表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

2 歯車の乱れ

歯車が噛み合う音が工房に響く。「ゴン、ゴン」一定のリズムで回転している。

奥で、誰かがハンマーを叩く音。「カン、カン」と金属が振動する。

時折、蒸気が勢いよく吹き出す。「シューッ」と、機械が息を吐くように音を立てる。


グリは職場の工房にきていた

工具を手に取り、歯車のかみ合わせを入念に確認する。

指先で金属をなぞる、少しざらついた感触だ。

潤滑油を静かに差し込むと、ギアは滑らかに動き始める。

巡回機械のパネルを開き、中の機構を覗き込む。

歯車が回転する音を聞きながら、異常がないか注意深くチェックする。


いつも通りの慣れた状況だった。だけど。

仲間たちの空気が、どこか重い。

作業の手は問題なく動いている。工具の音も変わらない。

でも、会話は短く、どこか余裕がない様子だ。

グリには心当たりがあった。

遠征のことだろう。


工具を持ったままのグリに近づき、だれかが軽く肩を叩く。

グリは一瞬工具を握る手を止めた。

ヴェン: 「昨日は飲みすぎたみたいだな。」

グリ: 「……まあ、大丈夫。」

ヴェンは隣の機械に寄りかかり、しばらく黙る。

そのまま工房の音を聞きながら、視線をグリに向ている。

ヴェン: 「で?どう思ってる?」

グリ: 「決まったことだろ。仕方がないのさ。」

工具を握る手が少し強くなる。

油を差しながら、無意識に歯車をじっと見つめる。

グリの横顔を見ながら、ヴェンはわずかに笑った。

ヴェン: 「真面目だな、お前は。」


グリはそれに返事をしない。

ただ黙って、歯車に油を差す。

決まったことだから。仕方ない。それがルールだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ