11/20 Wed ソロ
11/20
「なあ、ソロ」
俺は朝一番にソロに話しかけていた。
「すまなかった!」
全力で頭を下げる。
「ちょ、ちょっとピグラ!?どうしたの?」
「俺はずっとルスリアを見ていた」
「ソロの後ろでずっとルスリアの影を見ていたんだ」
「それはソロにとって不誠実でしかなかった」
「ピグラ……」
「それに、思い出したんだ。俺がヴァイオリンを始めた理由を」
「ソロの音に憧れて始めたんだ」
「え?」
「ルスリアが死んで、心が荒れてた時期にソロの演奏を聴いた。俺の心を動かすほど憧れていた」
「……そうなんだ」
「思い出したら、いてもたってもいられなかった」
「いいわよ。頭上げなさい」
「私もピグラの演奏が好きだったわ」
「ただ、この前の森の演奏でわかったの」
「この演奏は姉さんのためだって」
「それにピグラはいつも姉さんのことを考えてた」
「それで……言うのも恥ずかしいんだけど……」
「嫉妬しちゃってた」
「だからピグラが謝る必要なんてないわ」
「それでもっ」
「なら、私と別れる?」
「それは嫌だっ!」
「ふふっ、じゃあ許してあげるわ」
「でも……そうね、一つだけ。お願いがあるわ」
「演奏会、私は降りてもいいかしら」
「……え」
それはとても唐突で、俺の心を鋭く突き刺した。
「俺のせいか……?」
「半分はそうかもね」
「今ソロが抜けたら演奏が成り立たなくなっちまう」
「ピグラが埋めてくれるじゃない。最初はヴァイオリン一台だったんだから」
「そんなの……急に言われても……」
「アロから許可は取ってあるわ。元々、一人病欠の予定で進んでいたみたいだし」
全て俺が準備を整えてしまっていたのか。
「理由を聞いてもいいか?」
「私に資格がないから、かな」
「舞台に立つような資格が」
「全部知ってる人なら、私が舞台に立つことを否定するわ」
「俺は否定しないぞ、むしろ立ってほしい」
「例外もいたわね。とにかく、今の私が舞台に立てない……」
俺は同じミスは繰り返さない。
「そんなこと言わないでくれ!」
前みたいに何も言わずに、立ち去ることはない。
「俺の好きなもの、知ってるか?」
「……私の演奏」
「ああ、理由も話したな」
「理屈なんかじゃない。感情なんだ」
「俺はソロの演奏が好き。そして演奏会に出てほしい」
「降りるなんて言わないでほしい」
「ピグラ……」
「うん……それなら、みんなに私のしたことを話してみる」
「それで許してくれたら、参加したい」
「ソロ!」
「朝から大声で痴話喧嘩?」
「ラビア、ちょうどよかったわ。放課後集まってもらえるかしら?」
「ゴラとアヴィも呼んでほしいんだけど」
「放課後だね、大丈夫だよ」
「さっそくだけど話があるの」
「この前の幽霊騒動の犯人……私なの」
「え!?幽霊騒動って落書きとか手紙とかの?」
「ええ……全部私がやったことよ」
「そんな……」
ゴラは不思議な顔をしている。
「あの……どうしてそんなことを?」
幽霊じゃないから安心したのだろう。当然の疑問だ。
「この村を恨んでいるから」
「姉さんを殺したこの村を許せなかったから」
「だから、村祭りをめちゃくちゃにしたかった」
「それだけよ」
姉さんを殺した。
それは俺だって共犯だ。
「……え」
ゴラが真っ青な顔になっている。
「ゴラ……大丈夫?」
「やっぱり、私は……」
「ゴラ、知ってるから、言わなくてもいいわ。ただ仕方のないことだった」
「ゴラは悪くないわ」
ソロがゴラを抱きしめる。
「ソロ……先輩……」
「それでも心がつぶれそうなら、演奏会に力を入れてほしい」
「ピグラのおかげで、いろんなことに気がついたから」
演奏会を壊そうとしたソロが演奏会に力を入れてほしいと願う。
その心の変化に俺がかかわっているのだとしたら、これからの責任は重大だな。
「話したいことは話したわ」
「私を許してくれなくても構わない」
「全ては私のまいた種だから、責任はとるわ」
「許すも何も、ねぇ」
「私たちは最初からソロの仲間だよ」
「ただ、次から何かするときは教えてほしいかな」
「急だったからびっくりしたもんね」
「みんな……」
普通なら起こってもいいところだと思う。
でも、こいつらは少しおかしい。
おかしいぐらいがちょうどいいのかもしれない。




