第3話 お父さんの秘密
--プリンのナゾは解けないまま夜が更けた。
--仏壇にプリンがお供えしてあるのに気づくマサミ。
「・・え?プリン、2個もある。なんで?」
トメに聞く。
「おばあちゃん?プリン、おじいちゃんにお供えしたの?」
「知らないよ?」
考えるように上を向くトメ。
「2個あるんだけど・・」
「あぁ、思い出した。ミツハがお供えしてたんだよ」「おじいちゃん、プリン好きだったよね」「って、ミツハとおじいちゃんの2人分。」「優しい子だね、ミツハは・・」
--言葉に詰まるマサミ。「え、あのミツハが?あの子、プリン好きなのに・・」
--ミツハは好きな物が夕食に並ぶと、人の分まで食べてしまう。
「おじいちゃんが、おいしそうにプリン食べてるところを、思い出したみたいでね。ほんとに優しい子だよ、あの子は。私の自慢の孫・・」
--マサミはミツハに問いただす事はせずに、1人で泣いた。
涙を拭きながら・・
マサミはふと思った。
・・あれ?
今日、消えたプリンは4個。
仏壇にあるのは、2個。
--ミツハが置いたのは、2個
--じゃあ、残りの2個は・・?
胸の奥に、
さっきまでとは違う種類の違和感が残った。
怒りでも、悲しみでもない。
――計算が、合わない。
--どういうこと・・?
--布団に入り、いつものダイエットYouTubeを見る。
ふと目を落とすと、見慣れた顔がある。
「え!?お父さん!?」
--訳がわからない状況に思わず声が出そうになる。
『妻の手作りプリン食べてみた』
『サトシちゃんねる』
「え?!お父さん、YouTubeやってるの?!」
再生してみると・・
『おいしそうなプリンがありました~、食べてみようと思います~』と満面の笑みで食べるサトシの姿。
「ぷっ・・あははっ!ちょっと待ってぇ-笑。やばい、笑いすぎてお腹痛い、ぷっ、ははははっ!」
笑いが止まらないマサミ。
「え!?あははっ!なんで!?あははっ!」
『--コンコン
「失礼します、え?お父さん、何してるんですか?!」』
--ユ、ユウヤ君?
「え、え、なんでもないよ、久しぶりだね、」慌ててプリンを隠すサトシ。
--やばい、こんなの知られたら恥ずかしすぎる・・
「え、どうしたんですか?お久しぶりですね・・て、プリン?カメラ?」
--やばい。気づかれた、か?いや、まだいけるか・・
「な、なんでもないよ。ひ、ひぃさしぶりだね。フ、フゥタバとは、うまくい、いってるのか?」
カミカミのサトシに思わず笑ってしまうユウヤ。
「笑・・てか笑、ちょっと声聞こえちゃってたんですけど、お父さん、もしかしてYouTubeしてます?」
--思わず目を見開き、焦るサトシ。
--バ、バ、バレたー。目が泳ぐ。
白状するしかない・・。気づかれるまで続けようと思っていたが、やっぱり恥ずかしいもんだ。
ひと呼吸置き、覚悟を決めたように
「う、うん、やってるよ・・。けど、知られたくないんだ。ユウヤ君には知られてしまったけど、内緒にしてくれるか?」
「わかりました」
--プリンを見つめるユウヤ。
マサミは思った。
--ていうかなんでお父さん、YouTubeなんかやってるんだろう・・
笑っているのに、なぜか胸の奥がじんわり痛む。
『概要欄 単身赴任が思ったよりさみしくて家族に気づいてもらえる日まで動画を上げてみます』との文字・・
「え、お父さん・・なによ、さみしいなんて、ひと言も言ってなかったじゃない」
--チャンネル登録者4人。何本が動画がある。再生してみる。
『メントスコーラやってみた』
単身赴任先のおふろ場でひとり、メントスコーラをするお父さん。噴き出すコーラ。慌てふためくお父さん。再生回数3回。めっちゃおもしろい。
次の動画、『さみしくなってきた』
家族と離れ、さみしくなってきたのか近況を語るお父さん。「え、やだ、なに・・」
次は、『子ども達への想い』
なかなか聞けない子ども達への想いが語られていた。
「え、泣きそう・・」
次、『私の仕事』
飲食系の仕事をしているサトシ。お客さんの「おいしい」を聞く為にがんばっているらしい。「うん、そういう優しいお父さんを好きになったんだよね、私」
最後、『お母さんへ』
「お母さんへ、いつも家事、育児、おばあちゃんの世話をしてくれてありがとう。任せっきりでごめんなさい。なかなか言葉に出して伝えられないけど、いつも心の中で感謝しています」
「グスン・・やだ、お父さん・・」
次から次へと涙が溢れてくる。
しばらく泣いた後・・
「あー、何か今日、感情がジェットコースターみたい・・」
と、お父さんのYouTubeを、そっと心の中に閉まった。
--プリンは仏壇に2個、お父さんが1個食べて、残りは・・
つづく--




