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第3記-記憶書庫とは-

語彙力を分けてください。

死んだというのはこの女……いや、遠鳴司書(仮)の捏造話(ジョーク)などではなく、どうやら本当のことであるらしかった。


と言うのも、彼女は記憶に干渉でき、他にも特殊能力とでもいうべき代物を見せられてしまった。

それにより有無も言わさず納得させられた。



普通なら何かしらのトリックを疑う所だが、目の前で思考を読むだけでは無い、それこそ超常の類を見せられてしまっては納得するしかないだろう。


チョロいと言われてもそれを受け入れるだけの覚悟はある。


しかしだ。


目の前で本が一人でに動くのを見てしまっては、少なくともここが現実じゃないと理解できるだろう。


某イギリスを舞台とした映画化小説が地球という科学の世界で現実化するのは数百年後くらいではなかろうか?


特別リアリストという訳ではない私にとってはもうそれだけで、ーー世界が異なるという証明にーー十分な論拠になり得た。


「それで?私は何故死んだにも関わらず、こうして意識を保っていられるのでしょうか?

それとも死んだら一生……いや生きてないから……

ーーーずっとこの状態が続くのでしょうか?」


「いやいや、いつまでもここに留めておいちゃ悪いからね。

二ヶ月経てば、強制的に記憶は漂白されて輪廻に帰るよ。

まぁ、強制的に消す時は壮絶な痛みのあまりに発狂するらしいけど。」


最後に不穏な言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


ともかく、起きてから数時間の内に分かった事をまとめると、ここは一部の死者が行き着く場所であり、そこでは彼らが記憶書庫の司書として、作家として働いている場所であるということらしい。


……ついでに言うと、遠鳴司書はあの自己紹介の後私の見間違いを疑うくらいには軽薄な調子に戻っていた。


「そうだ、本題を忘れていた。

これから君には自分の人生を振り返ってもらう」


どういう事だろうか。




「何。単純な事だ。過去を思い返せば良い。

後はこちら側の領分(都合)だしね。

……そもそも君が輪廻の輪に帰れないのは、君がそれを拒否したからだ。

拒否してもすぐに転生というのは、年月問わず本気で生き抜いてきた君たちに対する冒涜というか、非情というか…

ーーという訳で、情が山よりも高く海よりも深い、上の判断とか諸々の事情とかで最後に叶えて欲しい願いを聞くんだがッ、稀に、本当にごく稀だけれどここでしかできない願いを吐露するのが一定数いるんだ。


まあ、とは言っても、その願いは妥当ではあるけれどね。

少なくとも私は理解できる。」



「その……願いとは?」


こう続いた。


ああ……。

名を刻みたいのさ。

自分という存在が何も残せずに忘れ去られることが嫌だから。

不必要だという烙印を押されたかのように感じるそのことがなんともまあ心残りらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まあ、こんな思い誰しもが共有できる訳でもないが……


そう言っていた。

しかし理解は出来る……確かに私は理解できた。


「いえ……。少なくとも私は納得しました。

私がここにいる理由を。

私がここにいなければならない理由を。

そして私が何故過去を思い出さなければ……思い返さなければならないのかを。


……ならば此処にはそのヒントがある、ということでしょうか?」


「おっと残念。確かにここにいるのは君の記憶を精査する為ではあるが、思い出すことに繋がる直接的なヒントは何一つとして無い。」


君が見るのは、見るべきなのは、ここにある大量の本だ。


そう言った直後だった。

後ろから現れたのだ。とんでもない奥行きの、とんでもない高さの、蔵書数を推し量ることすら不可能と思えるほどの大図書館が。


絶句。



しばらく経って問う。

「これは……?」

いや、それはきっと疑問形としての形を成してやいなかった。


しかし返答が訪れる。


「驚いたかい?

これはここに来た、これまでの人々の歴史上の表裏(おもてうら)。君が知っているかも知れない偉人も、どこにも名前なんて残っちゃいない凡人も、ここに平等に、公平にその足跡を刻んでいる。

遺している。

著者は私のもあれば、別の作家に任されたやつもある。そう、千差万別。

つまり君が見るべきは、君が重ねるべきは、彼等の物語、その一小節(一小説)だ。」


訳がわからない。

いや、分かる……ような気がする。


そうか。つまりは没入しろということだ。

物語への没入。

感情を重ねること。経験を重ねること。


そこで表出させた……私の価値、私についての書くべきものを綴る。


きっとそういうことなのだろう。


「とりあえず、そこにあるやつを。

そうだ何でもいい、読んでいってくれ。

私の役目はそれを書き留めていく。それだけなのだから。」


読もう。きっとそれが正しいことなのだから。

私は私がするべきことを行なった。




………

……


待ち構えていたもの、それは驚愕だった。

こんなものが世にあって良いのか。

そう思うほどに。思わせるほどに衝撃的。

気づけば泣いている。心が動いている。

そんな物語がここにあった。


「いや〜。ありがとう。君は本を読むスピードが他とは違うね。

その調子で読んでいったら明後日には……」






「私をここで働かせてほしい。」



私の口はそんな言葉を紡いでいた。

文法構成能力をください。

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