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10/2 Wed その1

10/2

「席についてーホームルーム始めるよー」

アロが教室に入ってくる。

昨日はなんだかんだで早めに解散した。

不完全燃焼といえば、その通りなのだろう。

「連絡事項はこれぐらいかしら。あ、そうだピグラくんとソロさん、後で少しいい?」

アロはソロのことを外ではさん付けで呼ぶ。

家じゃ見ることのできないシーンだ。

「なんかやらかしたのか?」

「記憶にないけどな」

なんだろう、この前倒れたことだろうか。

でも、それなら呼び出さなくてもいいような。

「とりあえず行ってこいよ」

「そうだな」


「アロ、ピグラくんお願いがあるの」

「お願い?」

「再来月の演奏会に出てくれないかしら?」

「演奏会……って村祭りの?」

「ええ、演奏会って毎回地区ごとのボランティアで募集してるの。それで次の順番が私たちのところなの」

「じゃあ俺たちじゃなくても募集すればいいんじゃないのか?」

「それがね……本当はもう締め切っちゃってるの」

「募集せずにか?」

「ええ。運営側の手違いでね、本来なら先月から募集をかけるはずだったんだけど……」

「募集をかけずに締め切りの日になってしまったと」

「そうなの!非常事態だし中止にしても良いと思うんだけど偉い人がね、自分の非を認めたくないみたいで」

「それでとりあえず5人集まったことにして通しちゃったの」

「俺たちに声をかけたのはその5人になってくれと」

「ええ。募集するのも手なんだけど上の人が色々と困るみたいで内密に集めて欲しいみたいなの」

「それで、二人は参加してくれるかしら?」

「私は構わないけど、ピグラは?」

「……俺は出ない」

「そっか……でも無理強いは良くないわよね。他に4人探してみるわ」

「ラビアはどうなんだ?」

「演奏できるの?」

「パーカッションの腕前はかなりある」

「ピグラくん、後でラビアくんに声をかけてもらってもいい?」

「まあ、それぐらいなら」

「助かるわ!もしラビアくんも参加してくれそうだったら放課後音楽室に集まるよう伝えておいてね」

「わかったよ」

「それじゃあ、私は職員室に行くわね。何かあったらすぐに言ってくれてもいいから」


「というわけなんだが、どうだラビア」

「うん、いいよ!」

要件をまだ話してないのに伝わったみたいだ。

「まだ何も話してないでしょ」

「演奏会に出るんだよね。俺も付き合うよ」

「盗み聞きしてたのね」

「ラビアはそういうやつだ。俺は出ないけどな」

「勿体無いよなー。ピグラが出たら絶対盛り上がるのに」

……演奏会に出たくないというわけではない。

「ピグラが人前で演奏って想像できないわね」

人前で演奏したくないだけだ。

「それもそうか」

「参加するなら放課後、音楽室に集合だってさ」

「わかってる」


放課後。

「というわけで、ピグラ行くぞ!」

「俺は参加しないって言っただろ」

「見学だけでもいいでしょ。先生ならOK出してくれるさ」

「……ソロも行くのか?」

「当り前じゃない」

「じゃあ……行くか」

ソロの演奏が聴けるかもしれない。

単純かもしれないが、動くには十分な動機だ。

「ちょろいなぁ」


「アロ、来たぞ」

「ピグラくんも来てくれたのね」

「最初からそのつもりだっただろ」

「ふふ」

「見学としてだからな。参加はしないぞ」

「わかってるわ。出ればいいのに」

適当な椅子に座る。

ソロたちはアロと打ち合わせをしてるみたいだ。

「ひとまず二人ね。あと三人どうしましょう」

「俺の方から友達に声かけてみようか?」

「やめとけ。大変なことになる」

ラビアには一定のファンがいる。

ラビアはファンたちを友達と認識しているみたいで、関わったらろくなことにならない。

「……私に友達なんていないわよ」

「親の前でよく言えるな」

「ピグラこそどうなのよ」

「いるわけないだろ」

ソロやラビアほど演奏が上手いなら友達になってもいいんだけどな。

「困ったわね」

頬に手を置くアロ。

しかし、何かを思いついたように俺の方を見てくる。

「ピグラくん、探してきてくれない?」

「は?」

「ピグラくん、音楽を聞く耳は確かじゃない」

「演奏会に出てくれそうな人を見つけてきてくれないかしら?」

「今、友達いないって言ったばっかりなんだけど」

「お友達じゃなくて良いのよ。ヘッドスカウティングしてきてくれれば」

「もっと難しいこと言ってないか?」

要するに、スカウトをして来いと。

「もちろんただとは言わないわ。演奏会を関係者席で聴いてもいいわよ」

「っ!」

「なんなら特別な席だって用意してもいい。練習の見学にも毎回来てもいいわ」

「これで、どうかしら?」

俺だって二人の演奏が聴けるんなら願ったりかなったりだ。

「交渉成立だ」

「ちょろいなぁ。これさっきも言ったか」

「ありがとう!ピグラくんならそう言ってくれると思ったわ!」

「でもどうやって集めればいいんだ?大々的にはできないんだろ?」

「そうね……演奏できそうな子に声をかけるとかかしら」

「なら明日、適当にうろついてみるか」

何もせずに演奏を聞けるとは思っていなかった。

参加させられるものかと予想していたが、別の仕事を貰えてありがたい。

「今日はどうするんだ?」

「ふふ、じゃあ演奏してもらえるかしら?」

「ええ、いいわよ」

「もちろん!」

「!」

今日にでも聞けるなら、それほど贅沢なことはあるだろうか。

「でも、ピグラはまだダメよ」

「えっ……」

「うわっ、すごい絶望した顔」

「まだ仕事してないでしょ?だからまだお預け」

「そっ、そこをなんとか!」

「ダメなものはダメ」

その後も駄々をこねてみたが、ソロに家へと帰らされてしまった。

こっそり聞きに行こうとしてもバレるのはなぜなんだ。

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