第4話 やさしい嘘の結末
--3日前
--フタバとユウヤのバイト先のコンビニ--
--またあの女だ・・
「ねえ、ユウヤ、あのお客さんと仲良いよね?」
「なにもないよ?おれが好きなのはフタバだよ」
「気ぃ利きすぎなんだよ、ユウヤは」
--悲しい目をするユウヤ
「・・イヤなの?」
「イヤじゃないけどちょっとだけイヤ」
--強がるフタバ。
「ちょっとだけイヤなの?」
心配そうに覗き込み、優しく近づくユウヤにそっと身を預ける。
--「いらっしゃいませ~」
ユウヤはすぐ行ってしまった。
--朝のキッチンにて--
「フタバさん、おいしいって言ってくれますかね?」
「大丈夫だよ。おいしそうにできたし、ほら、元気出して!」
「ありがとうございます。俺、フタバさんの事、ほんとに好きなのに、信じてもらえなくて、最近ケンカばかりで・・」
「フタバはたぶんわかってると思うよ?
たぶん特別扱いされたいんじゃないかな?
あの子、あんまりわがまま言わないでしょ?
子どもの頃から手がかからなくて、育てやすかったんだけど、色々1人で考えてたんだと思う。」
「そうかもしれません。いつも俺の味方してくれて、あまり好きじゃないラーメン屋さんとかにも付き合ってくれます笑
ラーメン屋なのにフタバさん、いつも餃子定食頼んでるんですよ」
「だからね、ユウヤ君が自分の為にプリンを作ってくれたなんて知ったらめちゃくちゃ喜ぶと思うの!大丈夫!」
--嬉しいなあ、フタバにあんな素敵な彼氏ができるなんて。
マサミ「ねえ、1個食べてもいい?」
ユウヤ「いいですよ笑。でもダイエット中じゃなかったでしたっけ?」
マサミ「ちょっとくらい大丈夫でしょ。こんな気持ちが入ったプリン、今日しか食べられないから」
ユウヤ「今日のは砂糖多めですけどね笑」
マサミ「んー?なんか言ったぁ?笑」
ユウヤ「ありがとうございます。今のでちょっと元気出ました笑」
--PM17:00--
「おつかれさまでした!」急ぎ足で店を出るフタバ。
「そうだ、遅くなるって連絡しなきゃ。連絡するの、お兄ちゃん、でいいか・・。」
--PM19:30--
「ただいま~」様子をうかがいながら玄関のドアを開けるフタバ。
--誰も出てこない。
『ガチャッ』
部屋のドアを開ける。
ユウヤ「あ、フタバ・・よかった。帰ってきた。」小さくつぶやく。
フタバ「えっ?なに?」
ユウヤ「なんでもない」
フタバ「ユウヤ、あのね、ミサの家行ってて、一緒にクッキー作ったの。食べてくれる?」
--予想外の言葉に理解が追いつかない。
ユウヤ「え?」
フタバ「よく考えたらさ、私ユウヤに色々してもらってばっかりで何もしてあげられてないなって・・」
--色んな感情が交ざっていた心が、ゆっくりほどけていくのを感じた。
ユウヤ「そんな事ないよ。俺はいつもフタバから元気もらってる。こないだは、悲しい顔させちゃってごめん」
フタバ「ううん。私が悪いの。考えすぎちゃっただけだから。気にしないで?」
ユウヤ「うん・・」
--・・
フタバ「私ユウヤの事、誰にも負けないくらい大好き。いつもありがとう」
照れくさそうに笑いながらクッキーを差し出すフタバ。
--心に明かりが灯ったようにあたたかくなる。
『ありがとう』
母にいわれたあの日の事を思い出す。
でも今の「ありがとう」は、とってもあたたかい。フタバが笑ってくれているからだ。
--自分に向けられた笑顔って、なんでこんな気持ちになるんだろう。
--大丈夫だよ。
--ここにいていいよ。
--あなたはあなたのままでいていいんだよ。
ただ、存在している事自体を受けとめてもらえるような・・。
--俺は、ずっとそれを求めていた。
--やっぱり俺の居場所は・・ここだ。
ユウヤ「おいしい・・」
涙を隠しながら食べたクッキーは少しほろ苦かった。
フタバ「よかった~」
ユウヤ「そういやさ、今日おかあさんがプリン作ってくれたんだ。一緒に食べよう?」
--フタバが笑ってくれた。
--俺の為にクッキーを作ってくれた。もう、それだけで十分だ。俺が作ったとは伝えずに2人で食べた。
フタバ「ん?・・いつもより甘いね?めっちゃおいしい!おかあさん、砂糖入れすぎたのかな?でも私、こっちの方が好きだな。」
--味わうように食べるフタバ。
--俺はこらえきれずその場を離れ、1人で泣いた。
--俺はもう、フタバを悲しませたりしない。
--そう心に決めた夜だった。
『ユウヤ君、フタバを頼むぞ。』
おじいちゃんだ。仏壇の前で、プリンをほおばりながら優しく微笑んでいる。
--ミツハが仏壇に2個置いた。お父さんが1個食べた。お母さんが1個食べた。
やさしいウソを重ねた家族は、その日
誰も傷つかない選択をした。
この家族はこれからも
きっと、やさしいウソを選ぶ。
--おわり--




