1話 99/100
空が赤く燃えている。夕焼けではない。街を業火が包み、その景色を空が映し出しているのだ。
神楽木一稀はすぐそばで倒壊しているビル群から走って避難すると,まだ火が回っていない公園の角で息を整えた。空から紫がかった白熱光線が降り注ぎ、建物を破壊し道路を焼き尽くしている。
「いきなりどうなってんだよ…」
空を見上げて呟く。ちょうど見渡す限りの空に飛行船のように見える得体の知れない巨大な何かが3隻浮かんでいた。白熱光線はこの飛行線の側面あたりから出されているようだった。それらはゆっくりと移動しながら街を破壊していた。
「きゃあぁぁあ!」
悲鳴がすぐ近くで起こった。声の方に目をやると,恐怖のあまり屈み込む女子生徒の上から砕けて尖ったビルの破片がちょうど降り注ぐ瞬間だった。一稀は颯爽と走り抜き,女子生徒の前にかがみ込むとひょいと抱き上げ、間一髪で助け出した。
あれ?オレかっこいい?
さっきまで女子生徒がいた場所には学校の机ほどの大きさのコンクリート片が降り注ぎ山を作っている。オレが助けていなかったら今頃あの下敷きになってしまっていただろう。
「大丈夫ですか?」
そう聞いて女子生徒の顔を覗いて口ごもる。一稀は彼女のことを知っていた。
社美玖。オレの片想いの相手。
「ありがとう」
美玖が言った。一稀は驚いてただ彼女の顔を見つめるばかりだった。
オレが、美玖ちゃんと会話できてる?!しかも今、お姫様抱っこしてる??
不思議そうな目で美玖は一稀の顔を見ると、
「ちょっと、下ろしてくれる?」
と言った。一稀は我に帰ると、
「ごめん」
と言い彼女を腕から下ろした。スラリとした美脚が荒れ果てた大地に着陸する。今この瞬間も頭上を白熱光線が飛び交いあちらこちらで爆発が起きているが、それも気にならないほど一稀にとって社美玖は美しい存在だった。
見惚れている一稀の腕を離れて美玖は地に足をつけ立ち上がり、振り返ると一稀の顎にそっと手をかざして顔をその顔に近づけて、
キスをした。
唇が離れる。一稀の情けない表情に美玖はクスリと笑うと、
「ありがとう。私を助けてくれて」
と言った。
え?美玖ちゃん?!
一稀の頭は幸せに包まれ、真っ白に染まって盲目になった。視界を取り戻した時、目の前にはすでに撃ち放たれた白熱光線が美玖めがけて飛んできていた。
「危ない!」
一稀は美玖を抱きしめ駆け出そうとしたが、光線から逃れることは不可能だった。
ダメだ。間に合わない…
白熱光線が美玖と一稀を貫き、蒸発させた。
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「ミク!」
叫んで飛び起きる。あれ、オレはさっき死んだはずじゃ…
暗い部屋。ベッドの上だ。寝落ちする直前まで触っていたスマートフォンが側に投げ出してある。
なぁ〜んだ。夢を見ていたのか。
スマホで時間を確認する。午前3時。まだ十分寝れる。
一稀は布団の中に戻っていった。
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あぁー眠ぃーなぁ。
一稀はペン先を見つめ続けていた。地理の授業を受けているはずなのに、一向に内容が頭に入ってこない。
昨日の変な夢のせいだろうか?それにしても昨日はあんなもの見ちゃったからなー。これが夢じゃなけりゃどんなにかいいだろ…
「どうした一稀。よだれなんか垂らして。」
先生に言われてハッと気づく。イケナイ!変なことを考えていたようだ。
「体調が悪いのか?」
「いえ、大丈夫です。なんでもありません。」
「そうか。あんまり驚かせないでくれよw」
先生は軽い口調でそういうと、また語学のうんちくを語り出した。
しっかりしなきゃ。オレは頬を叩いて気合いを入れると黒板の文字をノートに書き写しだした。途中、不自然な視線を感じて隣を見る。あずまがこっちを向き、口パクでこう言っていた。
「思春期」
呆れて首を大きく回す。あずまは小さく笑ってまた前を向いた。
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来やがったな、あずま。
「いつきー。まぁーた美玖ちゃんのこと考えてたな?」
「あぁ、まあな。」
「ほんと大好きだなおまえ。なんで結婚しないんだ?」
「飛びすぎだわおまえw まだ付き合ってもねえしまともに話したこともねえよ。」
「奥手だなぁー。話しかけてこいよ。」
「んなこと言われても…」
そう言って一稀は、廊下から隣のクラスを覗く。いたいた。
社美玖、ちゃん。やっぱ今日もかわいいなー
「口にもう出てるぞw」
あずまに冷やかされる。無意識にかわいいって言ってしまっていたらしい。
「まあ確かに顔、整ってるよな。でもまあなんと言うか、オレらみたいなやつらには高嶺の花のような気がするんだよな」
言いたいことはよく分かる。ただ、美玖は一稀が人生で初めてここまで真剣に、しかも一目惚れで好きになった女子だった。そう簡単に諦めるわけにはいかない。
教室の中の美玖は机に座り、前の席の女子生徒とお喋りをしていた。あんまり熱く見つめすぎたのか美玖は一稀の方を向いた。気づかれた。
美玖はしばらく一稀のことを見つめると、照れ隠しするかのように目を伏せ、お喋りを続けた。
「かわいい…」
驚いて隣を見る。あずまも美玖を見つめていた。一稀は苦笑した。でも同時にこう思う。
あずまより先に社美玖に話しかけてやる。友達になって、それからどんどん距離詰めていってオレの彼女にしたい!
始業のチャイムが鳴った。
こんにちは〜 主でーすー
他サイトでも読まれていない+なろう&ファンタジー系初心者なので暖かく見守っていただけると嬉しいです。
文章がめちゃくちゃ下手ですが力尽きるまでよろしくお願いします。