10/21 Mon
10/21
週末明け、放課後にラビアが寄ってくる。
「なあ、ほんとに参加しないのか」
「最近はそれどころじゃないんだ」
「どう言うこと?」
俺はソロに伝えたように、肝心なところをぼかして教えた。
「なるほど、それで最近頑張ってたんだ」
「深くは聞いてこないのか」
「答えてくれるなら聞くさ」
「心遣いどうも。確かに答える気はないな」
「まあ、誰かさんのためにも頑張りな」
「……実をいうと一緒に演奏してくれるだけでも助かるんだ」
「なんだか、答えが見えるような気がして」
「答え?」
「ああ、前まで一人で演奏しているときはなんだかしっくりこなかった」
「でも、ラビア達と演奏して、何かをつかんだような感覚がした」
「それはよかった」
その時のラビアは満面の笑顔だった。
約束の一日前。
俺は演奏会メンバーと共にいた。
「明日は約束の日だ」
「今から演奏する。率直な意見を教えてくれ」
「ああ、任せてくれ!」
一つ息を吸う。
演奏するときのルーティン。
弦を鳴らす。
指先に意識を込める。
……ああ、ここはよくアヴィがミスするところだ。
無意識のうちリカバリーするように演奏してしまう。
ラビア、あまり調子に乗るなよ。
空想上の音で会話する。
相手はいないのに。
ゴラ、もう少し胸を張ってもいいぞ。
演奏が控えめになる。
ソロと目が合った。
ソロと一緒に場を盛り上げる。
全て一人で演奏しているのに。
今までの練習のように、手が動いてしまう。
ただ……それが、楽しい。
「どうだ?」
「あはは、ピグラらしいな」
「私、最近間違えないようになってきたのに」
「私たち演奏してなかったわよね」
「……不思議です」
「よく見てるのね。こうしてピグラの演奏を聞いて感じたわ」
「ずっと特等席で練習を聞かせてもらってきたからな」
「でも、聞かせる相手はそれで満足するのか?」
「今の演奏っていわゆる身内ネタだろ?」
「その人は『今の俺』を聞きたがっていた。きっと今の演奏が嘘偽りない、今の俺なんだ」
「なら、俺から言うことは何もないや」
「私からもないわ。ピグラが満足そうだもの」
アヴィとゴラもうなずいている。
「明日は一人にさせてくれ。みんなは個人練習で頼む」
「了解!」




