追放されるので、私は手紙を送った
──お前を国外追放処分とする。
それが魔法使いリーシェに対する最後の言葉だった。
この国唯一の魔法使い。そして王子の婚約者。
なんていう肩書きで持てはやされても、状況が一変すれば全てを失ってしまう。
此度の婚約は、陛下からの直々の命令——だったとしても、彼の権力はそれら全てを凌駕していた。
それだけの力があった。
国内最強とも称される剣術使い。
やれ剣聖だの、剣王だの。
無類の強さを持つが故に、様々な異名をつけられ、周囲からは持ち上げられた。
婚約以前の殿下の姿を、リーシェは知らない。けれど想像には難くなかった。
自信を積み重ね続けた殿下は、やがて驕りとなって周囲に対しても、その影響は顕著に現れ始めていた。
傍若無人な振る舞いで、あっさりと切り捨てられ、リーシェはすでに用済みに。
殿下にとって見れば、路傍の石程度にしか思われていなかったのだろう。
けれどこうなることは薄々勘付いていた。
代わりとなる魔法使いも殿下が直々に呼び寄せ、そしてすでに——その彼女にご執心なことも分かっている。
力量は不確かで、周囲からは魔法使いと呼称するのも憚られた。
今後どうなることやら、と先が思いやられる陛下の苦心は察する。
けれども、もういいのだ。
殿下との婚約はダメだった。それだけの話。
これ以上想い続けていても、彼にとって迷惑に感じるだろう。
だからリーシェは、この国を去る前に、殿下に向けてこんな手紙をしたためた。
“あすにはすべて終わりを迎え、真実は何も分からない。
なにも知らない貴方が、その真実に気づくことができたのなら。
たくさんの幸せを二人が手にすること間違いないな。
私のそんな愚痴話を聞いて、皆が笑っていた光景は今でも忘れられない。
よろしければまた来世でも、お会いできるのを楽しみにしておりますわ。”
そして半年後。
内密にこの地に足を踏み入れたリーシェは、こんな話を耳にする。
王子は今も、行方知れずのままであると——
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