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11/13 Wed ソロ

11/13

「二人とも付き合ってんのか?」

「っ!どっ、どうして?」

「そのあわて具合、図星みたいだな」

「隠すことでもないか。そうだな、ソロと付き合い始めた」

「最近距離近かったからね。でもピグラとソロか……納得だな」

「え、お二人付き合い始めたんですか!?」

「ソロ~?聞いてないんだけど?」

ゴラとアヴィからも質問攻めにされる。なんだか数日前にも違う内容であったな。

「話していないからね」

「隠し事はよくないぞ!」

「ドタバタしてたんだから仕方ないじゃない」

ソロは俺の腕をつかむ。

「でも、これでピグラは私のものだから」

「先こされたなぁ」

「もっと早く勇気が出せれば……」

アヴィとゴラは何かソロに文句を言っている。

「ソロを幸せにしてやれよ」

「わかってるって」

「……本当に苦しいのはきっとこれからだから」

「ラビア?何か知っているのか?」

「いや、俺は何も知らない。知っているのは……」

一つ風が吹く。とても強い風が。

誰かが、音楽室の窓を開けていたのだろう。

「……ごめん、話せない約束なんだ」

「なら仕方ないか」

俺だってソロのことがある。うかつに聞くことなんてできない。


気を利かせてか二人きりになる。

「ねえピグラ」

「やっぱり村祭りは何もしないことにするわ」

「いいのか?」

「いいの。みんなを見てたら演奏会楽しみにしてるんだなってわかったから」

「守るためなら、そもそもやらなきゃいい話だしね」

「ソロが納得しているならいいよ」

また二人でくっついて、優しく頭をなでる。

「結局のところね、誰かに見つけてほしかっただけなのかも」

「ピグラが私のことを見つけてくれた」

「ピグラだけが私の音を聞いてくれた」

「だから、村祭りで無理やり私の音を聞かせる必要はなくなっちゃった」

「俺は金を払ってでもソロの演奏を聞きたいんだけどな」

「ピグラになら一生弾いてあげるわ」

ソロが俺に手を重ねてくる。

俺もその手を握り返した。

「えへへ」

「あまーい!」

「え?」

「ちょっと騒がないでよ!」

「ばれちゃいますよ」

「いやいや、何してるの」

「何って……タマタマ トオリカカッタ ダケダヨ」

「今は個人練習の時間だって言ってくれたのに……」

「そりゃ気になるといいますか」

「二人きりだとどんなのかなって」

「お二人が仲良くしてる所を見たいような、見たくないような……」

「そんな感じで利害が一致したので隠れてみていました」

「どのあたりから?」

「えっと……金を払ってでも演奏を聴きたいってあたりから」

危ない。その前の、村祭りの話は聞かれていないみたいだ。

「甘すぎるんだもん。ソロも一生とか平気で言っちゃうし、ピグラくんも平気で受け入れちゃうし」

「二人とも重いし甘い!」

「でも嘘はつけないさ」

「それが甘いの!」

「なんでテンション高いの」

「目の前で惚気られたらテンションも上がるよ!はやし立てたくなるよ!」

「アヴィ、落ち着いて!気持ちはわかるけど!」

「すーはー」

深呼吸したところで落ち着く問題なのだろうか。

当事者にはわからないものだ。

「ふぅ……ゴラちゃん、ラビアくんここは去ろう。分が悪い」

「なんかキャラ崩壊してないか?」

アヴィがゴラとラビアを連れ去って行く。

「嵐みたいなやつらだったな」

「ほんとにね」

会話中もソロは俺にぴったり引っ付いていた。


「ねえ、ピグラ」

「今日家に行ってもいい?」

「……ああ」

「お母さんには遅くなるって伝えとくから」

甘えた声で、脳に直接入ってくる。

恋人ってすごいんだな。


「お邪魔します」

思えば俺の家——アパートだけど——に人を招待したのは初めてだろうか。

「へぇ、片付いてるじゃない」

「置くものもないしな」

あるものといえばクラシックのCDぐらいだろうか。

生で聞くのが一番だが、夜などに聞くならCDでも十分だったりする。

「ピグラって自炊とかするの?」

「たまに。面倒な時は弁当買ってきてるけど」

「じゃあ、今日は私につくらせて」

「料理できるのか?」

「家で料理は交代制なの。お父さんもお母さんも忙しいから」

「期待して待ってる」

「ハードルは上げないでくれるとうれしいけど」

「それじゃあ買い出しに行ってくるわね」

「それなら俺も行くぞ。荷物持ちぐらいにはなるだろ」

「良いの?それじゃあお願いしようかしら」

こうして並んでお店へと出かけた。


「もう、私が払うって言ってるのに」

「ソロが料理を作ってくれるんだろ?手間賃だと思ってくれ」

「譲って聞かないから結局買ってもらっちゃった。次は私にも払わせてね」

「お互いの立場が五分だったらな」

ソロに料理を作ってもらうんなら、お金を払うのが筋だろう。


「できたよ」

家に帰ってソロに料理を作ってもらう。

こんなに幸せなことがあるだろうか。

「いただきます」

ソロにまっすぐ見つめられる。

「ラザニア嫌いだった?」

「いや、そんなに見つめられると……食べづらい」

「なあんだ。気にしないでいいわよ」

「気にするよ」

文句を言いながらも最初の一口を食べる。

「あっつ」

「冷ましてから食べなさいよ」

「はふいはふい(悪い悪い)」

「へほほいひいな(でもおいしいな)」

「何言ってるかわかんないわよ」

水を軽く飲む。

「わるい。おいしいって言ったんだ」

「ふふっ、ありがとう」

ソロも食べ始める。一口食べて頷いた所を見るに、自分でも納得がいっているのだろう。


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

ソロが作ってくれた料理はどれもおいしかった。

スープもサラダも。

「そういえばなんで主食がラザニア何だ?」

「……姉さんが好きだったから」

「そうなのか」

ルスリアにラザニア……イメージできないな。

「うちのお母さんがね、姉さんの誕生日には絶対作ってたの」

「姉さんが死んでから作り方を教えてもらった」

「今思えば、姉さんの寂しさを紛らわせようとしたのかも」

ルスリアか……今も森にいるのだろうか。

「食後の演奏しないか」

「ここアパートよ?」

「外に行こう。俺のお気に入りの場所があるんだ」

「……遠回しに言わなくても場所ぐらいわかるわよ」


一度学校に楽器を取りに行ってから森へ向かう。

夜でも「忘れものを取りに来た」ってアロに言えば済むんだから楽な話だ。


「曲は?」

「最初はいつもので」

「どっちのパートがいい?」

「後から入る方で」

「わかったわ」

ルスリアがいるかわからないが、二人だけの演奏会を始める。

幽霊のための協奏曲。

夜間でも音が響かないため、近くにいてくれるといいんだけど。


それから数時間は演奏しただろうか。

「そろそろ帰ろうか」

「ええ、それじゃあ……」

「……」

沈黙が流れる。

お互い別れたくない。そんな空気。

「今日、泊まっていくか?」

「……っ!」

「いいの?」

「ソロがよければだけど」

「ピグラがいいなら……」

「……ふっ」

「なんだか堂々巡りね。じゃあお言葉に甘えて泊まらせてもらおうかしら」

「ああっ!」


一度荷物を取りに帰るとかでソロと別れる。

ピンポーン。

ソロがやって来たのか玄関を開ける。

「おおっ」

さっきまで制服だったが着替えてきたのか、可愛らしい服に身を包んでいる。

「普段着ない服だけど、どうかしら?」

「似合ってる。かわいいよ」

「ストレートね。少し照れるわ」

彼女は服をひらひらさせながら、俺の家に入ってくる。

「シャワー借りるわね」

「お湯張ってあるから入っても大丈夫だぞ」

「用意がいいわね。ありがとう」

「俺はもう入ったからゆっくり入ってもいいからな」

「ふふっ、ピグラの後のお風呂ね」

「変な言い方するなよ」

ふふっと笑うと、ソロはお風呂へ向かう。


「ありがとう、いいお湯だったわ。ドライヤーってあるかしら」

「脱衣所の棚にあるぞ」

「……ねえ、ピグラ」

ソロがこう言い始めるときは大体お願いの合図だ。

「髪、乾してくれない?」

「もちろん、かまわないぞ」

「一番弱い風でしてもらってもいい?」

「いいけど……時間かかるぞ?」

「別にいいわ。タオルも使わないでね」

「なおさら時間がかかるような……」

理由は謎だが、ソロの要望通りに髪を乾かす。

ソロの髪を傷つけないよう、優しくなでながら、やわらかい風で乾かす。

やはり、タオルもなければ時間がかかってしまう。

「暇じゃないか?」

「全然、それよりも気持ちいいわ」

「ならいいんだ」


いつもより時間をかけて乾かした。

「もっと……いや、なんでもないわ」

自分の髪をなでながらつぶやくソロ。

「もっと髪、伸ばそうかしら」

「ロングのソロか。それもそれで似合ってるんだろうな」

「どうかしらね」

ルスリアみたいになりそうだな。


「いい時間だな」

「そうね……」

そろそろ12時を回る頃。

「布団とベット、どっちがいい?」

「ピグラがいつも使ってる方」

「じゃあベットだな。俺は布団で寝る」

「いいの?」

「別に俺としてはどっちでもいいんだ。せっかくベットがあるんだしそれで寝てるだけ」

「一緒に寝てもいいのよ?」

「……ありがたい申し出だが、今の俺はギリギリ耐えてるんだ。今回は断っておく」

「別に耐えなくてもいいのに」

「じゃあ電気消すぞ」

「あ、その前に」

「ピグラ、目瞑ってて」

「ん?」

俺はそっと目を閉じる。

刹那、唇に柔らかいものが触れた。

「初めてだからね」

「おやすみ」

ソロは電気を消してベットに入って行った。

俺は少しの間、何が起こったかを考えていた。

……キス、されたのか。

気付くまで惚けていた。

明かりが暗くて助かったな。

顔まで見られていたらどうなっていたか。


眠れたのはそれから少ししてからのことだった。


「今日はもう時間だね」

「姉さん、帰ろう」

「ルスリアって妹と仲いいよな」

「自慢の妹だよ」

「ははっ、いいことだ」


昔の夢を見た。接点こそないものの、友達の妹だったころのソロ。

毎日ルスリアの迎えに来てたっけ。

そういえば隣の部屋からヴァイオリンが聞こえていたな。

もしかしたら、隣の教室にいたのはソロだったのかもしれない。

演奏にかける感情が今と違うものだから気が付かなかった。


……

…………

………………

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