10/18 Fri ソロの場合
10/18
次の日、俺はソロと一緒にいた。
「一人で練習するより、二人の方が良いわよ」
「二人なら、虚空に消えても怖くない、ってか」
「安っぽい詩ね」
「失礼だな」
文句を言うようにヴァイオリンの演奏を始める。
「ごめんね」
ソロも後について重ねてくれる。
今日もいい日になりそうだ。
「今日もいい日になりそうって思ってそうだね」
「うわっ」
ニヤニヤしたラビアがそこにいた。
「急に出てくるなよ」
「イチャイチャしてるからいつ出ようかなって」
「すみません!止めたんですが……」
「我慢できなくなったみたいだね」
「二人なら……なんだっけ?」
「……殺してくれ」
そうしたら俺も幽霊になれるのかな。
「お前の仲間はソロだけじゃないだろ」
「そうだよ!私たちもいるよ」
「部長も応援してるって言ってました!」
料理研究部の部長か。最近会ってなかったな。
「そうか……」
俺が感じていた虚無は、孤独だったのだろうか。
「届かないわけだ」
俺には仲間がいるんだ。
俺も彼女の仲間になるためには、俺の仲間を理解しないでどうする。
「はは、みんなで演奏してみるか」
「今までピグラが嫌がってたんだろ」
「今の俺は気分がいいんだ」
「どうしたんだ、演奏会に参加する気になったのか?」
「違う。でも、みんなと練習したいんだ」
「本番と音が違うと狂いそうなんだけど」
「よく言う。別にみんな大丈夫だろ」
「あはは、それもそうだ」
他の3人も自分の楽器を取り出す。
「俺たちも混ざりたくてうずうずしてたんだ。準備はとっくにできてるさ」
「それじゃあ……」
合図は俺が取る。
みんなの演奏を一番近くで聴いてたんだ。
「ー♪」
ゴラが怯えている。
少し背中を押すために、ゴラのパートと同じ旋律を弾く。
アヴィが何か探している。
見つけられるように、アヴィに重ね合わせて弾く。
俺が入ったせいかラビアが調子に乗り始めた。
同じリズムを被せて抑えることにした。
ソロはずっと、俺の音に合わせてくれている。
楽しい。
彼女に聴かせてあげられるだろうか。
この一欠片でも持ち帰って俺のものにする。
そうすればきっと、幽霊にも届く。
だから俺は
この演奏を一生懸命に楽しんだ。
みんなが帰った後、一人音楽室に残っていた。
「あら?まだ残ってたの」
「腕を鈍らせるわけにはいかないからな」
「そんなこと言って、本当は毎日演奏してるくせに」
「なんのことかな」
ヴァイオリンを手に取る。
「誰に聴かせるつもりかわからないけど」
演奏せずに弓を弦に合わせる。
「死者に囚われるにはやめた方がいいわよ」
ギィ
ヴァイオリンが変な音を鳴らす。
「今、なんて」
「ピグラの音からは、死者の声がする」
「確かに、昨日と今日の演奏で良くなったわ」
「でも、死者の声がより一層、強くなった」
俺の中で何かが叫ぶ。
「……気をつける」
「私の勘違いだったらいいんだけどね」
ソロが準備室へ向かう。自分の楽器をしまうためだろう。
「あら?こんなところにギターケースなんてあったかしら?」
「今日もあるのか」
俺もヴァイオリンをしまい、準備室へ入る。
この前見たのと同じようにでかいギターケースが部屋の隅に置いてある。
「気づかないうちに誰か置いてったんだろうな」
「ここを使う予定だったのかしら。悪いことをしたわね」
人の楽器を勝手に触ってはいけない。
俺たちはギターケースにぶつからないように準備室を後にした。
「……」




