04 新装備
おや、アリシエラさんが、にこにこ笑顔で登場ですよ。
もしかして、出来ましたか。
「お待たせしましたっ、カミスさんの武者修行旅に最適な新装備、ついに完成しましたよっ」
「『トランスフォーム機能内蔵ペネトレーター魔素増槽バックパック』」
「略して『トラペゾ』ですっ」
ペネトレーターって侵入者みたいな意味でしたっけ。
「イケてる冒険者を目指すカミスさんにぴったりの名称ですよっ」
えーと、名前はひとまず置いといて、『トラペゾ』はひと言で言うと、
『イッテラ』+『Gふなずし』+『収納』機能付きバックパック+α、かな。
今までの旅で使っていた魔導バックパック以上の『収納』能力。
内蔵された大容量魔素増槽タンクで『イッテラ』のような単独『転送』が可能。
さらには『Gふなずし』と同等の通信・探索・ナビ機能も内蔵されていて、
連携している僕の魔導メガネに各種情報が表示されます。
もちろん全ての操作は、腕輪型端末『コニタン』で。
あと、新機能もあるのですが……
えーと、限定的ですが変身機能付きなんです。
ケモミミが生えちゃうんですよ。
よりにもよって、なぜケモミミ……
「とっても可愛いですよっ、カミスさんっ」
「早く皆さんにお披露目しちゃいましょうっ」
いやですよぅ、絶対に人前では変身機能は使いませんからねっ。
「それは残念です。 評判が良かったら量産して、皆さんに使っていただきたかったのですが」
おっと、それってもしかして、みんなのケモミミ姿も見られるってことなのかな。
「もちろんですともっ」
うひょっ、了解です。
必ず使用レポートを提出しますので、先行して量産準備の方、お願いしますね。
「お任せあれっ」
「ちなみに『トラペゾ』の使用に関して、注意点がいくつかありますよ」
「私たちが自由な『転送』の許可を得ているのは、エルサニア王国とその同盟国のみなのです」
「もしそれ以外の地域で『転送』したい時は、バレないようにこっそりと、ですよ」
「それと、正確な地図情報が入力されていない場所では、ナビ機能が実力を発揮出来ないのです」
「カミスさんがその足で歩いて、地図情報を更新しなくてはなりませんよ」
それってつまり、未知の場所は自分の足で探索しなさいってことですよね。
なんだかすごく冒険者って言うか探索者な感じ。
やっぱりペネトレーターって言うよりエクスプローラーじゃないかな。
「略称はゴロが良い方がステキじゃないですかっ」
ついに本音がぶっちゃけましたね。
何はともあれ、ありがとうございました、アリシエラさん。
今回のお礼ですけど、なにか探し物や頼みごとはありませんか。
「実は心配ごとがあるのです」
「先日のカミスさんたちの男旅で、スマキ3号の車輪が謎の攻撃で破壊されましたよね」
はい、『絶金』複合素材製の車輪を壊されちゃいましたよね。
「あの時ご主人さまに渡した片手剣は"つくも神"化しない新素材製の試作品だったのです」
「もちろん強度も『絶金』複合素材に匹敵する自信作だったのですが、ご主人さまが闘った男が持っていた大剣は新素材剣と余裕で打ち合えるものだったとか」
そういえば、ロイさんも驚いていましたよ。
「回収された大剣は、私でも解析不能の謎素材だったのです」
「そして、捕縛後にあの男に施された精神探索でも、入手先は不明だったそうなのです」
『絶金』複合素材製のモノを壊したり、謎素材の武器を生み出せる、
つまり、アリシエラさんに匹敵する技術を持った、謎の魔導具技師が居る、と。
「私は、自分が開発した技術には責任を持ちたいと思っております」
「悪党の手に渡らないよう、取り扱いには細心の注意を払ってるんです」
「危険な技術をホイホイ悪党に渡すなんて、魔導具技師として許せませんよっ」
アリシエラさんの技術者としての矜持、しっかりと受け止めました。
この件はみんなだけじゃなくて、けんちゃんにも相談する必要がありそうですね。
「よろしくお願いします、カミス師匠!」
師匠はやめてくださいよぅ。




