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10/23 Wed

10/23

「アロ、俺も演奏会に出る」

「やっと決めてくれたのね」

人前に出るのは怖い。

でも、ルスリアと約束した。

「大丈夫よ、最初から数に入れていたの」

「恩に着る」

「あの子達には伝えたの?」

「いや、まだだ。これから伝えようと思う」

「私もついて行った方がいい?」

「頼むから子供扱いしないでくれ」

「ふふっ、冗談よ」

職員室を後にする。

アロはアロで忙しそうだった。


「というわけで、俺も参加することになった」

「というわけってなんだよ。今回は盗み聞きしてないぞ」

「演奏を聞かせたらさ、演奏会に出てくれって言われた」

「喜んでくれたのか?」

「わからない。でも、今の俺を肯定してくれた」

「人前に出るの、大丈夫なの?」

「よくはない。ただ、それ以上のリターンがあるからな」

「みんなの演奏を本当の特等席で聞ける」

「相変わらずだね」

「そうと決まれば練習するぞ!」

その一言で練習が始まった。


ーーー

「ピグラくん、一つお願いがあるんだ」

「なんですか?」

少し、怒気のこもった返事になってしまっただろうか。

「……今度、村祭りがあるんだ。そこでピアノを演奏してくれないか?」

「のんきなもんだな」

「そうだね。正直、僕も納得していない」

「でもルスリアのために演奏してくれないかな?」

「ルスリアのため?」

「ああ、ルスリアも村祭りに出るんだ」

「それで、ピグラくんに演奏してほしいのはルスリアからの願いなんだ」

「……そして彼の願いでもある」

「……彼っていうのは」

「ああ。想像通りの人だ」

「……」

俺はピアノを弾く。

恩返しができるのだろうか。

「いつまでに弾けるようになればいいんだ?」

「村祭りは一週間後に行われる予定だ。それまでに準備できるかい?」

「曲は?」

「ピグラくんの好きな曲が良いらしい」

「わかった。余裕だ」

ピアノを強くたたく。

俺の憤りの矛先がピアノに向かっていった。

「……急な話ですまないね」

「いえ……先生は何も悪くないから」

「俺が……」

「自分を責めるのだけはやめてくれ」

「そうだ、ルスリアは今日は来ないのか?」

「村祭りのことで打ち合わせがあるらしくてしばらく来れない」

「そうか」

俺は少し、寂しいと思った。


ーーー

夢を見た。

ルスリア……。

昔に仲が良かった女の子。

俺は彼女に恋をしていたのかもしれない。

今よりも子供だった俺たち。

「大人になれたんだろうか」

時間だけが、無為に流れていった。

俺の時間はあの演奏で止まっている。

「無理に走る必要はない、か」

彼女は演奏会に出ることを休むことと言った。

普通は逆だろう。

ルスリアには見える世界が違うのだろうな。

……

俺は、ルスリアのために何ができるだろう……

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