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10/22 Tue

10/22

俺は一人で森に来ていた。

早くにきすぎたか、木の隙間から見える空はまだ明るい。

誰もいない芝に寝転がる。

一つ風が吹く。

ポロロン

音が聞こえる。

聞こえるはずのない音が。

調律の狂ったピアノの音が。

ポロロン

俺は目を瞑る。

音から逃げるように。

ポロロン

あれ、

このメロディ……どこかで……

……

…………

………………

「ピグラさーん」

「ん?」

目を開ける。

眠ってしまったみたいだ。

「こんなところで寝てると風邪ひくよ」

「確かに少し肌寒い」

この時期の夜は冷え込む。

手もかなり冷えている。

「手、温めましょうか?」

「え?」

幽霊の少女が手を握り込んでくる。

「あったかいでしょ」

「あ、ああ」

「ピグラさんの手は大事なんだよ。冷えたままじゃよくないさ」

少女と距離が近いまま数分を過ごす。

「なあ、そろそろ温まってきたんだが」

「そう……だね」

少女は手を離そうとしない。

「あと少しだけ……」

「今日、演奏しにきたんだけど」

「あっ!そうだった、約束の日だったね。幽霊だと曜日感覚がなくなっちゃうんだ」

少女は名残惜しそうに手を離すと、まっすぐな瞳で俺を見つめる。

「それじゃあ、お願いしてもいい?」

「ああ」

演奏の準備をする。

チューニング。

……これでいい。

俺は息を吸い込む。

そして息を止めた瞬間

「~♪」

少女に俺をぶつける。

ソロ達との演奏を。

一人じゃないことを。

少女には俺がいることを、強く思いながら。

「……」

俺たちの音は彼女に届くだろうか。

いや、願うものではない。

届かせるんだ。

「~♪」


最後の一音を弾き終わる。

「……ピグラさん」

「本音を言うと、私が期待していた音ではなかったよ」

「そうか……」

「でも、これも一つの形なんだね」

「ピグラさん。みんなを大事にするんだよ」

「っ!」

彼女は、何かを俺に求めていた。

だが俺は別の形で答えた。

届いたんだ。俺の今の気持ちが。

「ピグラさん。こんな演奏できるなら演奏会に参加するんだ。今のあなたには、それが必要だから」

ルスリアはまじめなトーンで話し続ける。

「辛い時には休んだっていいんです。今、無理に走る必要はないですから。私はどんなピグラさんでも肯定します」

「……」

「楽しむことを、優先してください。私からのお願いです」

「……そうか」

俺は少し過去を思い出す。


ーーー

「なあ、……」

「なに?」

「なんで……が弾きたいんだ?」

「ピグラくんと一緒に演奏するためだよ」

「俺の演奏を聞いてくれるのは……だけだよ」

俺は……を鳴らす。

「じゃあ、みんなにも聞いてもらお!」

「私からのお願い!」

「考えとくよ」

「ルスリア」

俺は、ピアノを鳴らした。


ーーー

「君はルスリアなんだな」

「……」

「気づいちゃったか」

「ああ、俺が昔通ってた音楽教室の生徒」

「そして」

「俺が殺してしまった、ルスリア」

「違う!!」

「ルスリアはそう言ってくれるだろうな。でも、俺が許せないんだ。本当にすまなかった」

「そんな!頭を上げてください!」

「謝って済むことじゃないな。俺にできることがあれば……」

「……じゃあ、演奏会に出てください。約束です」

「わかったよ」

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