10/14 Mon その後
「とりあえず今日はここまでだ。休み明けで調子が出ないのは仕方ない」
「……」
「というわけでゆっくり休むように。解散!」
半ば強引に、その場を後にする。
今日は寄るところがあるのだ。
楽器店とはまた別の場所に。
「ピグラさん。またきたんだ」
「ああ、少し考えたくてな」
昼間は森の浅いところに彼女はいない。
彼女を見つけるために、普段入り込まないような奥に来ていた。
「それもこんな場所まで……」
「一度だけ……友達と来た」
「もしかして、石碑まで」
「ああ」
少し前に引っかかった疑問を聞く。
「あの石碑、君のか?」
「そういうことになってるかな」
「……」
「それならソロの姉さんっていうのは」
「ソロ、そこまで話したんだ。そうだよ、私のこと」
「あ、ソロには言わないでね。こんな場所で幽霊になってること」
「嫌われてるのか?」
「いや、心配かけたくないから……かな」
「これもなんか違うかな。恥ずかしいから?」
「うーんわかんないけど、とにかく伝えないで」
「ソロだけじゃなく、ゴラちゃんやアヴィにも」
「あ、ああ。いいけど」
ふと違和感に気がつく。
「俺、名前教えたか?」
前も自然に名前を呼ばれていた気がする。
「それにゴラやアヴィのこともなんで知っているんだ?」
「あ……その……」
「幽霊だからなんでも知ってるんだ」
「幽霊だから?」
「うん。難しいことは何もないよ」
ザッザッ
後ろから足音が聞こえる。
「あれ?ピグラくんじゃない」
「アロ、どうしてここに?」
「私のセリフでもあるんだけどね、たまに子供とかが入り込んでないか見回りに来てるの」
「今までは一人も見つからなかったんだけどね」
「俺が初ってことか」
「そうね、誰かと話してたみたいだけど、他にもいるの?」
「ああ、ここに」
俺は幽霊の彼女を指差す。
しまった。誰にも話しちゃいけないんだった。
しかし幽霊の彼女は悲しそうな顔で笑っている。
「ここにって……どこに?」
「……え?」
まさか、この少女は。
本当に幽霊なのか。
俺は少しよろけた。
「大丈夫?練習で疲れちゃってるんじゃない?」
「そうかも……しれない」
「近くに小屋があるはずだから、休んで行きましょう」
「いや……大丈夫……」
「そう?なら、送っていきましょうか?」
「……少し一人にしてほしい」
「本当に具合が悪そうね。早く帰るのよ?」
「ああ……」
アロが去って行く。
「そういうことなの」
「認めたくはないけどな」
アロから実際に見られてない。
確かに隣にいたはずなのに。
「なんで俺は見えるんだ?」
「村の外の人だから。幽霊信仰と関係ないからこそ、見えるんじゃないかな」
「君に近ければ近いほど見えない、か。皮肉な話だな」
「そういえば、君はソロの姉って言ったか」
「そうだね」
「じゃあ、アロは君の……」
「お母さんだね」
「……そうか」
母親から存在を否定される気持ちを俺は理解できるだろうか。
「ねえ、ピグラさん。一つお願いしても良いですか?」
「俺にできることなら」
同情しているのだろうか。
誰からも見つからない幽霊の少女に。
「ピグラさんの演奏を聞かせてください」
「今のピグラさんの音を」
「……わかった。明日また来る」




