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彼女をチームに誘う

作者: WAIai
掲載日:2026/08/13

「…あの娘、何?」

「え…。あ…知らない」

駅を歩いていた沢は、帰宅途中のOL達の話を聞き、そちらに目を向ける。

すると10代後半くらいの少女が、ロータリーに座っていて、目立つのだった。

顔は美人な方だが、着ている服が秋なのに、半袖姿だった。

沢は気になり、改札を通ると、少女の元に向かう。

その前に、酔っぱらったサラリーマンが、少女に絡む。

「ーお姉ちゃん、俺と遊ぶ?」

「いいけど、高いよ」

普通に喋っているようなのだが、沢にはか細く聞こえた。

しかもサラリーマンを相手にしようとしているので、沢は放っておけなかった。

「ーおい、おっさん。それ、俺の彼女」

胸を張り、攻撃的に言うと、サラリーマンは睨んでくる。

「何だ、お前。邪魔だ」

「邪魔なのはおっさんなんだよ」

沢はキックを繰り出すと、サラリーマンが痛がって、うさぎのように跳ねる。

沢としては、これから仲間と遊ぼうとしていたところで、出鼻をくじかれた気分だった。

「くっそー!! 覚えていろよ!!」

「覚えているか、バーカ」

逃げるサラリーマンに、バイバイと手を振り、沢は少女に近づく。

少女はふふと笑うと、艶かしく言ってくる。

「私と遊ぶ?」

「遊ぶわけがねーだろ」

そう言うと、沢は少女の頬を引っ張る。

かなり怒っていた。

「自分を大事にしろ。変な大人のいいなりになるな」

「そんなこと言われても…」

「何? うち、どこ?」

「ない。帰る場所なんかない」

その言葉だけははっきり聞こえ、沢は自分と同じ匂いをかぐ。

「親と仲が悪いのか?」

「親…? そんなもの…いたかしら?」

また不思議なことに、ふふと笑うが、沢は怒って髪を引っ張る。

「痛っ!!」

「ほら、痛いだろう? 無視して平気なふりをするな」

「…ごめんなさい」

そう言った彼女は、幼子に見えて、沢はますます放っておけなくなった。

別に正義感が強いとか、そういうのじゃなくて、何となく彼女を放っておいたら、まずい気がしたのだ。

その通り、彼女はふいと顔をそらすと、独りごちる。

「ー私なんか、どうでもいいんだ」

「…」

その台詞だけは、沢も痛いほどよく分かった。

自分も複雑な家庭で、自分だけ兄弟の中で愛されていなかった。

問い詰めることはしないが、無視している状態で、金だけは、いつも用意してあるので、夜、ふらふらと歩くのだった。

「俺が嫌だって言ったら?」

「え…?」

少女はとても驚いたらしく、沢の顔をようやく見てくる。

母親似の狐顔というか、見ようによっては、美男なのだが、母親の愛情を知らないので、似た顔が沢は嫌いだった。

どうせなら、男らしい顔のほうがいいと思っていた。

「俺が嫌なんだよ。その…自分で自分を傷つけるのが」

「…。変わっているのね」

「お前に言われたくない」

沢ははっきり言うと、彼女の服を素早く見る。

綺麗に見えるが、所々、汚れているらしい。

お風呂に入っているのかも、分からなかった。

「ー俺のところに来るか?」

「え…? あなたのところって…」

「俺のチーム。俺はヤンキーなの。しかもリーダーをやらせてもらっているんだよ。これでも信用と信頼はあるんだよ」

「ヤンキー。…なるほど」

少女は呟くと、沢の手を取る。

沢は白い手にびっくりしたが、儚げな彼女には、似合っていた。

「私、生きている?」

「…。生きているに決まっているだろう?」

子どもをあやすように、ぽんぽんと頭を撫でてやると、少女は初めて年相応の顔を見せてくれる。

「決めた。あなたのところへ行く」

「よし。じゃあ、約束だ。2度と私なんかって言うな。あと、自分を傷つけないこと。分かったか?」

「はい。よろしくお願いします」

少女は軽く頭を下げると、ゆっくりと立ち上がる。

女としては長身ほうで、綺麗にすれば、美人の部類だった。

ー俺の女になったりして。

ふと思ったが、先は見えない。

とりあえず徳を積んでおこうと、彼女を助けることにしたのだった。

「よし行くぞ。ほら」

手を差し出すと、少女は可愛く首を傾げる。

「何…?」

「何って、手を繋ぐんだよ。その、一応、逃げられないために」

そう言うと、少女がおかしそうに、くすくす笑う。

沢も自分で何を言っているんだと、1人で突っ込み、仏頂面になる。

「いいから、ほら」

「はい」

少女は素直に手を差し出すと、ぎゅっと握りしめてくる。

「放さないからな。分かったか?」

「はい、分かっています」

言葉に力が入ってき、瞳が輝くようになってきたので、生気を取り戻したかと、沢は一安心する。

「名前、何て呼べばいい?」

「名前…? …じゃあ華で」

「華な。これから俺のメンバーと会わせるから、もう暗いことを言うなよ。皆、それぞれ傷を背負っているんだから。いいな?」

「はい。誓います」

「よし。じゃあ行くぞ」

沢はぐいぐいと少女ー華をリードしていくと、秋の乾いた風が吹く中、足音を高くして進むのだった。


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