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面倒くさがりと世話焼きがただいつも通り過ごすだけ。

作者: 渚ナギサ

タイトル通りの内容です。それ以上でもそれ以下でもない内容ですが、読んでくれたら幸いです!

ちなみに私は家政婦とかほしいタイプの面倒くさがりです。

 うたた寝から目を覚ますと、目の前に三年間使ってきたストーブがあった。その向こう側には赤いこたつ。私が寝ていたソファの背後の方には飾りの少ないクリスマスツリーが置いてあるはずだ。この空間にいるだけで冬を味わうことができるだろう。……冷房をガンガン使ったらの話だが。現在は七月上旬、この部屋は季節不相応の家具しかない。

「あのさ、少しはこの部屋片づけようと思わないの? 見るだけで暑い部屋だよ」

 数分後、遊びに来た中学生時代からの親友、あずさがため息交じりに言った。フレームの細い眼鏡をかけ、髪を固く結び、これから出勤してもおかしくないようなフォーマルな服装をしていた。

 私とあずさは長い付き合いになるのだが、正直ここまで長い関係になったのは家族以外ではあずさが初めてだ。私とあずさでは多くのことが正反対なのに、ここまでの中になったのは不思議なものだ。

 あずさは言うなり私の返答を待たず、地面に捨てられてある大量のセーターやコートを一つずつ引っ張り出し、とても綺麗かつ素早い手つきでたたみ始めた。

「片付けようと思ったさ。ただ気分が乗らなかっただけで」

 てきぱき動く彼女を傍目に、私は言葉を返す。一応本音なのだが、あずさは怪訝な目で私をちらりと見、また作業に戻った。

 しばらくすると、部屋は私のとは思えないほど整理整頓されていた。冬仕様の家具はどこかに消え、やや殺風景ともいえた。

「とりあえず、今要らなさそうなのは押し入れに入れといたから」

 あずさは来たばかりの頃とは比べ物にならないほどまぶしい笑顔で言った。

「ありがとー」

 私はお礼を言う。ほかの人に部屋を片付けられるのはあまり好きなのではない。だが、あずさとは長い付き合いだからなのか、あまり気にならなかった。そもそも私は掃除をしようと思っても手が進まない性質だ。こうして気の置けない仲である人に掃除してもらうのが一番楽でありがたい。

 目の前にはこたつの代わりに、数年前に買っていた別の机が置かれていた。その上にはあずさの大掃除から生き残った物が隙間もなく並んでいた。そしてその中に、長らく行方不明だった豚の貯金箱があった。

「おお、これは。いつの間にかなくなっていた貯金箱だ。ずっと探してたんだけど、見つかったんだねえ」

「普通に服の山に埋もれてたんだけど」

 中学の頃、かわいいと思って買った貯金箱だ。それから五百円玉を手に入れると豚に入れたり入れなかったりした。……とにかく、飽き性な私にしてはそれなりに長く続いた方である習慣だった。一人暮らしを始めてから半年くらいでどこかに行ってしまい、盗まれたのかと心配になったものだ。

 貯金箱に手を伸ばし、中を見てみた。すると、金一色の硬貨が十枚くらい、甲高い音を鳴らしながら出てきた。突然の収入だ。

「今日はこれでなにか食べようかな……」

 これくらいあれば食事にでも行けそうだ。

「そうか。それはいいな。お前いつもカップ麺ばかり食ってて栄養偏ってそうだし。たまには普段食べないようなものでも食べたらいいんじゃないか?」

 あずさは、今度は帰り支度をしながら答えた。遊びに来たつもりだったあずさは片付けに時間をかけ過ぎて、結局掃除をしただけになってしまった。……だが、このまま帰られては困る。

「え、あずさも行こうよ」

 私が言うと、あずさは手を止め、見開いた眼でこちらを見た。

「え、なんで?」

「まあ、理由はいろいろ。部屋の掃除してもらってお礼したいし、申し訳ないって気持ちもあるし、単純に一人で食べるよりもあずさと食べたほうがおいしいだろうし。……まあ、おごって優越感に浸りたい、みたいなのもあるけど」

 正直に告げると、あずさは微笑み、

「……わかったよ、でも次一緒に食べるときは私がおごる」

 と言った。また、

「それで、なにを食べに行くの?」

 と続けた。……そういえば、今食べたいものは特になかった。なにかを食べに行きたいが、それを決めるのは面倒くさい。そういう時は、あずさに頼るのが一番だ。

「なんでもいいよ。あずさが決めて!」


 その後、私とあずさは焼肉を食べに行った。行ったのだが、あずさは常にトングを握り、私は箸を手放すことはなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒頭で主人公のズボラな面が、すぐに把握できるところ。 [気になる点] 主人公は女性ですか?あと、何歳くらいなのかも気になりました。 あまりに不精な主人公なので、あずさちゃんは何が良くて親友…
2024/06/27 11:25 退会済み
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