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アルバス、王女様の声を取り戻し名前を聞く

 王城の中は元貴族の僕でさえ、腰を抜かしてしまうほどの大きさと広さであった。


 そこに騎士、スタスタと機敏よく働く使用人、治療に来ただろう魔法使い達が一堂に会していた。


「アルバスと言います。王女様の治療に協力するために来ました」


「治療に名乗りを上げてくれたこと、感謝します。まずはこちらで持ち物検査などを」


 僕は使用人に案内されて、数々の検査を受けることになる。


 持ち物検査から始まり、使用人と騎士による面談、書類の記入など。

 貴族や信頼のおける人からの紹介ならともかく、僕みたいな飛び入りは多くの検査を受けた上で、無害と判別されなければ王女様のところに行くことはできない。


「アルバス、君は問題なしと判断し、今から王女様のところに案内する」


 僕は使用人に連れられて王女様のところへ向かう。


「王女様、次の協力者を連れてきました入ります」


 僕は使用人に案内されて部屋の中へ。僕はその中で静かに佇む少女を見て、目を奪われる。


 声が出ないというのもあるが、彼女の雰囲気は一段と静かであった。元々静謐なお方なのだろう。佇まいからして、彼女は静かだ。


 銀の瞳が僕を見つめる。頭のてっぺんから足先まで、まるでじっくりと観察するように。


「先ずは王女様の治療に名乗り上げたこと、感謝いたします。それを踏まえた上で言わせてもらいます。少しでも害意があるとこちらが判断した場合、即刻実力行使させていただきます。それはよろしいですか?」


 側に控えていたこれまた物静かな雰囲気の使用人が僕へそう告げる。


 王女様は観察するような視線だが、使用人のモノクルから向けられる視線はそれとは違う。警戒心丸出し、少しでも害意を持って行動すれば命はない、そう告げているような鋭い眼光だ。


「大丈夫です。僕に害意はありません」


「……では早速治療に。魔法による物、魔道具による物、如何なる手段も我々は問いません。ただ、王女様の声を取り戻していただければなんでも」


 声から王族がどれだけ彼女の治療に本気なのかわかる。そうまでして治したい理由とはなんだろうか?


 そもそもなんで彼女は声を失ったのだろうか? そんな当たり前の疑問が頭をよぎる。


「参考までに聞きたいのですが、王女様はどうして声を失ったのですか?」


「不明としか言えません。ある日突然、王女様は声を失った。国中の名医という名医に調べてもらいましたが、原因は不明と」


 原因不明。突然声を失った。


 そんなこと聞いたこともない。もし、こんなのが多発したら国中、いや世界中が大パニックになるだろう。


 声を失うということは日常生活で不便するのはもちろん、魔法も使えなくなる。魔法は詠唱と魔法名を発声して、音になることで初めて使える。魔道具や僕みたいに特殊な魔法を使わない限り、これは絶対のルールだ。


 ある日突然魔法が使えなくなる。こんなことがこれから起きて、しかも治療できないとなれば世界中が混乱するだろう。


 原因不明、対処方法不明。だが、僕の魔法が何かのきっかけになればいいと思っている。


「行きます王女様」


 僕は王女様にそう告げる。王女様は既に覚悟を決めているようで、こくりと静かに頷いた。


 僕はいつもよりも一層魔法に集中する。魔法に全神経を傾ける。こんなに集中したのは生まれて初めてのことだ。


「【声帯付与(エンチャント・ボイス)】」


 魔法を使った瞬間、身体から多くの物が抜けていく感覚に襲われる。


 魔力だ。普段の魔法よりも激しく魔力が抜ける。


 目眩、立ちくらみがするほどの魔力消費。王女様が治療出来なかった理由がわかった。


 王女様を治療するには多大な魔力が必要だったのだ。多大な魔力を使わなければ、王女様に魔法をかけることすら出来ない。


 呪いなのか? 声が出なくなるという強い呪い。それを跳ね除けるくらいの強い魔法じゃなければ、魔法をかけることすらできないとか……?


「あ……やば……」


 疲労で立っていられなくなる。思わず前に倒れかけようとした時、そっと優しく支えられた。


「ありがとうございます。貴方のおかげで声を取り戻すことが出来ました」


 耳元で優しく囁く声。少女にしては僅かに低いが、よく響き、柔らかく優しい声。聞いていると安堵するようなそんな声だ。


 ふと、顔を上げる。両腕で僕を支える王女様はニコリと微笑む。


「初めまして。私の名はルルアリア・フォン・アストレア。先ずは貴方のおかげでこうして声が出せること感謝いたします」


 王女様もといルルアリアは僕にそう告げるのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!!

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