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10/1 Tue

10/1

終業のチャイム。

体を伸ばす。

昨日はいつもより有意義だった気がするな。

アヴィはお店に来てるんだろうか。

今日も寄ることにしよう。

「〜♪」

「ピグラ?機嫌いいわね」

「ちょっといいことがあってな」

「この前倒れてたとは思えないわね」

「いつまでも引きずるもんでもないだろ」

「確かにそうね。元気な方が良い」

「それじゃあ、俺はこれで」

「いつものとこ?」

「ああ、そうだな」

返事のために振り返ると

「あれ?ピグラくん?」

「え」

ホルンの人がいた。

「同じ学校だったんだね!」

「狭い村だしな」

「ピグラの知り合い?」

「……ってもしかしてアヴィ?

「え?そうだよ?」

「あれ?ソロ!?」

「ええ。帰ってきてたのね」

「うん!久しぶり!」

「なんだ、知り合いだったのか」

「私も二人が知り合いだったことに驚いてるわ」

「あの楽器のお店でホルンを弾いてもらったんだ」

「へぇ……ホルン」

「大丈夫なの?」

「うん!ちょっと難しいけど少しずつ慣れてきてるよ」

「そう……」

「ピグラくんはこれからお店?」

「ああ、アヴィの演奏でも聴きに行こうかと思って」

「え!いいの!じゃあ今日も行くね!急いでホルン取りに行ってくる!」

アヴィは小走りで去っていった。

「急がなくてもゆっくり行くのに」

「アヴィ、元気になったわね」

「そうなのか?」

「ええ。でも、私から話すことじゃないわ」

ソロはアヴィが去っていった方向を見つめる。

「あれ?今日もって言ってたかしら?じゃあ今日機嫌が良かったのって……」

「アヴィの演奏を聴いてたからだな」

「……私も行く」

「え?いつも迷惑になるからって……」

「今日は……いいのよ」

珍しいこともあるものだ。


「あれ?ピグラさん?」

ソロが荷物を取りに教室へ戻っている最中に話しかけられる。

「ゴラじゃないか。同じ学校だったんだな」

「知らなかったんですか?まあ、私が進んで話しかけなかったのもありますけど」

「待たせて悪かったわね。いきましょう」

ソロが教室から出て俺たちの元にやってくる。

「っ!ソロ先輩……」

「あっ……あの……その……」

「すみませんでしたっ!」

ソロの顔を見るなりゴラは慌ててどこかへいってしまった。

「さっきの子、ゴラ?」

「ああ、知り合いなのか?」

「知り合い……まあ、そうね」

「あの子も過去に囚われているのね……」

「過去?」

「そのうち話すわ。でもきっと今じゃない」

「今はお店に行くことだけ考えましょ」

「軽く聞ける話じゃないってことか」

「そういうこと。いつか、ゴラの心の整理がついたら、ね」

「ゴラだけなのか?」

「……気にしないで」

それ以上触れるのをやめ、楽器店へと足を向けた。


「いらっしゃい。あれ、ソロも来たんですね」

「良いでしょう?たまには」

「もちろん、構いませんよ」

先に来ていたアヴィは楽譜を一生懸命睨んでいる。

「まだ音がぶれていますね、安定するまで練習です」

「ー♪」

まっすぐな音が鳴る。ただ少し角度が深すぎる。

「ー♪」

今度は力みすぎだな。

「そうですね。この手を見ててください」

店長の身振りを基準に音を整えていくようだ。

確かに音は安定するようになるだろう。

俺は頭をカウンターに乗せて反対の方を見る。

「〜♪」

我関せずというように、ヴァイオリンソロを弾いている。

距離は多少離れているので直接音がぶつかることはないだろう。

「〜♪」

相変わらず一人では完成された演奏だ。

そう言えば俺以外の人と演奏をしているところを聞いたことがないな。

「なあ、アヴィと演奏してみてくれないか?」

「別に良いけど」

「アヴィ!ソロと一緒に演奏してもらっても良いか?」

「え?うん、いいよ!」

そんなわけで強引にセッティングする。

まだアヴィは難しい曲は無理だろうからずっと練習してた曲を吹いてもらうことに。

「ー♪」

……

なるほどな。

「ふぅ、ソロ!ありがとね!」

「別に……ピグラに頼まれただけだし」

演奏を通してわかったことがある。

「アヴィ、だいぶ上手くなったな」

「ついていくのにやっとだったけどね」

アヴィは特別大きな問題ではない。

練習次第でどうとでもなる問題だ。

「ソロ、相変わらず良い演奏をするな」

そう。いつも通りの演奏だった。

一人で弾いてる時と変わらず、完璧な演奏だった。

俺との時はもう少し丸い気がするんだけど。

「褒めてないでしょ」

「まあな。含めてソロだと思ってるけど」

「合奏って難しいのよね……」

気持ちはわかるけどな。

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