06 旅
最初の目的地は、エルサニア南部にあるケルミシュ村。
以前のロイさんたちとの男旅の時は幌馬車で数日だったけど、今回は徒歩なので途中の集落で補給しながら半月ほどかかるかな。
それでは、エルサニア王都の南門から出発です。
広い街道には、たくさんの馬車と大勢の旅人。
この異世界に来てからこういう旅は初めてなので、わくわくと緊張が半々って感じかな。
お金はそれなりに持ってきているけど、旅の途中で出来るだけ依頼をこなして旅費を稼ぐつもりです。
王都近郊の人通りの多い街道は巡回兵士さんが常に見回りしているので比較的安全。
顔見知りの商人さんから声を掛けられたりしながら、自分のペースで歩きます。
……
休憩場が見えてきたので、そろそろひと休みしましょうか。
村というほどではない、数軒のお店と宿が集まった、旅の休憩場です。
道の駅みたいな感じかな。
あそこにあるお茶屋さんって感じのお店で一服ですね。
「いらっしゃいませ」
こんにちは、一服させてもらいますね。
「こちらへどうぞ」
ふぃー、ひと息つきました。
素朴な味のお茶菓子とあったかいお茶、疲れた身体が喜んでますよ。
「お兄さん、どちらまで」
ケルミシュまでです。
「このあいだ魔灸の森の辺りで盗賊団が討伐されたけど、何人か森に逃げ込んだそうだから気をつけてね」
魔灸の森って、南にある大きな森ですよね。
「あそこは魔物も盗賊も出るっていうけど、お兄さん、ひとりで大丈夫?」
見ての通り荒事向きじゃないんで、気をつけて進みますね。
「出来れば他の旅人さんたちといっしょに行動しなよ」
はい、ご忠告ありがとうございます。
「気をつけてね」
ごちそうさまでした。
なるほど、目的地が同じ旅人さんといっしょに行動、か。
この旅は無茶な冒険をしたいんじゃなくていろんな経験をするのが目的なのだから、それもありだよね。
だけど、知らない人に声を掛けるのって、僕としては結構勇気がいるのです。
でも、そういうのも修行だよね。
今までみたいに出会いを待つんじゃなくて、自分から行動すること。
魔灸の森に着く前に、なんとかしなきゃ、だね。