて照準、引き金を引くとボクンという音とともに氷が飛び出した。右爪が吹き飛んでいる、やや左側を狙ってもう一発、今度は命中だ。胴体が真っ二つになってるからさすがに死んでるはず。ゴキブリは頭が取れてもすぐには死なないと言うのがあったが蠍はどうなんだろう。

 進行方向はやや左向きのようなので修正して打ち続けていると弾切れだ。


「リロード」


 鴨撃ちだな、AIさん回避してくださいますか? 続けて5匹吹き飛ばしたところで角度がきつくなってきた。膝立ちになって続けようとしたがちょっとくらっときたな。もう少しゆっくり目で行こう。最後の一発でやっとヘッドショットが決まった。マジカル☆狙撃銃は胴体に即死判定があるみたいだったからあまり意味はないが。

 高所からの狙撃は匍匐しているやつがいい的でよかったよ。>>防壁感謝。


「マロークさん、けっこう近くまで寄って来てるんですけど大丈夫でしょうか?」

「おお、どれどれ。なんじゃ、大して残っとらんじゃないか。ちょっと狙ってみい」

「はぁ、リロード」


 弓の攻撃も始まっていて蠍の動きが止まっている。堀の前で動いているのを手前のやつから順に狙撃していく、水には入れないのか左右にちょこまかと動くのでやり辛いが近いのでよく当たった。

 リロードしていると最後の一匹が消えて終了だ。


「終わりのようじゃな、若いの、今のはアイスアローか?」

「アイスです」

「そうか、アイスか……蠍が、吹き飛ぶ、アイスが、あるか! このバカタレ!」

「ええ……でもちゃんと氷を飛ばしていますよ。アイス以外のなんだって言うんですか?」

「知るか! ちょっとギルドカードを見てみろ……何匹倒しとる?」


 取り出してみると下側に矢印がついて光っている。これが功績と言うやつだな、スライドすると出てきた


 大蠍 *11


 狙撃 

 伏せ撃ち

 座り撃ち


 なるほど、実績制ですね分かります。ファンタジー系FPSとか新しすぎて意図が掴めない。3回リロードしたから命中率は半分ちょいぐらいかな。


「11匹倒してるようです」

「お前さん本当はいいとこの魔法使いなんじゃろ?」

「いや冒険者ですけど」

「はぁ……わかった、無理には聞かん。降りるか」


 ひどく疲れたような顔で歩いていくマローク爺さん、やりすぎたか? 下に戻るとリールさんたちが後片付けをしているようだ。


「爺さん今日はすごかったな。こっちは楽させてもらったが大丈夫か?」

「わしが使ったのはサンダーレインだけじゃ、あとはこの若いのがやった」

「はあ? 蠍が吹っ飛んでたぜ? 新米が出来るわけないだろうが」

「時代が変わったんじゃろうか……わしはもう限界じゃ。寝る」


 そういうととぼとぼと階段の方に歩いていった。


「ジトウお前何やったんだ?」

「アイスの魔法ですけど」

「アイスで蠍が吹っ飛ぶわけないだろ、ストーンボウかストーンアローの強いやつじゃないのか?」

「硬くて小さいアイスを作って飛ばしてるだけです」

「お前が何を言っているのか分からなくなってきた……アイスってあれだろ? 学園で最初に習う基本魔法で氷を出すやつ」

「学園は知りませんが氷を出しますね」

「でそれを飛ばすと蠍が吹っ飛んで千切れると?」

「そうですね、こうすばやく抉り込む感じで」


 ゲームみたいにしましたじゃさすがに通じないよな。運動エネルギーってどう説明すればいいんだろう、そういえば俺は文系だったな。


「昔図書館の文献に載ってた古代の冒険者達が使っていた魔法を真似した。ということです」


 芋砂おいしいですじゃ伝わらないからアレンジして伝えてみる。伝わったか?


「ああ、そう古代ね……すごいもんな古代」


 納得してくれたようだ。このまま押し切ろう。


「ところで銀貨を拾いにいきたいんですが」

「明るくなってからな。暗がりから生き残りに襲われたら死ぬぞ、それに片付けと報告を済ませないと駄目だ」


 もっともだ。


「あぁ、なるほど。じゃあギルドに戻って寝てます」

「そうしとけ。開門の時に人をやるからな」


 手を振って別れる、さすがに眠いから早く帰って寝よう。

 しばらく進んで階段を降りると街の中だ。光石の街灯があるから暗視も必要なく歩ける。冒険者ギルドまでたどり着いた、ドアを静かに押して入る。


「ただいま戻りました」

「お疲れ様。礼儀の正しい子は好きよ、早く寝てしまいなさい」

「そうします。ギルド長さんは朝までここに?」

「そういう仕事だもの、もう慣れたわ」


 なるほど、100年近くやってるんだもんな。年齢は禁句だった。


「そうですか、それでは失礼します。開門の時間に兵士の人が呼びに来るそうですが大丈夫でしょうか」

「ミーコに伝えておくわ……稼いだの?」

「蠍を倒したんです。これで防具が買えます」

「そう、いいことだわ。がんばりなさい」


 品の良い笑顔だ、メインヒロインかと思ったら前作のヒロインだったでござるの巻でなければどんなによかったことか。別れて階段を登っていく。

 部屋に着くと服を脱いでベットにもぐりこむ。変な時間に起きたからしんどい……寝よう。

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