09 ケルミシュ
首をロープで繋がれた三人のおじさんの後ろを、周囲を警戒しながら慎重に進んでおります。
もちろん、おじさんたちにも警戒をお願いしてますよ。
どうせならみんなで無事にたどり着きましょうって説得しました。
おじさんたちは手足が自由なのですが、全員の首が一本のロープで繋がれております。
ノルシェさんから教わった捕縛術で、戦場で捕虜を連れ歩く際のものだとか。
手を縛っちゃうと下の世話やらなにやらが大変なので、首だけ繋ぐのだそうです。
もちろん時間を掛ければロープは自力で外せるのですが、出来ればそういうことはしないでほしいってお願いしました。
途中で魔物が出たけど、警戒する人数が多いと気付くのが早くて対処が楽ですね。
魔物なら遠慮なくぶっ叩けますし。
……
もうすぐケルミシュですが、少し開けた空き地があったので休憩です。
ワインじゃなくてお茶だけど、ごめんね。
「なんで俺たちにも飲ませるんだ」
えーと、動けなくなると連れて行くのが大変だから、かな。
「ありがとよ、ぼうず」
どういたしまして。
トイレが済んだら出発しますね。
「……」
では、行きましょうか。
……
ふぃー、ようやくケルミシュに到着しました。
村の人たちが、ロープで繋がれたおじさんたちを連れた僕を変な目で見てくるので、なんだか恥ずかしかったです。
ギルドに到着したので、事の次第を職員さんに報告。
おじさんたち、お疲れさまでした、お元気で。
「ぼうずも元気でな」
三人とも、頭を下げて見送ってくれました。
ギルドを出たら、まずは宿の確保ですね。
以前泊まった宿に行くと、宿の人たちは僕のことを覚えていてくれていましたよ。
前と同じ部屋を取ることが出来たので、ほっと一息です。
ルルリエさんから預かっていた手紙とジオーネ銘菓詰め合わせを宿の人に渡しました。
宿の皆さんがとても喜んでくれたのは、ルルリエさんの人徳ですね。
食堂で給仕のお姉さんにルルリエさんの近況報告をしながら夕食。
森の幸いっぱいの美味しい食事に大満足なのです。
部屋に戻ったら、今日の反省会。
今回の襲撃には落ち着いて対処出来たし、魔法や飛び道具を使われたり一斉に飛び掛かられたりしても、魔導具を使いこなせば大丈夫そうです。
でもこの旅は、ひとり旅の限界を極めるのが目的じゃなくて、冒険者としてどう振る舞うのかを学ぶ旅。
この先に進むなら、ここに長逗留することになっても、いっしょに旅してくれる人を探すべきだよね。
それと、ハルシャちゃんに手紙を書かなきゃ。
まずは、ひさびさのベッドを堪能しましょうか。
おやすみなさい……
zzz……