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11/24 Sun ソロの演奏会

11/24

演奏会当日。

何事もなかったかのように演奏会の準備はすすむ。

みんなも今日まで練習してきたのだから準備は万端だ。

「ピグラ、どこ行くの?」

「ルスリアに挨拶しといた方がいいのかなと」

「もう……私も行くわよ」

俺たちは並んで石碑の方へ向かっていった。


膝をそろえ、手を合わせ、目を瞑る。

ルスリア、もうすぐ俺たちの演奏会だ。

聞いててくれよ。

二人でお祈りをした後、俺たちは二人でキスをした。

ルスリア以外、誰も見ていない場所で。


そして

ついに舞台に立つ。

MCや司会などはなく、好きなようにしていいといわれている。

まずはつかみに一曲。

俺たちが最初に練習した曲を演奏する。

「ー♪」

俺は、みんなのために演奏をする。

一緒に演奏してくれるみんなのために。

あの日、気づいた演奏の楽しさを思い出すために。

……

ソロは終始無言だった。

……

…………

………………

「なあ、次が最後の曲になりそうだ」

「お願いがあるんだか、俺とソロに任せてくれないか」

「別にいいよ。アヴィちゃんとゴラちゃんは?」

「ここでも惚気るんだね。いいよ」

「構いませんよ」

「いいよな、ソロ?」

ソロは一つ頷く。


『2つのヴァイオリンのための協奏曲 第一楽章 ヴィヴァーチェ』

俺たちが最初に合奏で弾き切った曲でもある、思い出の曲。

ルスリアに届けるために。

俺はソロのことが好きだってルスリアに伝えるために。


演奏会が終わる。

ソロの姿が見えないな。

「ソロは?」

「あれ、さっきまでいたんだけどな」

なんだか嫌な予感がする。

俺はソロを探しに行くことにした。


ピグラは今日全然話さなかった。

何かを思い詰めるように。

もしかしたら、何か悩みがあるのかもしれない。

無理やり聞くのはよくないが、俺に解決できることがあったら手を貸そう。

そのぐらいに思っていたのに……


「ピグラくん!!」

すごい剣幕で名前を呼ばれる。

ここ最近聞かなくなった声。でも聞きなじみのあるその声。

「ルスリア……どうして?」

「説明はあと!!急いでついてきて!!」


連れていかれた先は、海が見える切り立った崖だった。

ソロは海を見下ろした崖の先に立っている。

ルスリアの姿はもう見えなくなっていた。

「ソロ、急にどうしたんだ?」

「ねえ、村への一番の復讐って何だと思う?」

「……ルスリアのことか?」

「ええ。当然」

俺はソロのもとに近寄れないでいた。

一歩でも踏み出してしまえば、飛び降りてしまいそうな緊張感。

「真実を語り継ぐこと、とかか?お偉いさんはビビるだろうな」

「そうね。私もそう思う」

「だから、再現すればいいんじゃないかって」

「そう思うの」

「……何を言っている?」

「私が、村祭りの中ここから飛び降りる」

「最初に見つけてもらった人を証人にするつもりだったんだけど」

「ピグラだったから、少し話したくなっちゃった」

「飛び降りるって、死んじまうぞ!」

「それでもいいの。姉さんは、それをわかってて飛び降りたんだから」

「ねえ、ピグラ」

「最後の演奏、楽しかったわ」

「最後ってなんだよ!これからも演奏すればいいだろ!」

「ううん。そういうわけにはいかない。私は今日をずっと待ってたから。決行するこの時を」

「決行って……やめるんじゃなかったかよ!」

「村の人たちの嫌がらせはね。ただ、本命はこっち」

「ピグラ、今までありがとう」

「これが私の生きてきた理由だから」

ソロのもとに近づこうと駆け出すと

ソロは両手を広げて

後ろに飛び降りていった


誰が見つけた 死骸を見つけた

それは私 とハエが言った

私の眼で 小さな眼で

私が見つけた 死骸を見つけた


俺は急いで飛び降りる。

もう一つ、浴衣姿の少女が目に入った。

……

…………

………………

俺は死に物狂いで、ソロを探した。

上下がわからなくなるぐらい無我夢中に。

酸素も足りなくなってきた。

それでも、大切な人をつかむために。

一人の少女の姿が目に入る。

浴衣姿で、女神様かと見紛うほどに。

少女は一つの光を指さす。

どんどん沈んでいく、ソロの姿だった。

俺は必死で追いかけた。

酸素なんて足りてない。

それでも必死に手を伸ばした。

今度は、突き落とさないって。

そう、覚悟を決めたから。

ソロをつかむと視界は、真っ白になった。


次に、目を覚ましたのは岩場の上だった。

ソロを膝枕した状態で、気を失っていたみたいだ。

「ソロ!」

ソロの肩を捕まえて前後にゆする。

「ん……」

「あれ……私」

俺はソロに抱き着いた。

「無事でよかった……!」

「私、は……」

ソロはまだ意識がもうろうとしているのか、目が覚めていないような感じだ。

ピーポ―ピーポー

誰かが呼んだのか、救急車のサイレンまで聞こえる。

今はとにかく、ソロが無事だったことに感謝しよう。


その時、一つ大きな波が俺たちを襲った。

救急車がたどり着いたのと、同タイミングだった。

俺たちは、水の中に再び引きずり込まれた。


再び目を覚ますと、病室の天井が目に入ってきた。

「目が覚めたのね」

アロが俺に声をかける。

どうやらソロも隣で寝ているらしい。

「何があったか覚えてる?」

「ソロが飛び降りて……それから……」

「ルスリアが俺たちを助けてくれて……」

「それからはわからないです」

「そう……」

アロの前でルスリアの名前を出しても驚かれない。

アロは優しくソロの髪をなでる。

「ルスリアはね。死んだのよ」

「崖から飛び降りて」

「でも、二人を救った」

「……う…うぅ……」

「私は、わかっていたのに何もできなかった……」

アロが泣いている。

俺はアロの涙を初めて見たような気がする。

「これから、何があっても二人を守るから」

「だから、今はゆっくり休んでて」

「……ああ」

再び目を閉じる。

何だか、疲れているみたいだから。

また、ソロと演奏できるその時のために。

俺は再び眠ることにした。


Fin

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