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10/15 Tue

10/15

「……さん。ピグラさん」

「ぼーっとして、どうしたの?」

「聞こえてないみたいだね」

「今日は個人練習にしとこうか」

「そうですね」

遠い会話が聞こえる。

俺の演奏を聴きたいといった幽霊の彼女。

彼女が望む演奏を俺はできるだろうか。

今考えても答えなんて出ない。

「ちょっと今日は俺も……あれ?」

誰もいなくなっていた。

まあ、いいか。

この方が一人で練習できる。


ー♪

なんだか久しぶりだ。

最後に一人で演奏したのは店長のお店でだろうか。

でも、なんだろう。手応えがない。

虚構に向かって弾いてるような、実態のない幽霊を掴むような。

有り体に言って中身のない演奏。

俺はこんな演奏を聴かせるのか?

「違うだろ……」

俺は……どうなっちまったんだ?


気づけば夜になっていた。

彼女は森にいるのだろうか。

「行くしかないか」


「よう」

「あ、ピグラさん」

暗い森で倒れた木に腰掛けている。

「ヴァイオリンケース……そっか……」

「弾いてくれるのかい?」

「ああ、ただ一つ約束をしてくれ」

「どんな内容でも正直な感想をくれ」

「……」

「わかった」

彼女は頷くと手招きをする。

「少し暗いけど大丈夫?」

「目を閉じてても弾けるさ」

俺は息を深く吸う。

「ー♪」

呼吸と共に演奏を始める。

しかし、やはり手応えがない。

俺は……なんなんだ……?


ぱちぱちぱち

彼女が拍手を送ってくれる。

「どうだった?」

「……約束だからね」

「私が聴きたい音は聴けなかったよ」

「やっぱりか」

俺はヴァイオリンを見つめる。

「演奏してても手応えを感じなかった。俺は、どうしちゃったんだろうな」

「きっと……いや、私から言っても意味がないか」

「何かわかるのか?」

「音を聞けばわかりますよ。私のために一生懸命に演奏してくれたことも」

「だから、とても寂しいんだ」

「寂しい?」

「いえ、言葉の綾です。気にしないでください」

気にするなと言われても難しい。

だが、触れてはいけないものなのだろう。

「今日はすまなかった」

「私のわがままなのにどうして謝るんだい」

「そうしなきゃいけない気がしたんだ。なあ、ひょっとして君は……」

「気のせいですよ」

まだ何も言っていないのに。

「そうか……気のせいならいいんだ。……なあ、君、1週間後にまた聞いてくれないか」

「ピグラさんが迷わないなら、いいよ」

「迷う……そうだな」

俺は迷っているんだな。

「次合う時までには、解決する」


家に帰ってからも今日のことを考える。

今まで何も考えていない時の方が手応えはあった。

でも、誰かのために演奏をするのは久しぶりだ。

それも幽霊のために、なんて。

鎮魂歌といえば聞こえはいいが、俺の気持ちがわからない。

せっかく1週間猶予をもらったんだ。

「明日から俺も練習してみるか」

今日はもう寝よう。

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